底地が競売になるケースと回避手段
「競売」は、冒頭でも説明した通り、債務整理を目的とした不動産の売却を、裁判所が主導となり法的強制力をもって行う手続きのことです。
ローンの支払いや事業融資などの返済が滞った場合などに、債務者から強制的に債権を回収することを目的として、金融機関などの債権者が地方裁判所に申し立てをすることで競売が行われます。
競売と任意売却の違い
不動産を売りに出して売却金を借金返済に充てる方法には、競売の他に、「任意売却」があります。
任意売却も「不動産を売却して借金返済に充てる」という面では競売と変わりません。しかし、手続きとしては全然違うものです。
以下の表を使い、二つの違いを一覧にまとめました。
任意売却 | 競売 | |
---|---|---|
法的強制力 | なし | あり |
手続き前に必要なこと | 債権者の同意・売却完了後の競売の取り下げ | 債権者による裁判所への申し立て・裁判所の判決 |
売却価格 | 高い(市場価格で売れる) | 市場価格より2~3割安い |
手続き後の残債 | 少なくなることが多い | 多く残りやすい |
残債の返済 | 分割払いを検討してもらえる | 一括返済 |
明け渡しについて | 元の所有者の都合をある程度考慮してもらえる | 強制退去 |
退去費用・引っ越し費用 | 売却金から捻出可能な場合がある | 出ないことが多い |
プライバシー | 保証される(周りに知られることはない) | 競売の事実が周りに知られてしまうことが多い |
手元に現金が残るか | 残る可能性が比較的高い | 残る可能性はないに等しい |
交渉や意思表示 | 交渉可能・意思の考慮もされる | 交渉の余地もなく意思の考慮もされない |
簡単にまとめると、競売は、裁判所への申し立てなど法的手続きをもって債権者の意思のみで強制的に行われ、売却価格や退去時期も含めて底地の所有者の意思は一切反映されません。
それに対して任意売却は「借金返済に充てるために不動産を売却する」ことに対して債権者の同意を得ることで、法的拘束なく、所有者自らの意思である程度自由に売却手続きを進めることができます。だからこそ「任意」という言葉が使われているのです。
底地の競売を回避するには任意売却しかない
競売を回避するには、実質的にこの任意売却しか方法がありません。
債権者としては債権を回収することができればいいわけですから、そもそも借金返済を滞納しなければ何も問題はありません。極論、借金を滞納していたとしても、何らかの手段で残債分を一括で返済できれば、それで解決なわけです。
しかし、競売という言葉が出てくる以上は、既にその借金返済がまともにできない状態であるということ。そして、借金返済がまともにできない状態ということはすなわち、「まとまったお金が用立てできない」ことを意味します。そのまとまったお金を用立てる手段こそが不動産の売却になるわけですから、借金の完済を目指すなら、方法は競売もしくは任意売却しかないということになります。
よって、競売を回避したいなら、方法は任意売却に絞られます。そして、先程も説明した通り、競売は強制で、任意売却は自由。どう考えても任意売却の方が、所有者に有利な方法です。
所有している底地が競売になる事の4つのリスク
競売になってしまうと、売却に際して所有者の意思は一切反映されませんが、それ以外にも様々な面で困ることになります。
ただでさえ低い底地の売却金額がより低くなる
競売は不動産の状態や管理状況に関して保証がない分、市場価格より安く売却されるのが一般的です。
これは、引渡しの際に法的手続きを挟む場合があることや、不動産の内覧が直接行えないなど、競売入札者に不利な条件であることを理由として金額が下がるためで、競売不動産評価額(鑑定評価)の相場としては、市場時価の70%程度になります。
底地を借地人に貸している状態というのは、「地主と借地人で土地の所有権を分け合っている状態」とも言い換えられ、土地を自由に活用することができません。
底地の競売において売りに出されるのは、底地の所有者が持つ「底地権(底地の所有権)」と、借地人と結んでいる「賃貸借契約」の権利のみです。借地人の持つ「借地権(底地内の建物の所有権)」は売却をしても残ったままになります。
買受人は借地権までは手にすることができないため、底地の落札はされにくく、それゆえに価格が下がりやすい傾向にあるのです。
