共有私道のガイドライン改正のポイントは?トラブル解決の基本知識を解説!

「共有私道に関するガイドラインが改正されたらしいけど、どう管理方法が変わったの?」

2021年の民法改正(施行は2023年4月1日)に伴い、共有私道の保存や管理などに関するガイドラインが改正されました。
実際に家の前の私道を共有している方にとって、ルールがどのように変わったのかは気になるところですよね。

主な変更点は、共有私道の管理に関する制限が緩和されたことにあります。
たとえば、これまで共有私道にある樹木を伐採するには共有者全員の同意が必要でしたが、共有者の持分の過半数の同意があれば実行できるようになりました。

共有私道の管理をスムーズに行うには、ガイドラインの改正ポイントを押さえておくことが重要です。

そこで今回は、家に接している私道を共有している方へ向けて、以下の内容を詳しくお伝えします。

この記事を読むと、共有私道に関するガイドラインの変更点がわかり、管理トラブルを未然に防げるようになります。

なお、共有私道に関するトラブルから完全に解放されたいのなら、売却を検討するのは選択肢のひとつです。
売却金額を元手に公道に接する家に住み替えれば、共有私道で起こり得るトラブルに巻き込まれずに済むからです。

弊社AlbaLink(アルバリンク)は、共有私道に接している家など通常では売却しにくい不動産を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
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共有私道とは複数の人が共有している道路のこと

共有私道とは、複数の方が所有権を持っている道路を指します。

ただし一口に私道といっても、その種類は大きく2つに分かれます。
そのため、家に接している道路が「私道」のときには、まずどちらの形態に該当するのかを確認しておくことが大切です。

そこでまずは、私道に関して知っておきたい以下の基礎知識を解説していきます。

私道と公道の違い

一口に道路といっても、大きく分けると私道と公道の2種類があります。

公道と私道の違い

私道は個人や法人が所有・管理している道路、公道は国や地方自治体が所有・管理している道路です。

公道では、道路が陥没したりひび割れたりしたときには国や地方自治体が復旧工事を行います。
道路上の落ち葉やゴミなども、国や地方自治体が清掃します。

それに対して私道では、私道の所有者が責任をもって清掃や補修工事などを行う必要がある点が大きな違いです。
費用も私道の所有者が負担しなければなりません。

共有私道の種類は2つ

共有私道の種類は、以下の2つに大別されます。

  • 私道全体を複数の人が所有しているケース
  • 私道が複数の筆から構成されており、隣地所有者などが各筆をそれぞれ所有しているケース

前者は「共有型私道」「共同所有型私道」などと呼ばれ、私道に接している家の所有者がひとつの私道の所有権をそれぞれ均等に共有するパターンです。

私道の共有

たとえば私道に面して6軒の家が建ち並んでいるケースでは、各家の所有者が6分の1ずつ私道の共有持分を持ちます。

一方、後者は「持合型私道」「相互持合型私道」などと呼ばれます。
私道に接している家の所有者の数に応じてひとつの私道を分筆し、各家の所有者が割り振られた区画を単独名義で所有するパターンです。

分筆された私道

このケースでは、以下画像のように、各共有者は自分の家から離れた場所にある私道を単独名義で所有する形となります。

単独所有の私道と共有私道の違い

私道が各所有者の単独名義のときには、所有者の判断で管理などを行えます。

しかし複数の方が共有持分を持っている共有私道では、それぞれの所有者が勝手に管理を行うことはできません。
共有者全員、または共有者全体の過半数以上の同意がなければできない管理行為があり、所有者間の意向の違いによってトラブルが生じる恐れがある点には注意が必要です。

共有私道に関して各共有者ができることについては、次章で詳しく解説します。

なお、以下の記事でも共有私道に関して詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

共有の私道所有者が知るべき権利と売却時の注意点をカンタン解説!
共有の私道とは、国や自治体が所有する「公道」と異なり、複数の個人で共有している私道を指します。 本記事では、共有私道の種類・共有方法・売却における注意点について解説します。

民法改正に伴う「共有私道に関するガイドライン」の変更点

法務省に設置された「共有私道の保存・管理等に関する事例研究会」により、共有私道に関するガイドラインが制定されたのは2018年のことです。

その後、2021年の民法改正(施行は2023年4月1日)に伴い、2022年6月にガイドラインが改訂されました。

ここでは、改正されたガイドラインに関する以下の内容について、詳しく解説していきます。

ガイドラインが改正された背景

複数の共有者が共有持分を持ち合う共有私道では、道路の工事などを行うときにトラブルが起こるケースが少なくありませんでした。

たとえば「共有者のうち何人の同意が必要なのか、誰が実行できるのかなどがわからずに工事が進められない」「共有者のひとりが行方不明のために工事をおこなえない」などです。

