相続土地国庫帰属法は「土地の所有権を国に帰す」ための法律
相続土地国庫帰属法は、「土地の所有権(土地を使用 ・処分等できる権利)を国に帰す」ための法律です。所有者のわからない土地の発生を防ぐことを目的としています。
令和5年(2023年)4月27日から施行されることが、令和3年(2021年)12月14日に閣議決定されました。
土地の所有者が申請手続きをおこない、法務大臣から承認を得られれば、相続等によって取得した土地の所有権を国に返還できるようになります。
簡単に言えば、「土地を相続したけど、いらないから返します!」と申請して、OKを貰えれば国が引き取ってくれるわけです。
いらない土地を手放す方法として画期的に見えるこの法律ですが、実は承認される土地がかなり限定的で、手続きには費用も手間もかかります。
というわけで、国庫への帰属が承認される要件や費用、その流れについて具体的に解説していきます。
いらない土地を手間や費用をかけずに手放す方法も後述しておりますので、詳細はいらない土地を手間や費用をかけずに処分したい方は買取業者へをご参考ください。
それでは、次章から相続土地国庫帰属法の詳細を見ていきましょう。
相続土地国庫帰属法の適用要件は細かく定められている
相続土地国庫帰属法では、「承認申請できる人」と「承認される土地」の適用要件が細かく定められています。
特に、土地の承認を制限する要件は10つあり、いずれか1つでもあてはまれば土地を国庫に帰属させられません。
それでは、具体的な内容をそれぞれ見ていきましょう。
申請できるのは相続等によって土地を取得した人のみ
国庫帰属法の承認申請をできるのは、相続(もしくは遺贈)によって土地の所有権の全て又は一部を取得した所有者のみです。それ以外で土地を取得した人は申請できません。
例えば、過去に売買で取得した土地の所有者は、相続等で土地を取得したわけではないので、承認申請できません。
なお、複数人で所有権を共有している土地(共有名義の土地)の承認申請をおこなうには、共有者全員の合意が必要です 。1人でも土地の国庫への帰属に反対する人がいれば、申請できません。
承認される土地の条件はかなり厳しい
国庫への帰属が承認される土地の要件はかなり厳しく定められており、主に「土地の管理に過大な費用・労力がかかる土地」の承認が制限されています。
費用や労力をかけて引き取った土地を管理するのは国ですので、どのような土地でも受け入れる訳にはいかないからです。
先ほど少し触れましたが、承認される土地の要件は全部で10つあり、大きく分けると「却下要件」が4つ、「不承認要件」が6つです。
下記の4つの「却下要件」にあてはまる土地は、そもそも申請自体が却下されます。
国庫帰属法の申請却下要件
- 建物が立っている土地
- 担保権や収益につながる権利が設定されている土地
- 通路等第三者による利用が予定されている土地
- 有害物質で汚染されている土地
- 境界の不明な土地やその他所有権の範囲等で争いがある土地
一方で、下記6つの「不承認要件」に1つもあてはまらなければ、土地の国庫への帰属が承認されます。
国庫帰属法の不承認要件
- 崖にあり、管理に過大な労力や費用がかかる土地
- 管理作業を阻害する有体物(車や樹木他)がある土地
- 管理・処分を阻害する有体物が埋まっている土地
- 隣地所有者と紛争が起きていることで、管理が困難な土地
- その他管理に多くの時間・費用・労力を必要とする
参照元:e-GOV|相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 第二条第三項各号、第五条各号
上記の条件に1つでもあてはまる土地は、国庫帰属の承認を得られません。
どうしても承認を得たければ、条件を満たすよう申請前に工事等をおこなうことになります。必要となるおよその費用(一例)については、土地の要件を満たすための工事費用にて簡単に説明しております。
なお、これらの条件にあてはまらなければ、農地や山林であっても、国庫への帰属の承認申請することは可能です。
承認申請には費用がかかる
相続土地国庫帰属法の承認申請には、下記の3つの費用がかかり、総額で数十万円から数百万円にのぼります。
- 手数料
- 負担金
- 工事費用
なお、「工事費用」は前述した承認要件を満たす土地であれば不要です。
では、具体的にどれくらいの金額なのか、それぞれ分けて見ていきましょう。
職員による審査にかかる「手数料」
承認申請の手続きをするには、「手数料」がかかります。
手数料は、職員が行う審査に必要とする、すべての調査等にかかる費用を政令に基づいて算出されます。
職員による調査内容について問い合わせてみましたが、現段階で詳細は不明でした。
どれくらいの手数料がかかるのかはわかりませんが、おそらく高くても数万円程度と考えられます。
ただし、承認申請する土地によっては、数十万円もの費用がかかることも予想されます。
例えば、土壌汚染の可能性のある土地です。
お伝えした通り、承認される土地の要件の一つに「有害物質による汚染がされていないこと」があります。
申請された土地が有害物質によって汚染されている可能性があれば、職員によって調査され、のちに費用を請求されることもあり得ます。
あくまで予想ではありますが、もし調査費用を請求されれば、数十万円以上もの高額な費用を申請者が負担することになります。
承認されたら納める「負担金」
土地の国庫への帰属が承認されたら、申請者は土地の管理費用の一部として「負担金」を納めなければなりません。