任意売却なら市場の相場から下がらない!大まかな底地の評価額を知る方法
先程も説明したように、任意売却は競売のように裁判所を介さず売却手続きを行えるので、売却手続き上は通常の不動産売却と殆ど変わりません。
無論、債権回収手段ということは変わらないものの、それが価格に影響することはなく、市場時価の相場から落ちることもなく、適正な価格で売却できます。
底地が市場価格としてどのくらいで売れるのかは、実は以下の計算式でもって、大まかに計算できます。なお、借地権にかかる相続税評価の際にも、以下の式のうち「借地権評価額」の計算式が用いられています。
底地の評価額=自用地の評価額-借地権評価額(自用地の評価額×借地権割合)
「自用地の評価額」とは、国税庁が公開している「財産評価基準」における「路線価」をもとに計算できる、算定基準となる土地全体の財産評価額です。そして、「借地権評価額」は土地全体の評価額のうち、借地権の及ぶ割合分の評価額を指します。
底地はいわば借地権と底地権が分かれて設定されている土地ですから、底地権割合分の評価額と借地権割合分の評価額を足せば土地全体の評価額になります。よって、底地の評価額を求めるには、土地全体の評価額から借地権評価額を引けばいいのです。
路線価による自用地の評価額計算や、買取相場はこちらをご確認ください

実際には多角的な視点から評価される
実際の評価額算定の際には、様々な視点を通して、多角的に検討されます。
たとえば、借地権の評価額は以下のように様々な要件によって算定されますが、こうした借地権評価は上記の数式で示したように、底地の評価額に影響します。
ア 将来における賃料改定の可能性とその程度
イ 借地権の態様及び建物の残存耐用年数
ウ 契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間
エ 契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
オ 将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
カ 借地権の取引慣行及び底地の取引利回り
キ 当該借地権の存ずる土地についての更地としての価格又は建付地としての価格引用元:競売不動産評価基準
なお、「借地人から地代を現在どのくらいの金額受け取っているのか」「将来的に地代の値上げはできそうか」といったような地代徴収権や賃貸借契約の状況も加味されます。
底地が競売になるとプライバシーが漏れる可能性がある
競売は裁判所が主導となってあらゆる手続きが進みますが、裁判所はこうした手続きに関して非常に強い権限を持っているので、競売が決定した場合、必要な手続きを拒むことができません。
そうした強い権限の前には、プライバシーなども考慮されない点に注意しましょう。たとえば、競売が決定すると、以下のようなことが起こります。
現況調査が行われる
不動産の差し押さえや競売は「強制執行」とも呼ばれ、法的根拠に基づいた様々なやり取りを行う「執行官」が競売決定から1ヶ月以内に裁判所より任命・派遣されます。
執行官は、まず差し押さえた不動産の調査(現況調査)を行います。劣化状況や管理状況など不動産の現在の状態を正確に把握し、価値を評価する必要があるからです。こうした調査の際に、執行官や不動産鑑定士による撮影・測量その他の手段で不動産を徹底的に調べられ、丸裸にされます。
裁判所から派遣されている執行官には、鍵を強制的に開錠して調査ができるといったように、非常に強い権限があります。また、暴力的な手段で所有者が調査を妨害するなど抵抗する場合には、執行官は警察の支援を受ける権限すら持っていますので、おとなしく調査に従う他ありません。
底地の競売に際しては、当然ですが底地の土地をメインに調査が入ります。底地内に建てられた借地人が所有する建物は調査目的外ではありますが、ある程度の調査はされます。
競売に出された底地を買うつもりの人は今後の底地内建物の取り扱いも含めて検討するので、底地にどんな建物があり、借地権はどうなっているかなどの調査が必要になるためです。なお、底地内の建物については、現況調査報告書には「件外建物」として情報が記載されます。
このように、底地が競売に出されると、底地内に建物を保有する建物の調査の際、借地人のプライベートもある程度漏れる可能性があります。
