私道の共有とはひとつの私道の持分を複数人で所有する状態
そもそも私道の共有とは、ひとつの私道の所有権を複数人で均等に所有する状態を指します。
たとえば、私道に面している6軒の家の所有者で私道を共有する場合、各所有者が持つ私道の持分割合は6分の1ずつです。
このような形態の私道を、共同所有型・共有型といいます。
なお、共有私道については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
私道の共有持分の名義変更が必要となる5つのケース
以下5つのケースのいずれかに該当するときには、私道の共有持分の名義を変更する必要があります。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
共有持分を相続した
親が亡くなって私道の共有持分を相続した際には、名義を親から自分へと変更する相続登記を行う必要があります。
ただし、相続した土地と建物の名義は変更しても、私道の共有持分の名義変更の手続きをし忘れてしまうケースは少なくありません。
しかし、相続登記は相続したことを知った日から3年以内に行う必要があります。
もし期限内に申請しないと、10万円以下の過料が科されるおそれがある点に注意が必要です。
したがって不動産を相続したときには、前面道路が私道か、私道に共有持分があるかを確認しておくことが大切です。
離婚時の財産分与で共有持分を取得した
離婚に伴う財産分与において、自分名義ではないマイホームと合わせて私道の共有持分を取得したケースでも、名義変更の手続きが必要です。
もし住宅ローンをすでに完済し終えているのなら、名義変更をしても問題ありません。
しかし、住宅ローンが残っている不動産の名義変更を勝手にすると金融機関から契約違反を指摘され、ローンの一括返済を請求される恐れがある点に注意が必要です。
そのため、離婚に伴って住宅ローンが残っている不動産の名義変更をしたいのなら、事前に金融機関に相談することをおすすめします。
共有持分を売買した
私道に接する家と合わせて私道の共有持分を売買したケースでも、名義を売主から買主へと変更する手続きが必要です。
名義変更をしないと、自分の所有物であることを第三者に主張できないからです。
そのため、不動産の売買契約では、購入代金の決済と不動産の名義変更の手続きを同時に行う形が一般的となっています。
売買契約当日には司法書士が立ち会い、買主が購入代金を売主に支払ったことを確認したのちに、名義変更の手続きを行います。
共有持分を放棄した
ほかの共有者と共同で不動産と私道を所有しているケースにおいて、私道の共有持分に関する権利を放棄したときにも名義変更の手続きが必要となってきます。
民法255条に基づき、放棄された共有持分はほかの共有者のものになるからです。
ただし、持分放棄に伴う登記手続きは共有持分を放棄した方、放棄に伴い持分を取得した方の共同申請形式が採用されています。
そのため、ほかの共有者の同意を得られないときには名義変更の手続きをスムーズに進められない恐れがあります。
なお、持分放棄に伴う名義変更の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
共有物の分割請求があった
私道の共有持分を複数人で所有しているケースにおいて、ほかの共有者から共有物の分割請求があったときも名義変更の手続きが必要となることがあります。
共有物の分割請求とは、共有者のひとりがほかの共有者に対して不動産の共有状態の解消を求める手続きです。
民法第256条第1項に基づき、各共有者はいつでも共有物の分割請求ができます。
共有者のひとりから共有物の分割を請求されたときには、共有者間で話し合って解決方法を導き出す必要があります。
しかし話し合いがまとまらず、裁判所によって代償分割が命じられたときには、共有持分は特定の共有者の単独名義となるため、名義を変更する必要があります。
特定の共有者が財産を取得する代わりに、ほかの共有者に取得した財産に応じたお金を支払う分割方法。
共有物の分割請求については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
私道の共有持分の名義を変更する手続きの流れ
私道の共有持分の名義を変更するときには、以下の流れで進めていきます。
それぞれの流れで何を行うのか、具体的に見ていきましょう。
必要書類を集める
まずは、名義変更に必要な書類を取得します。
