そもそも未登記建物とは
「未登記建物」と「相続登記未了建物」という二つの言葉が混同されてしまうことがありますが、未登記建物とは、登記簿自体がまだ起こされていない(=一番最初にするべき「表題登記」すらされていない)状態です。
建物登記簿の全体的な仕組みは下記のようになっています。
- 表題部(建物の物理的現況)
- 権利部 甲区(所有権や差押えなどの権利)
- 権利部 乙区(抵当権や根抵当権、賃借権など主に担保権や利用権)
【登記簿謄本の見本】
「未登記建物」は表題部すら存在しないのに対し、「相続登記未了建物」は、表題部や甲区が存在するものの、権利部の甲区がいまだに親や祖父母などの名義になっている状態のことであり、両者は全く意味が異なります。
建物が登記されているかの確認方法
では、建物が表題登記されているか(未登記建物ではないか)をどのように確認したらよいのか、その方法を解説します。
未登記建物の最も簡単な確認方法は、「固定資産税納税通知書」「公課証明書」「不動産課税台帳」などの公的書類を取得することです。
【固定資産税納税通知書の見本】
これら公的書類は、市区町村役場の「資産税課」で取得できます。
ただし、固定資産税納税通知書などは、所有者本人もしくは委任状を持つ代理人しか原則として取得できず、相続人が取得する場合は戸籍などで所有者の相続人であることを示す必要があります。
登記済みの建物であれば物件欄を見ると、建物の所在する土地とともに「家屋番号」が振られているのが通常ですが、未登記建物には所在土地の地番は入っていても家屋番号が入っていません。
登記がされていないわけですから当然「表題登記の登記済証、所有権保存登記の権利証も存在しない」ということになります。
【登記権利証(登記識別情報通知)の見本】
また、公的書類を確認する方法の他に、土地の管轄法務局まで出向いて「この土地上に登記された建物が存在するかどうか調べてほしい」と依頼することも可能です。
上記のように建物全体が登記されていないケースもありますが、建物の登記自体は存在するものの、後から増築した部分が反映されていないこともよくあります。
例えば、「床面積100㎡で登記されているが、増築して実態は130㎡になっている」「増築部分が反映されていないため、建物表題部の登記は昔のままの100㎡になっている」といったパターンです。
建物の種類や床面積が異なる場合、表題部の変更をしなくても「相続登記」することが可能ですが、実態を登記簿に反映させるために「表題部の変更登記」を済ませておくのが得策です。
相続した不動産の名義を被相続人から相続人へと変更する登記手続きのこと。
2024年4月1日より相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に手続きを済ませないと罰則が科される恐れがある。
なお、2024年4月1日以前に相続した不動産でまだ相続登記を行っていない場合は、2027年3月31日までに名義変更する必要がある
なお、相続登記について知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
相続時に未登記を放置してはならない
相続の際に未登記建物を発見した場合、そのまま放置してはなりません。
そもそも建物を新築、取得した者には表題登記をする法的義務があり、登記手続きを怠れば過料に処されるおそれがあります。
一つずつ見ていきましょう。
相続人には表題登記申請義務がある
未登記建物を相続した相続人には表題登記を申請する義務があります。
建物を建築したのが親や祖父母であっても、先代が表題登記申請義務を果たしていないのであれば相続人が申請義務を承継しているからです。
不動産登記法第47条(建物の表題登記の申請)
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。(以下省略)引用元:不動産登記法第47条
なお、相続人が表題登記を行う場合には二つの方法があります。
被相続人(亡くなった人)の名義で表題登記を行う
ひとまず被相続人の名義で表題登記を入れ、その後相続人名義で所有権保存登記を行います。
死者の名義で表題登記をすることに意味があるのか疑問に思う人もいるでしょうが、遺産分割協議(※)が調っていない状況でも、ひとまず被相続人の名義で登記を済ませれば、登記義務を全うできます。
被相続人の遺産について法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員で分け方を話し合うこと。
その後で遺産分割協議により誰の名義にするかを決定した後、相続すると決まった相続人の名義で所有権保存登記を行えばよいのです。
相続人の名義で表題登記を行う
