所有者が空き家を活用せず放置するリスク5選
空き家所有者は常にリスクを負っています。ここでは空き家所有者が負う、主なリスク5つについて説明します。
無駄な費用をかけ、リスクを負いながら空き家を放置せず、活用方法を決めるか、早めの売却を検討しましょう。
固定資産税や維持管理費用の負担が大きくかかる
空き家は使用していなくても、1年に1度固定資産税を支払わなければなりません。また空き家の管理作業にも費用がかかります。
【空き家の維持にかかる主な費用】
固定資産税 | 年間で数万円から数十万円。空き家がある場所によって異なる。納税通知書で確認できる。 |
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水道料金・光熱費 | 毎月管理作業をするため必要。基本料金だけでも水道代・光熱費合計で1か月あたりおよそ1万円程で、年間10万円以上かかる。 |
交通費 | 毎月管理作業をするため必要。所有する空き家と所有者の自宅の距離よって大きく異なるが、年間で数万円程かかる。 (例)東京~群馬(高崎)の場合 月に1回、一人当たり往復でおよそ6千円。年間7万2千円。 |
空き家が原因で起きた被害の責任は所有者が負う
人の出入りがない家は、老朽化が進行し、台風や地震などをきっかけに倒壊するなど、人命を奪う危険性もあります。
空き家が近隣に対して危害を加えてしまった場合、損害賠償責任を負うのは空き家所有者です。被害を出してしまわないよう、空き家所有者は責任ある管理をしなければなりません。
空き家の老朽化が早く進行してしまう原因
- 湿気がこもり、溜まったほこり等をエサにしてダニやゴキブリ、シロアリが発生・増殖し、家屋をむしばんでいく
- 台風や地震等で破損し、雨漏り等が発生するようになっても、修繕されず放置され、さらに腐食が進行する
など
特定空き家指定と行政代執行で罰金や高額費用を支払う
空き家所有者は適切な管理を怠ると、罰金の支払いを命じられたり、自治体が空き家を強制的に解体し、所有者はその費用を請求される可能性があります。
なぜなら、空き家特措法により自治体は「危険な状態である空き家を特定空き家に指定する」「空き家を適切に管理するよう、所有者に対し指導する」以上の2点ができるようになったからです。
特定空き家とは
管理不足により、近隣住民に与える危険性・有害性が著しい、または緊急性が高いと判断された空き家は、自治体によって特定空き家に指定されます。多くの場合、近隣住民からの苦情等をきっかけに調査が開始します。
この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
特定空き家に指定されてから行政代執行までの流れ
特定空き家に指定された空き家の所有者は、下記の流れに沿って自治体から管理指導を受けます。勧告以降は税金の増額や罰金などの罰則が与えられます。
【行政代執行までの流れ】
①助言・指導 | 特定空き家に指定されると、自治体は所有者に対して管理方法の改善を促す。特に「指導」は空き家の危険性や有害性が高く、早急な対応が求められる時に行う。この時点で改善を行えば罰則等はない。 |
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②勧告 | 所有者が助言・指導に従わない場合、自治体は改善措置について勧告を行う。所有者は勧告を受けると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、特定空き家に指定される以前と比較しておよそ6倍もの固定資産税を支払うことになる。 |
③命令 | 所有者が勧告にも従わない場合、自治体は改善措置について命令を行う。命令に違反すれば、所有者は50万円以下の過料(行政上の罰金)が科される。命令は行政代執行前の最後通告とも言える。 |
④行政代執行 | 所有者が命令に従わず、また指定された期限内に改善措置の完了が見込めない場合、自治体によって行政代執行が実行される。行政代執行の費用は後日所有者に請求され、支払いが確認できない場合には給与や不動産等の財産を差し押さえられ、強制的に徴収される。 |
犯罪に悪用され事故物件のようになってしまう
空き家は老朽化等により事故を引き起こしてしまうだけでなく、犯罪に悪用されてしまう可能性もあります。なぜなら、管理がされない空き家は雑草や庭木が伸びていたり、雨戸やカーテンなどが常に閉まっているなど、敷地内の様子が通行人や外部から見えにくいからです。
そのため、放置された空き家では下記のような犯罪が起きやすくなります。ニュースに取り上げられたり、近所の噂の的になると、事故物件のようになり、空き家の価値が下がってしまう恐れすらあるのです。
空き家を悪用した犯罪例
- 侵入者が住みつく
- 違法薬物を栽培・保管
- 詐欺犯罪の拠点
- 不法投棄
- 放火
など
害獣が住みつき周辺地域の衛生環境を悪化させる
空き家に害獣が住みつくと、排泄物等が溜まって腐食が進行したり、配線を噛んでショートさせ発火する危険性があります。
また害獣によって持ち運ばれたウイルスや雑菌等が周辺地域の衛生環境を悪化させる恐れもあり、住民から損害賠償を請求される、なんてことにまでなりかねません。
空き家放置によるリスクを回避する3つの手段
ここまで、空き家を放置するリスクについて説明してきました。
使ってもいない空き家に多額の維持費用をかけたり、損害賠償を請求されるなんてことは、誰でも避けたいと思うはずです。
