そもそも越境物とは何を指すのか
越境物とは、家屋の一部やブロック塀、樹木の枝などが隣地の境界を超えてはみ出している構造物を指します。
よく起こりがちなのは樹木の枝が隣地へ侵入しているケースですが、越境の対象は目に見える地上にあるものだけにとどまりません。
「土地の所有権は上空だけでなく地下にもおよぶ」と民法第207条で定められているように、ガス管や水道管など地中にある構造物においても越境問題は生じる点に注意が必要です。
越境物への対処法としては「覚書」の作成が有効
越境物に関する覚書は、自分と隣人とが互いに越境物がある事実を認め、解決へ向けて合意をした証拠としての効力を発揮します。
したがって、現在のみならず将来における隣人とのトラブルを回避する手段として効果的です。
越境物のある不動産を売却したいのなら、隣人との間で越境物に関する覚書を交わすことが欠かせません。
越境物に関する覚書の作成手順や記載すべき内容について、それぞれ見ていきましょう。
越境物の覚書の作成手順
越境物に関する覚書は、以下の手順で作成していきます。
- 土地家屋調査士に依頼して境界を確定させる
- 越境物を特定する
- 越境物の解消方法について隣人と話し合う
- 越境物の覚書を作成する
まずは越境物が隣地にどのくらい侵入しているかを明確にするためにも、土地家屋調査士に依頼して土地の境界を確定させましょう。
そのうえで、どのような越境物がどのくらい隣地へ侵入しているのかを特定し、どう解消するのかを隣人と話し合います。
隣人との話し合いがまとまったら、越境物に関する覚書を2通作成して互いに署名・押印し、それぞれが1通ずつ保管します。
越境物の覚書に記載すべき内容
越境物に関する覚書には、おもに以下の内容を記載します。
- 越境物の詳細
- 互いに越境物を把握していること
- 越境物の所有者
- 越境物の解消方法とタイミング
- 覚書の内容は次の所有者にも継承される旨
【越境物の覚書のひな型】
このうち、越境物のある不動産を売却する際に必要不可欠なのが「覚書の継承義務」です。
あくまでも覚書の内容は当事者同士にのみ適用されます。
そのため越境物のある不動産を売却した場合、新たな所有者となった方に覚書の内容は基本的に受け継がれないのが原則です。
しかし、隣人との間で越境物に関するトラブルが起こり得る不動産を売りに出しても、買主が見つかることはほぼありません。
そこで覚書の内容が新たな所有者にも適用されるよう、「当該土地を第三者に譲渡した場合は第三者に対しても覚書の内容を継承させ、効力がおよぶものとする」旨を記載する必要があるのです。
なお、土地家屋調査士に依頼すると越境物に関する覚書も作成してくれます。
依頼時には、境界の確定にくわえて越境物の確認、覚書の作成もしてもらいたい旨をしっかりと伝えるようにしましょう。
以下の記事では、土地の境界の確認方法や境界に関してのトラブル事例を解説しています。
併せて参考にしてください。
隣人と越境物の覚書を交わさない3つのデメリット
越境物のある不動産を売却するにあたり、隣人と覚書を交わさないと以下3つのリスクに見舞われる可能性があります。
越境物に関する覚書を隣人と交わさないと起こり得る3つのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
不動産の資産価値が下がる
越境物のある不動産の売却時に覚書がないと、資産価値が下がることは覚悟しなければなりません。
越境物は「瑕疵」として見なされるからです。
瑕疵とは、不動産に存在している欠陥や不具合を指します。
瑕疵のある不動産だからといって、売却時に市場相場よりも値下げをしなければならないわけではありません。
しかし瑕疵のある不動産を相場で購入したいと考える方はまず存在せず、需要自体がないために必然と資産価値が下がってしまうのが実情です。
買主が見つかりにくくなる
越境物のある不動産を売却したいと考えても、覚書がないと買主はほぼ見つかりません。
前述のように、覚書は「越境物の存在を土地の所有者と隣人が互いに把握しており、解消方法について合意している」ことを証明する書類です。
したがって越境物に関する覚書がないと、「すでに隣人トラブルが起こっているのではないか」「今後隣人との間でトラブルとなるのではないか」と買主に不安視されてしまいかねません。
将来的にトラブルが起こり得る可能性が高い不動産を購入したいと考える買主はまずいないため、越境物のある不動産を売りに出しても売れ残ってしまうのがオチです。
ただし覚書がなくても、専門の買取業者に依頼すると越境物のある不動産をスムーズに売却できます。