遺産分割協議がすでに調っているのであれば、いきなり相続人(不動産を受け継ぐ人)の名義で表題登記を行います。
遺産分割協議で相続人名義にするのであれば極力、複数人での共有名義を避け、代表者を決めて単独名義にすることをおすすめします。
共有にするとその後の不動産の管理や処分に共有者間の協議が必要になる場合が多くなり、なかなか各共有者の思い通りにできなくなるからです。
表題登記申請義務に違反すれば過料に処される
上記のとおり表題登記を申請することは「義務」となっており、怠れば10万円以下の過料に処されることになっています(不動産登記法第164条)。
ただ、過料が科されるケースというのはさほど多くないのが実態です。
未登記のままでは売れない
表題登記すらない状態の建物は、理論的に売買契約は結べても、買主がダイレクトに表題登記を行うことができないため、まずは登記簿を起こさなければ売買できません。
新築建物を購入した場合は買主から表題登記を行うのが一般的ですが、その場合はあくまでも建物の業者等から「所有権を取得した者」として表題登記の申請権限を持つからです。
買主が表題登記を申請するには、建築確認を取った売主からの「譲渡証明書」を登記申請の際に添付するのが実務です。
しかし、すでに相続されている建物であれば建築した被相続人から買主が直接買い受けたわけではないため、譲渡証明書を発行することができず、そのため買主からの表題登記申請ができないのです。
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なお、未登記建物の売却方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
放置すると将来の相続人にも影響が
未登記のまま放置した場合、自分たちが死亡した後の相続人にも悪影響を及ぼすことがあります。
年数が経てば経つほど建物を建築した当時の資料が散逸する可能性が高くなるため、誰が建築したのかが不明となり、表題登記の申請義務者がわからなくなります。
事実上、固定資産税を負担していた人が相続人である可能性は高いのですが、必ずしもそうではないこともあります。
何らかのいきさつで法定相続人以外の占有者が固定資産税を払っている状態になっていることもあり、そうなると「本当の所有者は誰なのか?」という最も基本的なところから根拠を探さなくてはならなくなります。
そして、何代も放置すればネズミ算式に人数が増えていて、最終的に誰が承継するべきかを決めること自体が非常に困難になります。
話し合いがまとまらなければ、建物の価値は下がっているのに弁護士を入れて登記のためだけに何百万も費用をかけなければならなくなるリスクもあります。
そのため、とにかく未登記に気付いたらきちんと登記する方向に動く、というのが原則です。
相続後に未登記建物を解体するなら表題登記は不要
未登記だった建物を相続後に解体するのであれば、わざわざ表題登記を起こす必要はありません。
放置された未登記建物がすでに数十年経過など老朽化しているケースも少なくなく、相続のタイミングで取壊しをする方がよいこともあります。
家屋滅失届を自治体に提出しなければならない
未登記建物を解体した場合、「家屋滅失届」を自治体の「資産税課」など固定資産税を課税する部門に提出します。
たとえ、未登記の建物であっても、役所側は航空写真や現地調査など何らかの形で建物の存在を把握して固定資産税を課税していることがほとんどです。
市区町村が独自に調査するのは、所有者があえて登記しないことによって固定資産税を免れることを防ぐためです。
よって、取り壊した場合にはこの家屋滅失届を出さなくてはずっと固定資産税が課税され続けてしまう状態になるため、忘れず提出するようにしましょう。
未納分の固定資産税を請求される
未登記建物を放置すると、過去に未納分の固定資産税を請求される恐れがある点もデメリットです。
登記の有無にかかわらず、毎年1月1日時点における不動産所有者には固定資産税が課されます。
しかし未登記建物の場合、自治体がその家の所有者を把握できていないケースが少なくありません。
そのため、固定資産税の徴収が滞っていることがあるのです。
相続した未登記建物の固定資産税が未納であることが発覚した場合、過去にさかのぼって高額の税金を請求される可能性がある点には注意が必要です。
なお、未登記建物には住宅用地の特例は適用されません。
住宅用地の特例とは、居住用の家屋が建っている土地の固定資産税が最大で6分の1に軽減される制度です。
したがって、土地に課される固定資産税額が通常よりも高い点にも注意しましょう。
建物が未登記であることに気づいたら、できる限り早く所有権移転登記を行うことが大切です。
未登記建物を相続する流れ