では、空き家のリスクから解放されるためには、どのような手段があるでしょうか。
買取業者へ売却【空き家処分のキホン】
活用する予定がなく、管理費用もかけたくないという場合は、買取業者に空き家を売却しましょう。
空き家の売却は、仲介業者だと多くの場合年単位で売れ残ってしまいます。なぜなら、活用方法に困り空き家となってしまっている物件は、下記のような場合が多く、買主が見つかりにくいからです。
- 所在するエリアの居住需要が低い
- 築年数が経過し老朽化が進行している
対して、買取業者は事業目的であるため、空き家を改修して利益が見込めて、売主との間で金銭的合意があれば、どれだけボロボロな空き家でも買い取ることが可能です。
また買取業者への売却であれば、売却完了後、空き家所有者は管理責任を一切負いません。なぜなら、買主がプロの不動産屋である買取業者であれば、契約不適合責任が免責されるからです。今後の管理の手間や費用が不要になることは、買取売却の大きなメリットです。
引き渡した物件が種類や品質の点で契約内容と異なっていた場合に、売主が責任を負うこと。個人が買主である場合には、契約不適合責任が消費者保護の観点から適用される。
弊社では、売却しにくい空き家等の買取を得意としています。「売却できる自信がない」「他社で断られたことがある」という場合でも安心してご相談ください。
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後悔しない買取業者を見分けるコツ
では実際に空き家の買取業者を選ぶとき、どのような点に注意すべきでしょうか。
ポイントは、必ず複数社(3社以上)に依頼し、査定価格や担当者の対応を比較することです。信頼できる買取業者を見極め、空き家を適切な価格で売却しましょう。
- 必ず複数社に査定を依頼する
- 買取業者への査定は、必ず複数社に依頼し査定価格を比較しましょう。価格が低すぎる業者はもちろんのこと、高すぎる業者にも注意してください。銀行からの融資に頼った金額を提示し、契約直前になって結局その価格で買い取れない、となってしまう可能性もあるからです。適正な価格かを比較して判断できるよう、必ず3社以上に査定を依頼しましょう。
- 担当者の対応を比較する(早さ、的確さ)
- 担当者の電話対応や、その他連絡が迅速であるか、質問に真摯に答えてくれるかもチェックすべきポイントになります。返答が遅かったり、査定価格の根拠についてあいまいな返答をするような業者は、契約直前になって金額を変更してくる可能性もあるからです。担当者の人柄を見るためにも、査定の際には現地に来てもらえるとより良いでしょう。
将来住む予定があるなら1か月に1回適切に管理する
今は空き家でも、将来ほぼ確実に住む予定がある場合、1か月に1回空き家の管理作業を行いましょう。空き家の老朽化が抑えられ、近隣に迷惑をかけることなく、自身が居住するまで空き家を維持できます。
所有者の自宅と空き家が離れていて「毎月交通費を支払うよりも、月額料金の方が安くなる」という場合には、空き家管理代行サービスの活用もおすすめです。
管理作業項目 (およそ1回/月程度)
- 屋内の換気(窓やドア、押し入れ、タンスなどを開け空気を入れ替える)
- 屋内の清掃
- 通水(各蛇口を開栓し、水漏れ・水道メーター異常等有無を確認)
- 屋内の点検(雨漏り、壁や天井・柱などの傷み、カビ等有無を確認)
- 屋外の点検(庭木や雑草が敷地外に出ていないか、外壁や瓦の劣化等有無を確認)
- 郵便受けの点検
- 敷地内の草刈・除草
など
また、害獣の侵入を防ぐため、動物が通りそうな場所に金網を設置して侵入を防いだり、動物が嫌がるフラッシュライト等を設置しましょう。
ただし、一度設置しても、数か月もすれば金網がボロボロになって害獣が通れるようになっていたり、ライトの電池が切れてしまうことも考えられます。設置後も、清掃や見回りで訪れた時に機能しているか確認しましょう。
空き家の解体・リフォームは慎重に
空き家の価値を向上させるため、解体・リフォーム等を行ってから売却を検討する人もいますが、おすすめはできません。なぜなら、高額の工事費用がかかるうえに、結局売れ残ってしまうことが多いからです。
前述の仲介業者での売却と同様に、駅近であったり、開発が進んでいるなど、人気のあるエリアに位置する場合、解体やリフォームをしても利益が見込めるほど高額で売却できる可能性はあります。
しかし、所有している空き家が位置するエリアが上記以外だと、ほとんどの場合売れ残り、解体やリフォーム等の工事費用分、損失が出てしまいます。
解体やリフォーム等を決断する前に、まずは買取業者の査定金額を確認しましょう。工事費用をかけることなく売却できるかもしれません。
>>空き家の買取査定はこちら
【解体・リフォームのメリットやデメリット】
解体 | リフォーム | |
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メリット | 家屋の管理作業が不要になる | 価値が向上する |
デメリット | 工事費用が高い 固定資産税が6倍になる 買い手がつきにくい |
工事費用が高い 買い手がつきにくい |
金額 | 木造:坪単価3~5万円 (40坪の場合160万円~200万円) 鉄骨・RC造:坪単価6~8万円 (40坪の場合240万円~320万円) |
耐震補強:100万円前後 雨漏り修理:1万~50万円前後/1か所 (※雨漏りの場所により異なる) |
