登記申請書について
まずは、実際に変更登記の登記申請書はどのようになっているのかを確認します。
登記申請書の雛形
法務局のサイト「不動産登記の申請書様式について」より、以下の種類別に書式および記載例のダウンロードが可能です。
申請書様式は、戸建てとマンションで異なります。
- 住居表示実施
- 住所変更(戸建・区分建物)
- 氏名変更(戸建・区分建物)
- 住所および氏名変更(戸建・区分建物)
【記載例】氏名変更の登記申請
【記載例】区分建物(マンション)の場合の住所移転登記申請
登記申請書の書き方
申請書のそれぞれの項目について、書き方や注意点を解説します。
※共有名義の一人に変更があった場合の申請書を例にしています。
「登記の目的」
共有であっても、「所有権登記名義人住所(氏名)変更」と記載する。
「原因」
原因には、以下の事項を記載する。
- 住所変更の場合
住民票上の住所移転日または、自治体の住居表示実施日と変更事由 - 氏名変更の場合
戸籍上の変更日と変更事由
「共有者●●の住所(氏名)」
新しい住所もしくは氏名を記載する。
「申請人」
今回住所や氏名が変更する共有者のみが申請人となる。
「添付書類」の「登記原因証明情報」
登記原因証明情報は、登記の原因となった事実や法律行為によって権利変動が生じたことを証明するために必要な情報です。
変更登記の場合は、以下の書類を登記申請書に添付しましょう。
- 住所変更の場合
変更した記載のある住民票または、戸籍の附表 - 氏名変更の場合
変更の旨が記載された戸籍謄本(抄本)
「添付書類」の「代理権限証書」
登記申請を司法書士に依頼する際に、その司法書士が代理人であることを証明するために必要となるのが「代理権限証書」です。
一般的には委任状を使用します。
「登録免許税」
変更登記にかかる登録免許税は現金納付(銀行等の領収書を登記申請書に貼付)もしくは収入印紙(登記申請書に貼付)で納めます。
オンライン申請の場合は、ネットバンクやATMから電子納付が可能です。
住所変更登記、氏名変更登記とは
住所(氏名)変更登記の手続きを行うにあたり、押さえておきたいポイントは以下の通りです。
それぞれのポイントについて、解説します。
不動産の売却前に住所(氏名)変更登記は必須
冒頭にも説明したように、変更登記とは、住所や氏名を変更した人が不動産売却する際に必ず行うべきプロセスです。
本来は、住所や氏名を変更したら所有者はすぐに変更登記をするべきなのですが、大半の人はすぐには行いません。
変更登記が義務ではなく、登記しないことによる罰則がないからです(ただし、2026年4月までに変更登記が義務化予定)。
そのため、ほとんどの場合、所有者は不動産を売却する段階になって初めて、登記簿上の住所と現在の住所が異なることに気が付きます。
売買に先だって変更登記をしていなかった場合には、売買当日に変更登記と所有権移転登記を連続して行う(連件登記)ことが一般的です。
重要なのは、必ず「所有権移転登記よりも変更登記を先に申請しなくてはならない」ということです。
万一、当事者が住所等の変更を見落としていていきなり所有権移転登記を申請すると、その所有権移転登記は受理されず、法務局によって「登記の取り下げ」を命じられます。
申請をなかったことにしてやり直すこと
つまり、買主が代金を支払ったのにその日に登記名義を移してもらえないという重大な事態になるのです。
住所(氏名)変更登記と売買等による所有権移転登記の違い
変更登記とは住所や氏名など、登記名義人の表示を変更することであり、権利自体を動かす行為ではありません。
一方で、売買等による所有権移転登記は売主から買主へ権利自体が移転することです。
なお、共有不動産の所有権移転登記の手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
相続登記の前提として変更登記は不要
被相続人(亡くなった方)の住所が登記簿上と死亡時で異なる場合、相続登記の前に変更登記を行う必要はありません。
変更登記は変更した本人が登記するものですが、その人はもう亡くなっているからです。