参照元:e-GOV|相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 第十条
この「負担金」の金額を定めた政令が、令和4年(2023年)9月29日に公布されました。
下図のように、基本的には20万円とされていますが、例外が多いため注意が必要です。
法務局によると、国庫への帰属が承認された土地が主に下記3つのいずれかにあてはまると、申請者は面積に応じた指定の金額を納めることになります。
負担金額20万円の例外となる土地
- 市街化区域又は用途地域に指定されている地域内の宅地
- 市街化区域又は用途地域に指定されている地域内の農用地ほか
- 主に森林として利用されている土地
負担金額20万円の例外とされる土地の負担金の算定式はこちらから確認いただけます。
承認申請をおこないたい土地が市街化区域や用途地域等に指定されているかどうかは、用途地域マップからご確認ください。
土地の要件を満たすための工事費用
お伝えした通り、適用要件をクリアしなければ、土地の国庫への帰属は認められません。
承認申請をおこないたければ、要件を満たすよう土地の工事をおこなう必要があります。
たとえば、家屋が建っている土地であれば、数十万円から数百万円もの費用をかけて解体工事をおこなわなければなりません。
家屋解体費用の目安となる金額は、下記のとおりです。
坪単価(万円) |
20坪 |
30坪 |
40坪 |
50坪 |
80坪 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
木造 |
3~5 |
80~100 |
100~150 |
160~200 |
180~250 |
200~300 |
軽量鉄骨造 |
6~7 |
120~140 |
150~210 |
240~280 |
200~300 |
300~500 |
重量鉄骨造 | ||||||
RC(鉄筋コンクリート) |
6~8 |
120~160 |
180~300 |
240~320 |
250~400 |
500~800 |
家屋の解体費用の詳細については、下記記事で詳細を解説しております。

いらない土地を手放すために費用をかけたくない方は、専門の買取業者に直接土地を売却すれば、売却経費は一切かかりません。詳細は不動産買取業者は空き家や土地だけをそのまま買い取れるにてご紹介しております。
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相続土地国庫帰属法の承認申請の流れ
国庫帰属の承認を得るには、土地所有者が手数料を払って申請手続きをおこない、法務局による調査や審査に通過し、指定の負担金を納める必要があります。
では、具体的にどのような流れで土地の国庫への帰属が承認されるのかを見ていきましょう。
実際に国に土地を引き渡すまで、どれくらいの時間がかかるかは未だ不明ですが、数ヶ月から数年かかるおそれがあります。
前述したように、土地の承認要件を満たすよう工事をおこなうとなれば、土地を手放せるまでさらに費用も時間もかかるでしょう。
専門の不動産取業者であれば、建物の建つ土地や障害物のある土地等も、そのままの状態で買い取れますので、所有する土地の処分にお悩みの方はぜひ弊社までお問い合わせください。
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申請者は申請する土地が条件を満たしているのか確認
まずは、申請したい土地上に建物や管理を阻害する有体物、地中に埋設物がないか確認しましょう。
申請したい土地が承認される土地の条件はかなり厳しいで紹介した要件を満たさなければ、建物の解体や障害物の撤去等の工事を行う必要があります。
承認申請手続きを行う
次に、下記項目について記載した書類と指定の手数料を用意し、地方法務局の窓口で手続きを行います。
- 承認申請者の氏名又は名称及び住所
- 承認申請に係る土地の所在、地番、地目及び地積
- 承認申請の審査に必要とする実費その他一切の事情を考慮し政令で定める額の手数料
参照元:e-GOV|相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 第3条
なお、現時点において、申請に用いる書類の書式等の指定はありません。
法務大臣による要件審査・承認
法務大臣から委任された地方法務局の職員が、申請された土地や周辺地域の実地調査を行います。
法務局職員は、申請者や申請された土地の関係者等に事実聴取等をおこない、承認が可能か審査します。
この審査により、承認される土地の要件を満たしていることが確認されれば、法務大臣から承認通知が出されます。
ただし、以下に該当すると、承認は却下されます。
- 承認申請の権限がない人からの申請
- 要件に該当しない土地や、提出書類、負担金の規定に違反している場合
- 申請者が事実の調査に協力しない場合
参照元:e-GOV|相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 第四条
申請者が負担金を納付する(通知から30日以内)
国庫帰属への申請が承認されると、法務大臣から承認と負担額の通知が届きます。
申請者は通知を受けてから30日以内に負担金を納めなければ承認の効力を失ってしまうので、注意してください。
国庫帰属が完了
申請者が負担金を納付した時点で、土地の所有権は国庫に帰属します。