ただし、名義変更が必要となる事情によって必要となる書類が異なる点に注意しましょう。
共有持分の名義変更に必要な書類を、以下ケース別にまとめました。
ケース | 必要な書類 |
---|---|
共通 | ・登記識別情報または登記済証 ・現名義人の印鑑登録証明書 ・新名義人の住民票 ・固定資産評価証明書 ・委任状(司法書士へ依頼する場合) |
相続 | ・遺産分割協議書 ・相続人全員の印鑑登録証明書 ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、住民票除票 ・相続する人の戸籍謄本 |
財産分与 | ・離婚の記載がある戸籍謄本 ・財産分与協議書等 |
贈与 | ・贈与契約書等 |
売買 | ・売買契約書等 |
もし何の書類を集めたらよいのかがわからない、書類の取得に時間をかけられないときには、司法書士に依頼することをおすすめします。
登記申請書を作成する
次に、法務局のサイトから登記申請書をダウンロードし、必要事項を記載します。
このとき、登記の目的を「所有権移転」ではなく、「甲(持分を取得する人の氏名)共有持分全部移転」または「甲共有持分一部移転」とする点がポイントです。
また、権利者の欄には「共有持分を取得する人」、義務者の欄には「共有持分を失う人」の氏名と持分割合を記載します。
【登記申請書の見本】
法務局で登記手続きを行う
必要書類を取得し、登記申請書も作成し終えたら、法務局で登記の手続きを行います。
登記を行う法務局は不動産の所在地によって決まるため、事前に法務局のサイトで確認したうえで申請しましょう。
私道の共有持分の名義変更にかかる費用
私道の共有持分の名義を変更するときには、以下の費用がかかる点も押さえておく必要があります。
- 必要書類取得費
- 登録免許税
- 司法書士への報酬
それぞれの費用相場について、詳しく解説します。
必要書類取得費
共有持分の名義変更に必要な書類を自治体から取り寄せるときには、以下表のように手数料がかかります。
書類名 | 手数料 |
---|---|
住民票 | 250~300円ほど |
印鑑登録証明書 | 400~450円ほど |
固定資産税評価証明書 | 300円ほど |
戸籍謄本 | 450~750円ほど |
手数料は自治体によって異なりますが、すべての書類を揃えるのに数千円~1万円ほどの費用がかかる点は押さえておきましょう。
登録免許税
共有持分の名義変更を行うときには、法務局に登録免許税を納める必要があります。
登録免許税の計算方法は、以下の通りです。
税率は、登記の原因によって以下のように異なります。
登記の原因 | 不動産の種類 | 税率 |
---|---|---|
売買 | 土地 | 2%(令和8年3月31日までの登記では1.5%) |
売買 | 建物 | 2% |
相続 | 土地・建物 | 0.4% |
遺贈 | 土地・建物 | 2% |
贈与 | 土地・建物 | 2% |
財産分与(離婚) | 土地・建物 | 2% |
たとえば、固定資産税評価額が300万円の私道の共有持分を相続で取得して名義変更するときには、以下の登録免許税を納める必要があります。
登録免許税=300万円×0.4%=1万2,000円
司法書士への報酬
私道の共有持分の名義変更の手続きを司法書士に代行してもらうときには、別途報酬が発生します。
報酬の相場は司法書士事務所によって異なるので一概にはいえませんが、3~5万円が相場です。
登記完了証を受け取る
申請に不備がなければ、1~2週間ほどで登記完了証が発行されます。
これを受け取れば、名義変更の手続きは終了です。
なお、共有持分の移転登記の手続きの流れや注意点については以下の記事でも詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
私道の共有持分の名義変更をしない3つのリスク
私道の共有持分の名義変更をしないと、以下3つのリスクに見舞われる恐れがあるため、注意が必要です。
それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。
再建築ができない
私道の共有持分の名義を変更しないと、私道に接する土地で家を建て替えたり、新築したりできなくなる恐れがあります。
家を建てるときには、建築基準法で定められている幅4m以上の道路に敷地が幅2m以上接していなければなりません。
これを「接道義務」といいます。
私道でも自治体から「みなし道路」として認められていれば、接道義務を満たしていると判断されるので再建築は可能です。