つまり相続人は直接相続登記を申請します。
被相続人の住所が所有権取得時と死亡時で異なると、今回の申請について、被相続人とされた人が本当に登記簿の名義人と同じ人なのかどうかが法務局にはわかりません。
そこで、「相続登記」の添付書類として「被相続人の住所の変更を示す書類」を添付し、登記官に「住所は変わっているが被相続人に間違いない」ことを証明します。
問題なければ被相続人の住所は旧住所のままで、相続登記を行うことになります。
なお、共有不動産の住所ではなく名義を変更したい方は、以下の記事をご参照ください。
変更登記が必要になるタイミング
変更登記が必要となるタイミングは、以下の3つです。
具体的にはどのような状況で変更登記が必要になるのか確認してみましょう。
住所変更(引っ越し、住居表示実施)
登記名義人に「引っ越し」や「役場による住居表示実施」等の事情が発生したら、登記簿上の住所を変更する登記をしなくてはなりません。
また稀ではありますが、もともと登記された住所が間違えていたために「更正登記」をしなくてはならないケースもあります。
登記内容の誤りを訂正すること
不動産登記簿には、権利を取得した際の住所氏名で登記がされています。
引っ越しであれば本人が行ったことなので変更登記の必要性に気付きやすいのですが、住居表示実施については役所側の都合で行われることから、忘れないように注意が必要です。
氏名変更(結婚・離婚)
登記名義人が姓か名のどちらかを変更したら、変更内容を反映させる登記をしなければなりません。
名義人が登記簿上の氏名を変更する登記をしなくてはならないのが主に「結婚、離婚」ですが、「養子縁組」などのケースも該当します。
登記簿上の氏名について、まれにあるのが、「旧字体で登記簿に載っているが、名義人の印鑑証明書は新字体になっている」場合です(逆も考えられます)。
この場合、登記簿と印鑑証明書の間違いを正す「更正登記」を行うケースと、旧字体と新字体を同一文字とみなし、「更正登記」を行わないケースがあります。
漢字の違いによる登記の要否については判断が難しいため、最初から司法書士に委ねた方がよいでしょう。
売買に伴う所有権移転登記の前準備
本記事のメインテーマですが、これから売買しようとする人(売主側)は、前提としての変更登記を絶対に忘れてはいけません。
なぜなら前述の通り、所有権移転登記よりも変更登記を先に申請する必要があるためです。
ただし、売買の決済日までに変更登記を完了させる必要はありません。
司法書士が売買による所有権移転登記をする際には、連件登記という形で変更登記を同日に行うのが一般的なプロセスです。
つまり、不動産業者に売買を依頼する人は住所変更や氏名変更の事実があったかどうかだけを知らせておけば、あとは本人側で準備すべき書類などを司法書士が指示してくれます。
住所変更登記が2026年4月1日より義務化される
現在は変更登記が義務とはなっていませんが、令和8年(2026年)4月1日からは変更登記が義務化されます。
2026年4月1日より前の変更を登記をしていない場合も、2028年3月31日までに変更の登記を申請しなければならないと定められています。
変更登記義務化は、国が「所有者不明土地問題」の解決のために一つの方策として打ち出したものです。
日本中で相続登記や変更登記が未了である土地が「九州の面積相当」にのぼるというデータがあります。
そのために国が公共事業をスムーズに進められない、民間においても土地取引が進まないなど様々な問題が起こっています。
所有者不明土地を少しでも減少させるために、相続登記や変更登記は原因発生から一定期間内に登記をしないと、相続人や名義人本人に「過料」を課すという法改正がされることになりました。
改正の施行がまだまだ先とはいえ、今後は登記名義人に何らかの変更事項が生じたら「すぐ登記簿に反映させる」ことを心がけなくてはなりません。
相続登記についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
変更登記の流れと必要書類