競売に出されるとネットや新聞に掲載される
競売は不動産の売却を目的としていますから、当然ではありますが一般に広く知ってもらわなければ意味がありません。そのため、競売を主導する大多数の裁判所が、日刊新聞に広告を打つなどして競売物件の情報を世に広めています。
逆をいえば、自分の不動産が競売にかけられると、競売に出ていることが周りにバレるどころか、広く一般にも知られてしまうことになります。
近年では、裁判所が運営する「BITシステム」のようにインターネットにも競売物件情報が掲載されるようになり、新聞よりもむしろネットがメインになってきています。
裁判所によっては新聞への掲載をやめ、インターネットのみに絞っているところもありますが、もし新聞への掲載をやめる場合には、裁判所ホームページにその旨が告知されます。
全国の裁判所で導入されている、インターネット上で競売物件情報を公開するシステム。
引越費用(立ち退き料)が出るとは限らない
競売によって買い手がつき、所有権が買受人に移ると、前所有者は強制的に不動産を手放し、立ち退かざるを得ません。しかし、立ち退くにしても引っ越し費用すらないという場合もあるでしょう。
競売によって買い手が決まると、所有者は強制的に立ち退きを命じられ、買受人が決めた退去日には物理的に強制的な立ち退きを余儀なくされます。たとえ前所有者が新たな場所で生活を立て直す資金がなく困っていたとしても、買受人には立ち退き料や引っ越し費用を払う義務はありません。
どうしても困っている場合にはお願いしてみる価値はあります。しかし、買受人は底地とはいえ落札相場の高騰や登録免許税等の負担など購入までにも高額の費用を支払っていますし、多くは転売を目的として購入していますから、少しでも利益を出すことを何より意識しているはずです。そのため、そうした本来払わなくていい費用を出してくれることはまずないとみていいでしょう。
いつ退去すればいいのか分からない
競売の場合、退去日は買受人が決めるもので、前所有者の都合や意思はまったく反映されません。
そのため、退去日を告知されるまで、前所有者は退去日を知ることができません。そのうえ、退去日が決まったら強制的に出ていかなければならないのです。いつ退去するのかわからない状況は非常に不安で、憔悴するに余りある状況といえます。
なお、名義が買受人に移動した後も前所有者が退去を行わない場合には「不法占拠」にあたり、不法占拠が長期化すると裁判所の執行官により強制的に退去させられます。
底地が競売に出されそう!任意売却へ変更するなら早めの交渉を
競売の場合は退去の日まであらゆる点において前所有者にとって不利な状況ばかりになってしまいます。底地を競売に出されそうなとき、多くの方ができれば競売は回避したいと思うはずです。
先述した通り、競売を回避する手段は、任意売却しかないといっていいです。
突然まとまった金が舞い込む奇跡などないに等しいですから、もし所有している底地を競売にかけられそうになっているのなら、出来る限り早く任意売却へと舵を切りましょう。
任意売却には債権者の同意が必須
ただし、任意売却に舵を切るといっても、債務を滞納している身で好き勝手に舵を取ることはできません。任意売却を行うためには、債権者の同意が必須です。
借金の返済を滞納していて気まずいかもしれませんが、任意売却で何とか手を打ってもらえないかお願いする価値は十分にあります。
何故なら、競売のように市場時価より価格が落ちる方法よりも、高く売れる可能性が残っている任意売却の方が債権者としても助かるからです。債権者も少しでも債権を多く回収したいですから、任意売却という手段は債権者にとっても悪い話ではありません。
『競売開始決定通知書』が届く前になるべく早く交渉しよう
任意売却に関して不都合が特段ないのなら、すぐにでも任意売却を検討している旨を債権者に伝えましょう。これは、早ければ早い方がいいです。何故なら、滞納をしたまま放っておくと、いずれ『競売開始決定通知書』が届くからです。
『競売開始決定通知書』は、債権者が競売の申し立てを行ったことを債務者に通知するもので、債権者がいよいよ最後の手段に出たということを意味します。
『競売開始決定通知書』が届いてからでも6カ月以内は取り下げが可能
この競売開始決定通知書が届いたからといって、ただちに競売が強行されるわけではありません。