そこで、上記のようなトラブルを未然に防ぐために法務省が主導して作成したのが共有私道に関するガイドラインです。

さらに2021年の民法改正(施行は2023年4月1日)を受け、共有私道に関する管理をよりスムーズに行えるようにするため、ガイドラインの第2版が公表されました。

改正後のガイドライン3つのポイント

共有私道に関するガイドライン改正後のポイントは、主に以下の3つです。

共有私道の管理トラブルを未然に防ぎたいのなら、事前に内容を把握しておきましょう。

共有制度の見直し

1点目は、共有私道に関する管理行為の範囲が拡大されるとともに明確になったことです。

原則として、共有者には持分に応じて共有私道を使用する権利があります。

参照元:e-Gov法令検索|民法第249条

ただし、ほかの共有者も当然のように同様の権利を持っているため、共有私道に関して大きな変化が生じる行為については、民法で以下のように制限がかけられています。

行為の種類 同意が必要な共有者の人数
保存行為 各共有者が単独で可能
管理行為 共有者の持分割合の過半数の同意が必要
変更(処分)行為 共有者全員の同意が必要

参照元:e-Gov法令検索|民法第251・252条

各行為で認められている内容は、以下の画像をご参照ください。

共有名義の不動産に対する「変更」「保存」「管理」行為

このうち、今回のガイドラインの改正で大きな変更が生じたのは「管理行為」についてです。
これまで共有者全員の同意が必要だった変更(処分)行為でも、形状の変更などを伴わない軽微な行為は「管理行為」に当たると見なされるようになったのです。

軽微な変更行為であれば共有者の持分割合の過半数の同意があれば実行できるようになったため、共有私道の管理がよりスムーズに行われるようになることが期待されています。

なお、共有物に関して各共有者ができる民法上の行為については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

不動産の共有に関する民法条文のまとめ【保存行為、変更行為、管理行為とは?】
共有物の使用 各共有者には使用収益権がある 共有というのは物理的にその不動産を2つ以上に分けて使用権を持つのではなく、全体に対して、全員が持分に応じた使用収益権を持つという概念的なものです。 つまり、誰か1人がそれをす...

財産管理制度の見直し

2点目は、財産管理制度の見直しです。

これまで、共有私道の共有者が行方不明となっているときには、管理行為や変更(処分)行為をするために必要な同意を得られずに管理が不十分にならざるを得ませんでした。

しかし民法の改正に伴い、共有者が行方不明だったとしても、裁判所が必要と認めるときには行方不明の共有者以外の共有者全員の同意により変更(処分)行為を実施できるようになったのです。
管理行為についても、行方不明の共有者以外の共有者の持分の過半数の同意があれば実行可能です。

たとえばA・B・Cの3人で共有している私道にあって、Aが行方不明でも、裁判所の決定があればBとCは共有私道に下水管を新設するなどの行為ができるようになります。

相隣関係規定の見直し

3点目は、相隣関係規定の見直しです。

相隣関係規定とは、簡単にいえば隣り合った土地の利用に関するルールを指します。

たとえば隣地から樹木の枝が越境してきても、これまで土地の所有者は勝手に伐採することはできませんでした。
行方不明となっている共有者の土地に植えられている樹木の枝などが私道に越境して通行に支障をきたしていても、どうすることもできなかったのです。

張り出した樹木の伐採(共有私道のガイドライン引用)

引用元:共有私道の保存・管理等に関する事例研究会|複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書

しかし民法の改正により、樹木の所有者に越境した枝の伐採を請求しても一定期間対応しないとき、共有者が行方不明なときには、ほかの共有者が切り取ることができるようになりました。

参照元:e-Gov法令検索|民法第233条第2項

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共有私道で起こりがちな管理トラブル5選とガイドラインによる対処例

ここからは、改正されたガイドラインに基づき、共有私道で起こりがちな5つの管理トラブルと対処法について解説します。

舗装の修復

共有私道の一部が陥没するなどして修繕が必要になったとしても、共有者の一部が反対していたり、行方不明で連絡が取れなくなったり管理に支障をきたすトラブル事例があります。

道路の陥没事例(共有私道のガイドライン引用)