変更登記はできれば住所や氏名の変更事由が発生する毎に行うことが望ましいですが、現実には名義人が売却すると同時に行われているのが一般的です。
変更登記を司法書士に依頼した場合は、
といった流れになります。
それぞれの過程を詳しく見てみましょう。
1.司法書士から変更登記にあたり必要な書類の指示を受ける
変更登記にあたって必要な書類は次のとおりです(売買による所有権移転登記の書類は含んでいません)。
- 引っ越しが1回の場合は住民票
- 引っ越しが2回以上の場合は戸籍の附票
- 住居表示実施や町名地番変更など、役所サイドが行った変更については住居表示実施証明書など役所が発行する証明書(住所地の役所や市民センターなどで無料で取得できる)
- 司法書士への委任状(認印でOK)
なお、戸籍の附票については、戸籍が「転籍」や「除籍」などの理由で除かれた後5年間しか保存されないのが基本でした。
しかし、令和元年6月20日に法改正されたことによって、以降は保存期間が150年に伸長されています。
そのため、平成26年頃より以前の戸籍の附票は発行されないことがあり、登記簿上の住所が記載された戸籍の附票を取得できない(書類上住所が繋がらない)ことがあります。
本籍地を別の住所に移すこと
死亡、婚姻、離婚、転籍などの理由によりその戸籍から除かれること
住所の繋がりが立証できない場合はその他の書類が必要となりますが、それぞれのケースにより必要書類が異なりますので司法書士の指示を仰ぎましょう。
2.司法書士に必要書類を渡し、登記申請書の作成を依頼する
司法書士が変更登記の申請書を作成して法務局に申請すると、法務局内部での審査、登記簿への記載が始まります。
登記完了までにかかる期間は、申請時期や申請先の法務局によって異なります。
なお、不動産所在地により管轄法務局は決まっており、任意に申請先を選べるわけではないため、期間については申請人側がコントロールできません。
短くて1週間くらいから、長い場合には1か月以上かかることもあります。
売買日に間に合うよう変更登記を完了させたい場合は、申請人はかなり余裕を見ておかなくてはならないということです。
3.司法書士から登記完了後の書類を返却される
法務局で登記が完了すると、司法書士は法務局から完了を確認できる、全部事項証明書(登記簿謄本)、登記完了証などの書類を受領します。
【登記簿謄本の見本】
司法書士側で、申請した内容とおりに登記されたかどうか、全部事項証明書を確認し、間違いがなければ依頼者に郵送または手渡しで返却します。
変更登記は専門家に依頼
変更登記を司法書士に依頼するべきなのか、そして司法書士をどのように選ぶべきかを解説します。
変更登記は司法書士に依頼するべき
売買による所有権移転登記の前提となる変更登記は自分で行うこともできますが、極力専門家である司法書士に依頼するべきです。
「変更登記の流れと必要書類」の項目で解説したように、例えば住所の変更が数回発生しているケースでは、登記簿上の住所と現在の住所の繋がりが証明できないことがあります。
住所の変更を証明する書類が、役所の保存期間を過ぎたため廃棄されていることがあるからです。
プロである司法書士であれば、このような特殊な事例への対応方法にも慣れていますが、一般の人は予想外の事態になった時にどんな書類を準備すればよいかわからないものです。
実務の取扱いを知らない人が変更登記をした場合、住所の繋がりがわからないなどの理由で法務局から「この書類では登記できません」と※補正や※取り下げを命じられることがあります。
申請書や添付書類を直すこと、申請自体は維持される
申請をなかったことにしてやり直すこと
もし売却前提で変更登記に失敗すると、次に来る売却(所有権移転登記)ができないという、あってはならない状況が起こってしまうのです。
売却予定の変更登記については失敗を絶対に避けるという意味で自分では申請せず、不動産業者の指定する司法書士に任せるべきだといえます。
なお、登記費用の面でも、売主が単発でどこかに依頼するよりも業者指定の司法書士にする方が安く済むこともあります。
司法書士の選び方
もし、売買を前提とする変更登記であれば、選択肢はほぼ一つ「売買による所有権移転登記を担当する司法書士に両方依頼する」ということになります。