『競売開始決定通知書』には「開札期日」が記載されていますが、この開札期日が競売の正式な開始日です。一般的には、『競売開始決定通知書』が届いてから6か月後が開札期日となります。
そして、開札期日前日まで、債権者は競売申し立ての「取り下げ書」を提出できます。つまり、『競売開始決定通知書』が届いたとしても、その日より6カ月以内に任意売却をして債権者から取り下げ書を出してもらえば、債権者からの取り下げという形で、競売は回避できるのです。
ただし、債権者の殆どは、任意売却にかかるすべての手続きが完了した後でなければ、取り下げ書を提出しません。当然ですが、債権者は競売を取り下げるからには、競売と同等の「債権回収が確実にできる状況」を作らないといけませんから、単に約束を取り付けただけだったり、手続きが途中の状態だったり、不確定な状況下では取り下げ書を提出しないのです。
こうした債権者の意図も加味すると、先述した「早ければ早いほどいい」の意味が分かってくるはずです。
不動産という大きな買い物で、ましてや底地であれば買い手はなかなか見つかりませんから、6カ月以内にすべての手続きを完了させるのは非常に困難と言わざるを得ません。
なるべく余裕をもったスケジュールで任意売却を「完了」させるために、早め早めの行動が肝要です。
任意売却に応じてくれる買い手を見つけることも重要
底地は「不完全所有権」であることが大きなネックになります。
底地には借地権が設定された建物があるうえ、借地人所有の建物がある以上は、地代こそ取れるものの土地の自由な利用もできないため、商品としては非常に厄介な代物です。
底地は「コブ付き」の不動産といってもよく、なかなか一般の買い手は見つかりません。しかし、買い手さえ見つかれば、スムーズに競売の取り下げに持っていける可能性が大きくなります。
任意売却をするなら、底地の運用に強い底地専門の不動産買取業者がおすすめです。底地専門の買取業者は、底地を買い取ったのちに借地人から借地権を買い取るなど、底地の運用に長けているので、一般の方には扱いにくい底地でも利益を見出して買い取ってくれることが多い理由からです。
周りに買い取ってくれるような投資家がいる場合は別ですが、そうでなければ底地専門の不動産買取業者に相談してみるといいでしょう。
底地が競売に出されたら?借地人にデメリットはあるか
色々な努力もむなしく、底地が競売に出されてしまったとしましょう。
そうした場合に、自分の心配はもちろんですが、賃貸借契約を結んで底地に建物を建て、現在も平穏に生活している借地人のことが心配になる方も多いはずです。
底地が競売に出されてしまうことで、借地人に何か害が及ぶことはあるのでしょうか。
借地人には少なくとも大きな損や危機はない
結論から申し上げますと、借地人に少なくとも今すぐどうにかしなければいけないような大きな害や危険はないといっていいでしょう。
借地人の持つ「借地権」は、底地が競売に出されても保護されます。なぜかといえば、あくまでも底地が競売に出される際には、「底地の所有権(底地権)」のみが競売に出され、借地人の借地権に関しては競売の対象ではないからです。
借地人には事前に競売になった事実は伝えておこう
ただし、底地の所有者が競売を経て変わった場合に、将来的に以下のようなリスクが発生する可能性があります。底地の所有者が変わる際に発生するリスクを借地人に適切に認識してもらうために、競売が決まったら早い段階で借地人に伝えておくことをおすすめします。
借地上の建物の登記をしていないと新地主と争いになるリスクがある
まず、「借地人の借地権の登記もしくは借地人が所有する建物の登記を行っておく(登記を備えておく)」ことを借地人に勧めましょう。
もし、借地人が借地権の登記もしくは底地内に建っている借地人所有の建物の登記をしていないと、新たに底地を買って地主となった第三者に対し、借地権を主張できないからです。
借地権に関しては民法ではなく借地借家法という法律で定められていますが、借地借家法において以下のような記述があります。
第二節 借地権の効力
(借地権の対抗力)
第十条 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