引用元:共有私道の保存・管理等に関する事例研究会|複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書

しかし、各共有者が日常的に使用している道路を修繕して現状を維持するための工事は、「共有物の保存行為」に該当すると見なされています。

したがって、各共有者はそれぞれ単独で道路の修繕を行えるため、ほかの共有者の同意は不要です。

私有水道管の新設

私道に接する土地に家を建てるとき、水道を使えるようにするには私道の下に水道管を設置して公道下の配水管に接続させる必要があります。

私有水道管の新設(共有私道のガイドライン引用)

引用元:共有私道の保存・管理等に関する事例研究会|複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書

ただし水道管を設置するには道路の掘削、工事後の舗装が必要であり、ほかの共有者から反対されるトラブル事例は少なくありません。

しかし、私道の下に自己所有の水道管を設置する工事は、あくまでも持分に応じた使用と解されます。
したがって水道管の設置工事にあたり、ほかの共有者の同意は不要です。

また、私道の下に水道管を設置する代償として、ほかの共有者へ対価を支払う必要もありません。

公共下水道の新設

エリアによっては、下水道ではなく浄化槽が設置されていることがあります。

浄化槽
微生物を用いて生活排水を浄化し、河川などに放流する設備。

その後、公共下水道へ汚水を流せる土地に指定されたときには私道の下に下水道を通す工事を行う必要がありますが、共有者の一部が反対、もしくは行方不明で工事を進められないトラブル事例は少なくありません。

公共下水管の新設(共有私道のガイドライン引用)

引用元:共有私道の保存・管理等に関する事例研究会|複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書

しかし、私道下に公共下水道を設置する工事は「管理行為」に該当します。
そのため、一部の共有者が反対したり、行方不明だったりしても、共有者の持分の過半数の同意があれば実行可能です。

舗装の新設

砂利道である私道にアスファルト舗装を施して利便性を高めたいと考えても、ほかの共有者の反対にあったり、共有者の一部が行方不明だったりして同意を得られず、工事に着手できないトラブル事例があります。

舗装の新設(共有私道のガイドライン引用)

引用元:共有私道の保存・管理等に関する事例研究会|複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書

従来、砂利道をアスファルト舗装にする工事はこれまで「変更(処分)行為」に該当していたため、共有者全員の同意がなければ実行できませんでした。

しかし民法の改正に伴い「軽微な変更(処分)行為は管理行為に含まれる」ようになったため、共有者の持分割合の過半数の同意があれば実行が可能となります。

樹木の伐採

共有私道に植えられている樹木は、共有者全員の共有物として扱われます。
したがって、樹木が生い茂って通行に支障をきたしていても、共有者全員の同意がなければ伐採できませんでした。

樹木の伐採(共有私道のガイドライン引用)

引用元:共有私道の保存・管理等に関する事例研究会|複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書

しかし民法の改正により、私道の形状の変更などを伴わない樹木の伐採は軽微な変更行為に該当すると見なされるようになったため、共有者の持分の過半数があれば可能になりました。

また、共有物である樹木の枝が伸びて通行の邪魔になっているときは、「保存行為」として各共有者が単独で切り取れるようになったところもポイントです。

なお、私道の共有持分に関するトラブル事例については以下の記事でも詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

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まとめ

民法の改正に伴って改正された共有私道のガイドラインのポイントは、共有制度・財産管理制度・相隣関係規定の見直しです。

特に共有私道に対して実施できる管理行為の幅が広がったため、従来よりも管理をスムーズに行えるようになるでしょう。

ただし、共有者の持分の過半数の同意、もしくは共有者全員の同意がなければ実施できないことも多々あり、意見の相違によるトラブルがいつ起こるとも限りません。

そのため、共有私道に関するトラブルから解放されたいのなら、専門の買取業者に売却することをおすすめします。

弊社AlbaLink(アルバリンク)は、全国の訳あり物件を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
過去には、一般の不動産業者が取り扱わない訳あり物件専門の買取業者として、フジテレビの「newsイット!」に取り上げられた実績もあります。

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「共有私道のガイドライン」に関するよくある質問

共有私道とは、複数の方が所有権を持っている道路を指します。
私道は道路ではなく、私道に関する共有持分を持っている方々の所有地として扱われます。
共有私道を誰でも通行できる状態にしているときには、私道に課される固定資産税が免除されることがあります。
私道の共有持分を持っていると、維持管理費を負担しなければならない、ほかの共有者と利用・管理を巡ってトラブルに発展する可能性があるなどのデメリットがあります。
監修者
株式会社AlbaLink代表取締役の河田憲二です。同社は空き家や事故物件などの売れにくい不動産の買取再販を行う不動産業者です。同社が運営しているサービスサイトである「訳あり物件買取プロ」の運営者も務めています。同社は東京証券取引所東京プロマーケット市場にも上場している不動産会社になります。

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