不動産登記とは
まず登記とは何か?という基本の部分を確認してみましょう。
不動産を購入したり、銀行が購入者に融資をして同時に担保を取る契約をすることにより「所有権」や「抵当権」といった民法上の権利が発生します。
もともと、契約というのは書面で行わなくても法的には有効に成立しているのですが、もしトラブルになった時に自分の権利を証明するもの(対抗要件)を備えていないと裁判等では高確率で負けることになってしまいます。
そこで、法務局に供えられた登記簿にこれらの権利を「登記」することで、世の中の誰に対しても権利を正当に主張できることになるのです(対抗要件の具備)。
登記簿の概要
不動産登記とは、法務局に「所有者」や「抵当権者」「債権額」など不動産登記法で定められた事項を申請し、それが登記官によって不動産登記簿に記入されるものです。
土地の登記簿のサンプルを見てみましょう。
記載内容
①タイトル
この登記簿のことを現在は「全部事項証明書」などと呼んでいます。
誰でも手数料を支払って取得、閲覧することができます。
土地、建物どちらの登記簿なのかということは右上のこの表示を見るとわかります。(表題部からも判断できます)
②所在
何市何町何丁目、くらいまでの情報がここに記載されます。
③地番
それぞれの土地の登記簿が起こされた時点でこの「地番」という土地の名前がつけられます。
土地の地番のつけ方は法律によって定められており、自由につけられるわけではありません。
④地目
土地の用途によって「宅地」「田」「畑」「山林」「公衆用道路」「雑種地」等の名前がつけられています。
なお、登記簿上の地目と実際の利用状況は異なることも多くあります。(「田」だったが現在は耕作していないなど)
⑤地積
土地の面積が表示される場所ですが、これも必ずしも現実の面積とは一致しません。
⑥コンピュータ移記の旨
登記簿が昔のブック式から現在のコンピュータに移動(移記)されたという旨の記載になります。
⑦甲区
主に所有権に関する事項が記入される場所です。
⑧順位番号
登記には「順位番号」が振られています。
登記した時期が早い方が番号は若くなりますが、いったんされた登記に何らかの変更を加える場合(たとえば所有者の住所を変更する登記)は、「1番付記1号」など、もとの登記に付随する番号が振られます。
⑨登記の目的
何の登記をしたかが記載されます。
「所有権移転」「所有権一部移転」など明確に示し、甲区では順番に追って見ていくと現在、誰の所有権がどれだけあるかがわかることになります。
⑩受付年月日・受付番号
登記申請が出された年月日、および、毎年1月1日から通算して、その法務局で何番目の登記か(受付番号)が示されます。
いったん登記した権利に何らかの変更を加える際などは、この受付番号を使って変更対象を指定することもあります。(例・1番所有権登記名義人住所変更)
⑪原因
登記原因はある程度の類型の中で決まっており、たとえば所有権移転の場合なら「売買」「相続」「贈与」「交換」など、さまざまなものがあります。
⑫所有者の住所・氏名
所有者の登記名義取得時点での住所、氏名が記載されます。
⑬次の所有者の順位番号
甲区1番の人から所有権を譲り受けた人は2番で所有権の登記を受けることになります。
なお、「所有権一部移転」などの場合もあるため、甲区2番が登記されているからといって1番で登記した人の所有権がすべて失われているとは限らないことに注意が必要です。
この登記簿例では、現在は鈴木一郎が単独でこの不動産を所有していることがわかります。
⑭乙区
主に、抵当権や根抵当権など、担保権の関係が記載される場所です。
これらの権利の内容が変更になった場合や抹消された場合も乙区に記載されます。
⑮順位番号
乙区にも順位番号が振られます。この登記簿例の1番抵当権は、下線が引かれているため、すでに権利が抹消されています。
⑯原因・債権額などの法定された登記事項
乙区の権利を登記する際も、定められた登記事項があるのでそれらをすべて記載します。(抵当権であれば債権額、利息、損害金、債務者、抵当権者)
⑰権利を抹消した旨の登記
登記を抹消した際も、「主登記」として一つの独立した箱に記載されます。
そして、この「抹消登記」が入ると、抹消の対象になった登記内容に下線が引かれます。
この登記簿がここで終わっているとすると、現在、この不動産には抵当権が一つもついていないということがわかります。
登記簿の概要について説明しましたが、ここには所有者の住所や抵当権の設定金額なども書かれているためプライバシーが晒されている状態なのですが、それよりもこれから取引に入っていく人の安全(どんな人がどんな権利をつけているのかを知りたい)の方が優先されています。
なお、不動産の登記は、それぞれ地域ごとに管轄の登記所(法務局)が定められています。
登記の申請はその管轄法務局に対して行いますが、現在では登記簿がすべてコンピュータ化されているため、他管轄法務局の登記簿を取得することもできるようになっています。
なお、2024年4月1日より相続登記が義務化されました。
相続登記については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
知っておくべき主な登記は3種類
土地を所有する一般の人が知っておきたいのは、主に3種類です。
上記に説明した「所有権移転登記」「抵当権設定登記」の他に、建物を建てて初めて所有権の名義人になる人が行う「所有権保存登記」があります。
所有権移転と抵当権設定は上記の登記簿に出てきましたが、下記登記簿の「甲区1番」が所有権保存登記の例です。
登記で発生する諸費用