専門の買取業者には、隣人と交渉して越境物の問題を解消したうえで活用できるようにする独自のノウハウがあるからです。
専門の買取業者である弊社AlbaLink(アルバリンク)でも、これまでに越境物のある不動産を多く買い取ってまいりました。
無料査定は24時間365日対応しているので、越境物のある家をいくらで売却できるのかが知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
なお、以下の記事では越境物のある不動産のように隣人トラブルに見舞われている土地を売却する方法を解説しています。
併せて参考にしてください。
越境物を隣人に時効取得される恐れがある
覚書がないと、越境部分の土地を隣人に時効取得されてしまうデメリットもあります。
時効取得とは、「一定期間所有の意思をもって占有した場合に、他人の物であっても自分の所有物にできる」制度です。
たとえば越境物が占有している箇所を隣人が自分の土地と思い込んでいる場合には10年、自分の土地ではないと知っていたときでも20年経過すると、時効が成立して越境部分の土地の所有権が隣人へと移行します。
つまり越境物の存在を知りながら放置を続けると、土地の一部を隣人に取られてしまう恐れがある点に注意が必要です。
時効取得について詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
越境物の覚書を作成する3つのメリット
ここまで解説してきたように、越境物に関する覚書を交わしておかないとさまざまなデメリットに見舞われる恐れがあります。
したがって、越境物のある不動産を売却したいなら、事前に隣人との間で覚書を交わしておくことをおすすめします。
越境物に関する覚書を作成するメリットは、以下の3つです。
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
隣人トラブルを未然に回避できる
越境物が存在していても、覚書がある限り隣人トラブルに悩まされずに済みます。
弊社がおこなったアンケート調査によると、敷地内に侵入している隣家の木の落ち葉などに悩まされている方は少なくありません。
しかし覚書を交わす際には越境物の撤去等に関する話し合いもおこなうため、将来的にトラブルが起こるリスクを未然に回避できるのです。
越境物をすぐに撤去するのが難しいときには、いつどのように解消するのかも含めて覚書に記載しておきましょう。
買主が見つかりやすくなる
覚書を交わしておくと、越境物のある不動産を売却する際に買主が見つかりやすくなる点もメリットです。
前述のように、覚書の内容が次の所有者にも受け継がれる旨を隣人と約束しておけば、買主も隣人トラブルに対する不安点を解消できて安心して購入できるようになります。
越境物の時効取得を回避できる
越境物が占有している土地の時効取得を回避できる点も、覚書を作成するメリットのひとつです。
隣人と越境物に関する覚書を交わしておくと、「越境物が占有している土地の所有権が自分にあることを隣人が承認した」と証明でき、時効成立までのカウントをゼロに戻せるようになるのです。
ただし、覚書を交わしてから再度20年が経過すると、時効取得が成立して土地を取られてしまいかねません。
そのため隣人による時効取得を防ぎたいのなら、10年、または20年ごとに越境物に関する覚書を交わすか、越境物の存在を解消することが求められます。
隣人から越境物の覚書作成を拒否されたときの3つの対処法
越境物に関する覚書の作成は「義務」ではなく「任意」によるものなので、隣人が話し合いにすら応じてくれないこともあります。
隣人に越境物の覚書の作成を拒否されたときには、以下3つの対処法のうちのいずれかを検討するとよいでしょう。
このうち、もっともおすすめなのは越境物のある不動産を専門の買取業者に売却することです。
上記2つの対処法を実施するには隣人との話し合いが必要ですが、覚書の作成にも応じてもらえないほど関係性が悪い場合には断られる可能性が高いでしょう。
その点、専門の買取業者に依頼すると越境物のある不動産でもスピーディーに買い取ってくれるので、隣人トラブルに関する悩みからすぐに解放されます。
隣人から越境物の覚書作成を拒否されたときの3つの対処法について、具体的に解説していきます。
越境している箇所を解消する
越境物を取り除いてから売りに出せば、覚書がなくても買主が見つかる可能性が高まります。