空き家に利用できる特例や制度
前述のとおり、空き家を活用しようとすると、とにかく費用がかかります。
そこで、所有者の負担を少しでも減らすため、空き家活用をしたい所有者が利用できる制度や特例があります。
工事費用の一部を補助したり、空き家の売却額から一定金額が控除される特例などがあり、条件を満たす空き家であれば申請を行うことで利用が可能です。
空き家の解体やリフォームに利用できる自治体の補助金
条件を満たした空き家について申請手続きを行い、自治体から空き家の解体費用やリフォーム費用の一部を補助金として受け取れる制度があります。
条件の内容は自治体によって大きく異なりますが、前提として工事着工前に申請を行わなければなりません。
また、上限額はおよそ50万円程度で、補助金を受け取れるのは工事完了後です。補助金を引いた残りの工事費用は結局所有者の負担であるため、慎重に検討しましょう。
申請手続きは多くの場合、下記のような流れで行います。
具体的に必要となる様式等は、各自治体のホームページ等から入手が可能です。不明点があれば自治体窓口で相談しましょう。
【申請から補助金を受け取るまでの主な流れ】
手順 | 主な内容 |
---|---|
①申請手続きを行う | 工事着工前に、工事業者からの見積書や空き家についての基本情報等を記入した書類を提出する |
②実績報告を行う | 工事完了後、実際に行った工事の詳細を確認できる工事完了証明書(工事業者が作成)、工事内訳証明書等を提出する |
③自治体による審査 | 自治体によって審査が行われ、補助金額確定後、通知が来る |
④請求書を提出 | 確定通知に記載された補助金額や振込口座の情報を記入した請求書を作成し、提出する |
⑤補助金が入金 | 後日、振込口座に補助金額が入金される |
空き家の売却額から3,000万円控除できる特例
相続で得た空き家をおよそ3年以内に売却した場合、申請手続きと確定申告を行うことで、売却額から3,000万円が控除される特例があります。これを「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」通称「空き家特例」といいます。(適用期間:平成28年(2016年)4月1日~令和5年(2023年)12月31日)
空き家の売却額によっては譲渡所得税が0円になるという魅力的な特例ですが、条件はかなり厳しいものです。
空き家特例が適用される条件(一部)
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた
- 被相続人が1人で住んでいた
- 相続から売却までずっと空き家
- 新耐震基準を満たしている、または耐震リフォーム済み
- 解体して更地
- 相続開始日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに売却
ほか
相続した空き家がすべての条件を満たすなら、この特例を使わない手はありません。
その他条件や申請手続き等の詳細については下記ページをご覧いただき、手続きを行ってください。
知らないと損!空き家特例3,000万円控除|適用条件と申請手続き
その他補助金(住宅セーフティーネット制度)
空き家特措法に基づいた制度以外にも、空き家の活用につながる制度があります。空き家を住宅セーフティーネット制度に登録し、条件を満たせば以下の補助金を利用できます。
- 住宅確保要配慮者専用賃貸改修事業で最大100万円の補助金
- 空き家やアパートを、住宅確保要配慮者向けに改修した空き家所有者に対し、政府が補助金を交付する制度です。バリアフリー改修工事、耐震改修工事など、補助金額の上限が加算される工事内容もあります。ただし、工事内容によっても異なりますが、バリアフリー工事や耐震改修工事は数百万円から数千万円かかります。補助金額を受け取れても、残りの金額は所有者が支払うため、結局大きな負担はかかります。
- 家賃低廉化制度で貸主(元空き家の所有者)は月々最大4万円受け取れる
- 空き家があるならば、住宅確保が難しい人に安く住んでもらおう、という制度です。借主(低額所得者)は市営住宅程度(2~3万円とか)の家賃で住むことができ、貸主は国・自治体から月々最大4万円を受け取れます。(原則10年間)
まとめ
空き家を放置するリスクや、リスクを避ける手段について説明しました。
空き家の放置には、以下のようなリスクがあり、まさに「百害あって一利なし」です。
- 活用しないのに維持管理費が発生し続ける
- 倒壊などにより近隣住民等を傷つけ、損害賠償を請求される
- 罰金を請求されたり、空き家を強制的に解体され費用を請求される
上記のようなリスクを避けるため、空き家は決して放置してはいけません。空き家の所有者がすべきことは、下記のいずれかです。
- 将来ほぼ確実に住む予定がある場合は、1か月に1回適切に管理する
- 住む予定も活用予定もなければ、買取業者に売却する
買取業者への売却であれば、空き家を管理する必要がなくなり、さらに費用をかけずに現金を得ることができます。空き家を最も有効的に処分できる方法と言えます。
空き家は放置していても、どんどんボロボロになっていくだけで、なにも得しません。行動を起こすならm今が一番早い時です。空き家の活用方法や処分方法にお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
>>空き家は買取売却【脱・空き家放置】