では、不動産の登記をする場合にはどんな項目の費用がどのくらいかかるのかを考えてみましょう。
大きく分けると
・税金の部分(主に登録免許税)
・報酬の部分(司法書士、土地家屋調査士の報酬)
で構成されています。
登録免許税
登録免許税というのは登記をする際に法務局(国)に納める税金ですが、収入印紙や金融機関で納付書を使って納付するといった方法があります。
実務では、司法書士が依頼者から報酬と一緒に登録免許税も預かって法務局などで収入印紙を購入して申請書末尾の台紙に貼り付けて提出、というのが一般的です。
税率、金額は各不動産申請の種類ごとに決められています。
たとえば
・売買による土地の所有権移転⇒固定資産税評価額に対して15/1000
・抵当権設定⇒設定金額の4/1000
・抵当権抹消⇒抹消する不動産1つごとに1,000円
といった形です。
ただ、住宅用の家屋での軽減措置がある、法改正が入って税率が変わる、期間を定めて減税措置がされているなどがあるため、必ず申請時の税率を事前に確認することが大切です。
司法書士報酬
司法書士報酬については、以前は「報酬規程」というルールが存在して自由に決めることはできなかったのですが、現在では撤廃され事務所ごとに決められた基準に沿った金額になるため、一律のものはありません。
現実には旧報酬規程の基準を踏襲している事務所も少なくないようですが、事務所によりかなり開きがあるため、事前に見積もりを取って確認することが大切です。
土地家屋調査士報酬
土地家屋調査士というのは、上記に説明した「表題部」を登記する専門士業です。
(甲区や乙区の登記は司法書士)
土地家屋調査士の報酬も現在は自由に決められることとなっていますので事前の確認が大切です。
共有持分の登記費用はどれくらい?
では、共有で登記する場合の登記費用はどのくらいになるのでしょうか?
不動産取引の際の慣習では、
・「売主」は自分がつけていた抵当権抹消、住所や氏名の変更登記などの費用を負担
・「買主」は所有権移転の費用、自分が新たにつける抵当権設定の費用を負担
というのが普通です。
売主の費用は不動産や抵当権の個数が少なければ2~3万円程度で済むこともありますが、買主側の費用は登録免許税と報酬を合わせて10万円~数十万円になることも多く、事前に移転費用として見積もりをしっかり確認しておきたいものです。
登記費用の総額はケースバイケース
登記というのは少しの条件の違いで費用に数万円の差が出ることもあるため、他人の売買の例が自分のケースにあてはまるとは限らないということです。
つまり、登記費用が具体的にいくらなのかは完全にケースバイケースとなりますが、費用に大きな差が出るポイントとしてはこのような点があります。
・固定資産税評価額はどのくらいか(それを基準に登録免許税が算出されるため)
・物件が複数の場合は売主側の権利関係がどうなっていたか(単有と共有物件が混在していると登記申請件数が増えるため報酬が上がりやすい)
・買主はローンを組むか(ローンを組むと抵当権設定登記費用がかかるため)
・どこの司法書士事務所に依頼するか(現在、自由報酬のため事務所により差がある)
内訳
固定資産税評価額1000万円の「土地」を売買した例を一つ見てみましょう。
・司法書士費:約4万円~約8万円
ここに、謄本取得や郵送費、消費税などの細かい費用がかかってくるため、所有権移転登記関係だけなら大体20万円~25万円程度となることが多いのではないでしょうか。
また、買主がローンを組んだ場合には抵当権設定登記分の登録免許税と報酬がかかってきます。
仮に1000万円のローンを組んで抵当権を設定するなら上記に約10万円プラスになるでしょう。
建物を新築する場合にはまず表題部を起こすため土地家屋調査士の表題登記で約10万円、その後所有権保存登記の登録免許税と司法書士報酬で約5万円~8万円くらいかかってくるでしょう。
注意点
共有で登記する場合の注意点を考えてみましょう。
単有名義との費用の違い
同じ不動産であれば買主側が単有か共有かによって登録免許税が変わるわけではないのですが、司法書士報酬の部分は共有の場合に少し値段が高くなることもあります。
(あくまで依頼先事務所によります)
これは、人数分が多ければ多いほど書類や本人確認の手間などが増えるためです。
また、売主側が単有の物件と共有の物件を両方持っていて買主が両方購入するような場合であれば登記申請を二件以上に分けなくてはならないため、必然的に登記費用は高くなります。
特に投資用の不動産などで繰り返し取引と登記を行う人にとってはそれらが積もると大きな出費となることもありますから、費用の内訳をしっかりと事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
所有権などを取得した場合は、法務局に登記を申請し登記簿に記入されることで「対抗要件」を獲得することになるため、誰に対しても権利の主張ができるようになります。
登記にかかる費用は登録免許税、司法書士報酬等の項目がありますが、各人の条件によって費用はかなり変わってくることがあるため、事前に司法書士に見積もりを依頼するとよいでしょう。
買主が単有と共有のどちらで登記するかによって登録免許税は変わらないものの、事務所によって司法書士報酬が変わる場合もあるので事前に確認することをおすすめします。
なお、共有不動産を登記する際の費用負担などで他の共有者と揉めている場合には、自分の共有持分のみを売却してしまうのもひとつの手です。
共有持分を売却すればまとまった現金が手に入るほか、共有者間のトラブルからも解放されます。
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