ここで注意しなければならないのは「登記されている建物を所有するときは」という文言です。仮に借地権の登記がなくても、底地内に建つ建物に対して借地人の登記があれば、第三者に借地権を主張できるのですが、もし登記がない場合には、借地権を主張できません。
判例としては、借地人の子供名義の建物に対して借地人の借地権が認められず、新たに土地を取得した第三者による請求を認め、建物の取り壊しと明け渡しを裁判所が命じた事例があります。
裁判要旨
土地賃借人は、該土地上に自己と氏を同じくしかつ同居する未成年の長男名義で保存登記をした建物を所有していても、その後該土地の所有権を取得した第三者に対し、「建物保護ニ関スル法律」第一条により、該土地の賃借権をもって対抗することができないものと解すべきである。
つまり、借地人名義の登記をしていない場合、先に新しい地主によって名義変更の登記がされてしまうと、建物の収去(取り壊し)と明け渡しをしなければならない事態になってしまいます。
借地人ではない別人の名義で登記してしまっている場合も同様に借地権の主張が出来ないので、上記のデメリットを借地人に伝える際には、名義が違う場合は借地人名義に変更しておく点を強調しましょう。
加えて、この借地人名義の登記に関しては、競売の際には裁判所によって差し押さえの登記がされる前に行わなければならないという点も注意してもらうよう伝える事が大切です。
競売に際して借地人が借地権を対抗するためには、裁判所が差し押さえ登記をする前に登記しておかなければ、同じように借地人の借地権を主張できなくなる可能性があるためです。
だからこそ、借地権の登記もしくは建物の登記は借地人名義で、かつ早めに済ませるよう、借地人に伝える必要があるのです。
借地人は地主が変わることで地代を値上げされるリスクがある
新たな地主に変わったのちに、地代を値上げされる可能性もあるという点も借地人に伝えるべきです。
借地借家法の第11条において、一定の条件に合致する場合に地代の増額を請求する権利(地代等増減請求権)が設定されているからです。
(地代等増減請求権)
第十一条 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
底地を買い取った新たな地主は、底地の所有権と共に、地代徴収権も前の地主から承継しています。そのため、これまで通りの地代の請求はもちろん、賃貸借契約書に地代の増額について記載があれば、それに基づいた地代値上げ要求もしくは借地人との交渉の余地を認められているのです。
更には、上記条件に当てはまる場合には、賃貸借契約書に地代の増額についての記載がない場合でも、地代の値上げを主張できます。
もし、突然新たな地主から地代の値上げ要求をされた場合には、借地人はまず賃貸借契約書に基づく協議を行う必要があります。しかし、上記の条件に当てはまる場合には、新たな地主が有無を言わさず地代の値上げを要求してくるリスクもあります。そうした時には、借地借家法第11条第2項・第3項の規定に基づいて対処します。
2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
新たな買主との話し合いがまとまらず地代増額請求訴訟を起こされても、裁判による判決確定までは、これまで通りの地代を払えば債務不履行にはなりません。ただし、判決確定によりこれまで通りの地代よりも高い額で確定した場合は、年一割の利息付きで不足分の地代を支払わなければならなくなります。
逆に、地主からの請求が判決で確定した額より高い場合には、今度は新しい地主側が年一割の利息付きで超過分の地代を返還しなければなりません。交渉が決裂した場合には、司法の場に判断をゆだね、その判断に従うことになります。
少し複雑な話となってしまいましたが、借地人の借地権を借地人自身で適切に保護してもらうためにも、上記の内容は競売が決まった時点で出来る限り早く伝えましょう。
競売の入札と手続き・任意売却後の残債の対応の流れ
それではここで、競売は具体的にどういった流れで行われるのかを解説していきましょう。
競売の入札・手続きの簡単な流れ
これまで、「競売開始決定通知⇒執行官・不動産鑑定士による現況調査⇒6カ月後の開札期日に競売開始」といったように、債務者側の視点で把握できる流れを説明しました。
ここでは、もっと広く、競売物件を買う側の視点も含めて、全体的な流れを見ていきましょう。箇条書きで説明すると以下の通りです。