建築基準法第42条第1項第3号・第42条第2項の規定により、建築基準法上の道路と見なされる私道
しかし私道の共有持分を持っていなければ、その私道を利用することはできません。
そのため、私道に接する土地に家を建てたいと思っても、建築ができなくなってしまう点に注意が必要です。
相続した私道に接する土地を何らかの方法で活用したいと考えているのなら、私道の共有持分に関する名義変更の手続きをし忘れないよう気をつけましょう。
時間が経つと名義変更が難しくなる
相続した財産に私道の共有持分が含まれていることを知らず、名義変更の手続きが漏れてしまうケースは少なくありません。
しかしそのまま長期間経過してしまうと、私道の共有持分の名義変更を行うことが難しくなる恐れがある点に注意が必要です。
被相続人の財産を受け継げる相続人が複数いる場合には、遺産の分け方を巡って話し合う必要があります。
これを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりませんが、時間が経つ中で一部の相続人が亡くなると、手続きに関与する相続人の数が増え、話し合いすらできない状況に陥りかねません。
そうなると、いつまで経っても遺産分割が終わらず、私道の共有持分の名義を変更できなくなる可能性があります。
したがって私道に接する家を相続したときには、家とともに私道の共有持分の名義も速やかに変更することをおすすめします。
売却できない
私道の共有持分の名義を変更しないと、売却できない点にも注意が必要です。
私道は国や地方自治体が管理している公道とは異なり、あくまでも個人の土地として扱われます。
そのため、所有者の許可がなければ、原則第三者は勝手に利用できません。
もしある人が私道に接する家を購入しても、私道の共有持分がセットでなければ私道を自由に通行できなくなってしまいます。
そのような物件を好んで購入したいと考える方はまずいません。
したがって相続した私道に接する家の売却を検討しているのなら、私道の共有持分の名義をまず親から自分へと変更することが重要です。
なお、以下の記事では私道持分にまつわるトラブル事例や売却方法を解説しているので、併せて参考にしてください。
アルバリンクなら私道の共有持分のみでも買取が可能!
私道に接する家を相続したものの、今後も自分では使う予定がなく売却したいと検討しているのなら、弊社AlbaLink(アルバリンク)にお任せください。
弊社は、私道に接する家や私道の共有持分など、一般の買い手が見つかりにくい訳あり物件を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
実際、弊社は下記のように全国各地の共有持分を買い取っており、中には1000万円以上で買い取ったこともあります。
弊社に物件の買取依頼をしていただいたお客様からは「肩の荷が下りた」「もっと早く依頼すれば良かった」といった感謝の言葉を多数いただいております(下記Google口コミ参照)。
また、弊社はお客様からの評価が高いだけでなく、不動産買取業者としては数少ない上場企業でもあり、社会的信用も得ています。
信頼できる買取業者に安心して私道に接する家や私道の共有持分を売却し、私道に関するトラブルから解放されたい方は、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご活用ください(売却前提の問い合わせでなくても構いません)。
まとめ
相続などで私道の共有持分を取得したときには、名義変更の手続きを行う必要があります。
もし私道の共有持分の名義変更の手続きをし忘れると、私道に接する土地で建築ができなくなったり、売却できなくなったりするリスクがある点に注意が必要です。
また、相続などで取得した私道に接する家と私道の共有持分を売却したいのなら、専門の買取業者に相談することをおすすめします。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は共有持分に強い専門の買取業者であり、これまで私道に接する家や私道の共有持分を多く買い取ってまいりました。
過去には、フジテレビの「newsイット!」にも、一般の不動産業者が取り扱わない物件を専門とする買取業者として紹介された実績もあります。
私道に接する家と私道の共有持分を適正価格で、かつスピーディーに買い取らせていただきますので、まずはお気軽に無料査定をご活用ください。