未登記建物を相続する手順を説明します。
建物表題登記を自分で申請できるように書いてあるサイトもありますが、一般の人が自分で申請するのは事実上困難です。
現地調査や測量、図面作成といった、知識を持たないと難しい作業がある上に、本人申請だと法務局による現地調査が入るなど面倒なことになる可能性が高いため、専門家である土地家屋調査士に依頼しましょう。
財産調査
確認済証などがとじ込まれたファイルや建物が存在する土地の公図、地積測量図、建物の存在する土地の全部事項証明書(登記簿謄本)などを土地家屋調査士に渡し、状況を調査してもらいます。
上記の通り未登記の建物であっても相続財産になり、相続人から表題登記の申請が可能ですが、古い建物だと一番大変なのが「当時の確認済証などが紛失しており所有者がわからない」ことです。
表題登記の際に「所有権証明書」として確認済証などが必要となりますが、もし見つからない場合には成人2人からの「上申書」を添付するなど、実務的にはイレギュラーな対応が必要となる場合があります。
資料による調査の後、現場での写真撮影や場合によっては測量を行うこともあります。
なお、未登記建物の所有者がわからずにお困りの方は、以下の記事を参考にしてください。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、法定相続人(民法で指定された相続人)全員の間で「遺産のうち不動産は長男、預貯金は次男」などのように配分を決めることです。
遺産分割協議は、たとえ法定相続人の中で行方不明だったり認知症の人がいてもその人を除いて行うことは許されません。
行方不明者がいれば「不在者の財産管理人」を、認知症の人がいれば「成年後見人」を家庭裁判所に選任してもらい、選任された人に本人を代理してもらう必要があります。
遺産分割協議が完了したら、登記や預貯金解約などの場面で使用するため協議内容を書面にします(遺産分割協議書)。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書の書き方のポイントを説明します。
被相続人の最後の本籍、最後の住所、相続開始日(死亡日)、遺産分割協議書作成日付、遺産の内容、誰に何を相続させるかなどを記載します。
特に、遺産の内容を特定する際には「誰が読んでも明確にわかりやすく疑義が生じないように記載する」ことが大切です。
遺産分割協議書に不動産を記載する際は「登記された不動産」であれば、登記簿そのままに「所在、家屋番号、種類、構造、床面積」を記載します。
しかし未登記物件の場合、遺産分割協議書には「固定資産税評価証明書に記載された建物の現況や床面積」を記載することになります。
遺産分割協議書には法定相続人全員の実印押印、そして印鑑証明書(協議時点での住所が載っていれば特に期限なし)の添付が必要です。
遺産分割協議書の書き方は以下の記事をご参照ください。
表題登記
上記の通り、表題登記は土地家屋調査士が専門家として本人を代理することが可能です。
通常の表題登記に必要な書類は以下の通りです。
- 建物図面
- 各階平面図
- 住民票
- 所有権証明書(確認済証、検査済証など)
- 土地家屋調査士への委任状
相続人から申請する場合、相続を証する書類として下記が加わります。
- 被相続人の除籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 戸籍の附票
- 遺産分割協議書(印鑑証明書つき)
確認済証など、本人が所持する書類は土地家屋調査士にそのまま渡します。
戸籍等は士業なら職権で代理取得が可能ですし、委任状は土地家屋調査士の事務所側で作成してもらえます。
所有権保存登記
所有権保存登記は、表題登記の次に来る「甲区」の最初に入る「所有権に関する登記」です。
甲区と乙区、つまり権利に関する登記は司法書士が専門家として本人を代理することが可能です。
- 住民票
- 司法書士への委任状
相続人から申請する場合の相続を証する書類は表題登記の場合と同様です。
委任状は司法書士の事務所側で作成してもらえます。
未登記建物の相続にかかる費用
未登記建物の相続時に発生する費用は、合計でおおよそ20~30万円です。
内訳をご説明します。
土地家屋調査士の報酬
表題登記でおおよそ10万円くらいが相場ですが、床面積、建物の形状によって通常より価格が上がることもあります。
現在は報酬が自由に設定できることになっているため、各事務所によって設定金額は異なりますが、以前存在した土地家屋調査士会による報酬基準表を目安として設定している事務所が多くなっています。
よって、相場はありますが、事前に見積もりを取ってみることをおすすめします。
司法書士の報酬