たとえば越境物が樹木の枝や葉であった場合、隣人に切るよう催促したにもかかわらずに応じてくれないときは、越境されている側が枝葉を選定することが可能であると民法第233条第3項第1号で定められています。
(竹木の枝の切除及び根の切取り)
第233条3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
また、越境物が樹木の根の場合は隣人に催促をせずに切っても問題ありません。
第233条4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
ただし、民法で定められているからとはいえ、勝手に隣人の樹木を切ってしまうとトラブルへと発展しかねません。
したがって越境物を解消するためには、隣人と慎重に話し合いを進めていくことが重要です。
越境している部分の土地を売買する
樹木などとは違い、隣家の屋根の庇が越境しているなど簡単には越境物を解消できないケースもあります。
そのような場合には、越境物が占有している土地を分筆したうえで隣人に売却すると越境問題の解消が可能です。
登記簿上でひとつとされている土地を複数に分割して登記し直すこと。
越境している部分の土地を隣人に購入してもらえば不動産の瑕疵はなくなるので、一般の不動産同様に売却できるようになります。
ただし、土地を分筆するには測量費用や登記費用、土地家屋調査士への報酬として数十万~百数十万円ほどを負担する必要があります。
また、そもそも隣人に土地を購入する意思がなければ交渉は成立しないので、あまり現実的な選択肢とはいえません。
なお、土地を分筆して売却する方法は以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
専門の不動産買取業者に売却する
越境物のある家の売却に際して隣人に覚書の作成や越境物の解消を拒否された場合には、専門の買取業者に相談することをおすすめします。
専門の買取業者の強みは、土地家屋調査士や弁護士などの専門家と連携している点にあります。
そのため越境物に関する問題が生じている家でも、隣人と交渉してトラブルを解消したうえで買い取ることが可能なのです。
覚書の作成や越境物の解消なども、専門の買取業者が代わりにおこなってくれます。
隣人との話し合いなど売却に際して余計な手間をかけたくない方におすすめの方法といえます。
なお、当サイトを運営している弊社AlbaLink(アルバリンク)は、越境物のある不動産をはじめ、権利関係などのトラブルが生じている訳あり物件の買取を専門としています。
年間の買取実績は600件以上にのぼり(2023年1月~10月実績)、以下のように弊社をご利用いただいたお客様からも高評価をいただけております。
また2023年11月には株式会社東京証券取引所TOKYO PRO Marketへの上場を達成し、社会的な信用も得ています。
信頼できる専門の買取業者に越境物のある不動産を売却したいとお考えの方は、ぜひ弊社の無料査定をご活用ください。
なお、査定を依頼したからといって無理な営業をかけることはいっさいありませんので、安心してお問い合わせいただければ幸いです。
なお、以下の記事では越境物のある不動産のような買い手が見つかりにくい土地をスムーズに、かつお得に手放せる方法を解説しています。
併せて参考にしてください。
まとめ
樹木の枝や屋根の庇など越境物のある不動産を売却する際には、覚書の作成が必須です。
隣人との間で覚書を作成していないと、不動産の資産価値が下がるだけでなく、隣人トラブルを恐れて買い手が見つかりにくくなる点に注意が必要です。
ただし、覚書の作成は法律で義務づけられているものではないため、隣人から協力を断られてしまう可能性もあります。
もし隣人との交渉が決裂して越境物に関する覚書を作成できないときは、専門の買取業者に売却するとよいでしょう。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は、越境物のある不動産など権利関係が複雑な不動産の買取を得意としている専門の買取業者です。
過去には、一般の不動産業者が取り扱わない訳あり物件専門の買取業者としてフジテレビの「newsイット!」にも取り上げられました。
弊社は弁護士や土地家屋調査士などの専門家とも連携しているため、越境物に関するトラブルを解消する術に長けています。
そのため、越境物のある不動産をスピーディーに、かつ適正価格で買い取ることが可能です。
越境物のある不動産を少しでも早く手放したい、越境物のある家をいくらで買い取ってくれるのかが知りたい方は、お気軽に弊社までお問い合わせください。