国庫への帰属が完了すれば、国が土地を管理するので、元の所有者が土地に対して負う責任は一切ありません。
なお、申請が承認された土地が農地や山林として利用されている土地は、農林水産省の管理となります。
いらない土地を手間や費用をかけずに処分したい方は買取業者へ
お伝えしてきた通り、相続土地国庫帰属法で承認される土地はかなり限定ですし、高額な費用がかかります。
いらない土地を手間や費用をかけずに処分したい方は、不動産買取業者に相談してみましょう。
詳しくはこれからご説明しますが、専門の買取業者に依頼すれば、あなたは手間や費用をかけることなく、いらない土地を手放せます。
相続発生前であれば、「相続放棄」によって土地の相続を回避することも可能ですが、他の全ての遺産も相続できなくなるので、あまり現実的な方法ではありません。(詳細は後述します)
では、専門の買取業者への依頼がおすすめな理由と、相続放棄は土地の処分方法としておすすめできない理由を、それぞれ説明していきます。
不動産買取業者はいらない土地や空き家をそのまま買い取れる
いらない土地を手間や費用をかけずに処分したい方は、不動産買取業者に直接売却しましょう。
所有者にとっては「いらない土地」であっても、専門の不動産買取業者はこれまでの知識や経験を活かして、高確率で買い取れるからです。
買取業者は買い取った物件を商品化し、自社での運用や再販といった事業目的で不動産を買い取ります。
商品化までにかかる費用が物件の価格から差し引かれますが、売主は一切費用を支払うことなく、いらない土地を現金化して手放せます。土地上に建物が建っていたり、障害物があったりしても、売主が解体や撤去等をおこなう必要は一切ありません。
そのほか、国庫帰属法や後述する相続放棄と比較した買取でのメリットは下記の通りです。
買取業者に売却するメリット
- 不要な土地だけを売却できるため、他の遺産を所有し続けられる。
- 相続させたくない土地を生前に処分できる。
- 建物を解体する必要がないため、解体費用をカットできる。
- 売却後は一切の管理責任を負わない。
弊社では、全国で不要な土地等の査定や売却のご相談を、無料で承っております。
スタッフがこれまで蓄積してきた独自の活用ノウハウを活かし、適正な価格で買い取ります。
「他社で買取を断られてしまった」「他社の買取価格が低くて納得できなかった」という方も、ぜひご相談ください。
※「物件住所・氏名・メールアドレス」を伝えるだけで相談を依頼できます。
※査定のみ、相談のみのお問い合わせでも大歓迎です。
「相続放棄」すると全ての遺産を相続できなくなる
相続発生時に裁判所に申述して「相続放棄」することで、いらない土地を相続せずに済みます。
ただし、相続放棄はいらない土地の処分方法としておすすめできません。
その理由は、下記の3つです。
- すべての遺産を相続できなくなる
- 次の相続人による管理が始まるまで管理責任を負う
- 管理責任から完全に逃れるには数十万円~数百万円もの予納金を支払う必要がある
このように、相続放棄すると、いらない土地だけでなく他の遺産も相続できなくなりますし、管理責任から完全に解放されるには数十万円以上の費用がかかります。
親の所有している土地を将来的に相続したくないという方は、相続発生時に一度土地を相続して、前述した専門の買取業者に売却することをおすすめします。
相続放棄についての詳細は下記記事をご覧ください。

相続土地国庫帰属法の話題性を悪用した「原野商法」に注意
相続土地国庫帰属法は、国による引き取りを認められる条件がかなり厳しく、申請者は金銭的に大きな負担を強いられます。
いらない土地を処分したい所有者にとっては見逃せないこの制度ですが、話題に乗じた詐欺の被害が多発しやすくなるおそれがあります。
というのも、相続土地国庫帰属法の話題性を悪用して土地の処分方法に困っている人の不安をあおり、土地の買取を装った詐欺の横行が予想されるのです。
詐欺被害にあわないためには、相続土地国庫帰属法の中身を正しく理解することが重要になります。
原野商法の例①
相続した山林を手放したいと思っていたところ、業者から「買いたい」と電話勧誘を受けた。土地売却の契約書面にサインし、手数料と言われ18万円を支払った。その際、複雑な説明を色々と受けたが、後日契約書を見たところ、売却と併せて別の山林を買う契約になっていた。
原野商法の例②
過去に原野商法の被害にあっていたが、その土地を買いたいという電話が業者からあり自宅訪問を受けた。複数回の訪問ののち、土地を売るつもりで売買契約書に署名したが、各回の訪問のたびに「違約金として」「税金対策の費用として」とさまざまな名目で費用を請求され、総額約700万円を支払った。しかし実際は、まったく説明を受けていない山林を購入したことになっていた。
まとめ
相続土地国庫帰属法は、不要な土地を国に引き渡せる制度です。
ただし、実際に承認される土地はかなり限定的ですし、承認されても申請者は数十万円もの負担金を納めることになります。
そのため、いらない土地や空き家等の処分方法として、実用的な制度とは言えません。
いらない土地や空き家を手間や費用をかけずに手放したい方は、専門の買取業者に相談することをおすすめします。
専門の買取業者に直接売却すれば、売主は一切の手間や費用をかけることなく土地等を手放せますし、まとまった現金を手に入れられます。
いらない土地や空き家等の処分にお悩みの方は、ぜひご相談ください。
※「物件住所・氏名・メールアドレス」を伝えるだけで相談を依頼できます。
※査定のみ、相談のみのお問い合わせでも大歓迎です。