所有権保存登記でおおよそ2万円~5万円くらいが相場ですが、こちらも表題登記と同様に、建物の床面積や種類により異なる場合があります。
現在は報酬が自由に設定できること、旧報酬基準に従っている事務所が多いことは土地家屋調査士と同様です。
やはり事前の見積もりを取ることがおすすめですが、土地家屋調査士を決めた時点でそちらと提携している司法書士事務所を紹介されることが多いでしょう。
両士業が連携している方が全体として手続きがスムーズに進行するため、特に急いでいる案件の場合は提携している事務所に依頼することがおすすめです。
登録免許税
表題登記には登録免許税は課せられません。
所有権保存登記は原則として固定資産税評価額の1000分の4ですが、家屋の使用目的等による軽減措置、軽減要件の細かい定めがありますので依頼先の司法書士の見積もりを確認しましょう。
相続後に活用しない未登記建物は専門の買取業者へ
未登記建物を相続しても活用しないというケースでは、なるべくすみやかに買取業者へ買い取ってもらうのがベストです。
現在、空き家が社会問題となっていますが、複数いる子供が全員地元から離れて自分の家を新築しているため実家を誰も使う予定がない、という家庭は非常に多いものです。
家屋は誰も住まなくなると急速に老朽化するため、何年も放置してから売却するくらいならなるべく早く決断する方がよいことは言うまでもありません。
一般への売却だと時間がかかるケースであっても、積極的に物件買取を行っている不動産業者に対してなら大幅に早く売却手続きが完了します。
特に、土地家屋調査士や司法書士などの関連士業と提携している不動産業者であれば、自分で士業事務所を探す手間もありませんのでなおさらスムーズです。
とにかくすみやかに遺産分割協議を終了させること、そして売却できるかどうかに不安があってもひとまず不動産業者に相談してみることをおすすめします。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)では司法書士などの専門家とも連携しているため、未登記建物でも問題なく買い取ることが可能です。
また、 弊社Albalinkは訳アリ物件専門の買取業者として、他社では断られるような複雑に利権が絡まる相続物件を多数買い取ってきました。
実際、地方の不動産の相続が発生し、弊社でその不動産を買い取らせていただいたお客様からは、以下のような感謝のお言葉を頂きました。
かねてより悩みの種であった地方にある不動産をいよいよ相続することとなり、相続人全員で話し合い、買取業者様にお願いすることにしました。 譲渡益は見込んでおらず、とにかく早い段階での現状渡しが実現しそうな業者様を探し、口コミや実績からAlbaLink様にご相談いたしました。 断られてしまうのでは、と不安が募りましたが、担当の方が当初より親身に寄り添って下さり、難しい条件の不動産ではありましたが、何とかお引き受けいただけることになりました。 やり取りも非常にスムーズ且つ迅速で、相続発生から短期間での契約締結となり、長年の肩の荷が下りてホッといたしました。 AlbaLink様にご相談して本当に良かったです。また、ご担当いただいた方にも心より感謝申し上げます。
上記は信憑性の高いGoogleの口コミにお客様が書き込んでくださったものですが、その他にも弊社はGoogleの口コミで多数の好意的な評価を頂いております。
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まとめ
この記事では、遺産の中に未登記建物がある場合に、相続人が取るべき対処法をご説明しました。
繰り返しにはなりますが、相続した建物を決して未登記のままで放置してはいけません。
未登記建物を登記しなければ、物件を売却できないばかりか、相続人が10万円以下の過料に処されるおそれがあります。
必ず、土地家屋調査士や司法書士に手続きを委任して、未登記を解消しましょう。
なお、特に活用する予定がなく、売却する前提で未登記建物を相続するという人もいるでしょう。
未登記建物を売却するのであれば、法的に問題を抱えた不動産を取り扱う不動産買取業者に直接売却するのが賢明な判断です。
原則売主負担で行わなければならない未登記建物の登記手続きを、不動産買取業者が全面的にサポートしてくれるからです。
当サイトを運営する「株式会社Albalink」は、未登記であったり、相続人同士で揉めていたりするような不動産でも積極的に買い取っています。
過去には、一般の不動産業者が取り扱わない訳あり物件専門の買取業者としてフジテレビの「newsイット!」に紹介された実績もあります。
完全無料で査定を承っておりますので、本当に売れるのか知りたいという人は、気兼ねなくご連絡ください。