開札期日の15日前より民事執行センターの物件明細書等閲覧室にて公告書が掲示される。同時に、インターネットサイト(BITシステム)での公開も開始2.物件明細書の閲覧
公告開始と同時に、民事執行センターの物件明細書等閲覧室、あるいはBITシステムにて「競売不動産に関する物件明細書・現況調査報告書・評価書の各写し(いわゆる3点セット)」を閲覧できるようになる3.入札期間の開始
公告書に掲載の指定の入札期間中に入札を受け付ける4.開札期日
開札期日に開札を行い、入札期間中に最高額の入札を行った人が「最高価買受申出人」となる5.売却許可決定
最高価買受申出人に不動産を売却するか否かを裁判所が判断。多くの場合許可が下り、許可が下りた時点で正式に買受人となる。その後、買受人が代金納付を期日まで(一般的には売却許可決定から1ヵ月以内)に行えば正式に購入が完了。6.所有権移転登記
購入が完了すると裁判所により買受人への所有権移転登記が行われ、買受人に所有権が移る。7.引渡し命令、強制執行
仮に所有権取得後、不動産の前所有者が退去を行わないで占有を続ける場合には、買受人は代金納付から6カ月以内に限り裁判所より引渡しを命じる裁判の申し立てを行える。引渡し命令が裁判で確定すると、前所有者は執行官による「強制執行」により、強制的に退去(明け渡し)させられる。
任意売却後の残債への対応
一方、任意売却に関しては、通常の不動産売却と流れは変わりません。重ねて申し上げますが、債権者の同意を取らないと任意売却ができない点だけは要注意です。
債権者の同意がとれ開札期日前日までに任意売却が成立すると、債権者は競売の取り下げを行ってくれます。任意売却は競売よりは高く売れるものの、当然不動産の購入時よりは価格が落ちますし、遅延損害金や損害賠償なども含めるとほぼ確実に残債が残ります。
この残債に関しては以下のような対応が求められます。
任意売却後は債権者と無理のない返済を進める交渉をする
競売が取り下げられても、当然ですが任意売却後の残債については返済しなければなりません。残債の返済に関しては、債権者との交渉によって無理のない返済を進めましょう。
任意売却後の残債の返済に関しては、競売のように手続きが強制的に進むことはありません。
任意売却に関しては債権者の同意のもとで行われていますし、任意売却が完了した時点では債権者も債務者の支払い能力や現状などを詳しく把握しています。そのため、債務者の現状が考慮され、無理のない返済計画に応じてもらえる可能性も高いです。
任意売却は明け渡し期日に関してもある程度自由に設定できるので、自分の都合を最大限に考慮してもらえる点もメリットといえるでしょう。競売に比べれば、はるかに良い状況で不動産を手放すことができます。
任意売却先として底地買取に強い不動産買取業者を検討しよう
任意売却を不動産仲介業者に一任する手段もありますが、できる限り高値で底地を売却したいなら、自分で売却先を選びましょう。
前述の通り、底地の運用に強い底地専門の不動産買取業者への売却が最もおすすめです。底地専門の買取業者なら、面倒な交渉も不要で即現金化してくれます。
底地専門の買取業者は1つではありません。以下のポイントを意識して、少しでも早くかつ高値で任意売却ができるよう、業者を検討しましょう。
- 複数の業者に査定見積もりを依頼し競わせる
- 底地買取実績が豊富な業者を選ぶ
- レスポンスの早い業者を選ぶ
特に競売開始決定通知後の任意売却は時間が限られるため、やり取りがスムーズな業者を優先して選ぶことを強くおすすめします。
おすすめは底地買取業者はこちらから確認できます。

まとめ
以上、「底地が競売に出されるとどうなるのか」「競売から任意売却に変更するにはどうすればいいのか」をメインテーマとして解説しました。
任意売却と競売では、不動産を手放すことは同じでも扱いに天国と地獄ほどの差があります。
期限切れで競売の開札が始まってしまうのはあまりにもったいないですから、滞納が続いてしまい差し押さえの危機にあるなら少しでも早く動いて、任意売却の同意が取れるよう働きかけることが大切です。
底地の任意売却の際は、底地専門の不動産買取業者を選びましょう。
当社では底地の買取から販売まで一貫して自社で賄っており、高額買取が可能です。弁護士や司法書士とも提携していますので、法的な手続きも安心してお任せください。