なぜなら、変更登記と所有権移転登記を同日に、連件登記で行うことが非常に多いからです。
この2つは、絶対に変更登記を先に出さなければならず、順番を逆にすることはできません。
別々の司法書士が行うとなると決済当日に2人の司法書士が連絡を行き違えるリスクがあります。
よって、確実に2つの登記を済ませるためにも同じ司法書士が行うのが一番安全です。
登記費用の相場は2~3万円
登記費用についての大体の相場ですが、土地一筆につき「司法書士報酬のみ」で8,000円~12,000円程度となります。
登記の際には司法書士報酬に加えて登録免許税(一筆につき1,000円)や、登記簿謄本の取得費用、郵送実費などがかかります。
税金については全国統一の金額ですが、報酬についてはそれぞれの事務所で異なりますので事前に見積もりを取って確認するようにしましょう。
大体のケースではトータルで2、3万円くらいに収まることが多いと思われます。
なお、所有権移転登記の費用については「買主が負担」というのが不動産業界での一般的ルールとなっています。
売買を伴うなら不動産屋へ相談
共有名義の不動産を売却する人は、全員で一緒に売却するなら全員分の変更登記と所有権移転登記を一人の司法書士に依頼する方がよいため、最初から不動産業者に任せてしまうことがおすすめです。
なお、他の共有者が売却に同意しない場合は自分の共有持分のみの売却もできます。
その場合でもすべてを不動産業者に任せられることは不動産全体の売却と同様です。
特に早く共有関係から抜けたい人は、手続の問題で迷って時間を浪費することがないよう、早めに業者に相談するように心がけましょう。
なお、弊社Albalinkは訳アリ物件専門の買取業者として、他社では断られるような複雑に利権が絡まる共有持分を多数買い取ってきました。
実際、弊社は下記のように全国各地の共有持分を買い取っており、中には1000万円以上で買い取ったこともあります。
ただ、上記のような買取事例だけを見せられてもピンとこない方もいるでしょう。
そこで、弊社が共有持分を買い取ったお客様からいただいた、直筆のメッセージも紹介します。
引用元:お客様の声(Albalink)
このお客様は共有者である親族と折り合いが悪く、話し合いができる関係ではありませんでした。
そのため、弊社が共有持分を買い取ったことで「(共有者と)やり取りをしなくて済むようになり、気持ちが楽になった」というメッセージをお寄せくださいました。
上記のお客様以外にも、弊社に物件の買取依頼をしていただいたお客様からは「肩の荷が下りた」「もっと早く依頼すれば良かった」といった感謝の言葉を多数いただいております(下記Google口コミ参照)。
また、弊社はお客様からの評価が高いだけでなく、不動産買取業者としては数少ない上場企業でもあり、社会的信用も得ています。
信頼できる買取業者に安心して共有持分を売却し、共有関係から解放されたい方はぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(売却前提の問い合わせでなくても構いません)。
なお、共有持分の売却方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
まとめ
不動産の所有者や共有者の住所氏名が変更している場合、売買による所有権移転登記の前提として必ず所有権登記名義人住所氏名変更登記(変更登記)をしなくてはなりません。
変更登記は権利の変更ではなく単なる表示の変更ですが、住所変更の変遷を証明することが難しいケースもあることから、所有者自身が申請するのが困難なケースがあります。
変更登記と売買による所有権移転登記を連件登記で行う場合、同じ司法書士が申請するのが一番スムーズなため、売却を考える人は最初から不動産業者に任せてしまうことをおすすめします。
なお、共有持分のみなら、ほかの共有者の同意がなくても自由に売却できます。
変更登記が完了していなくても、不動産業者に丸投げすることができるので、共有不動産で持分のみの売却を検討している場合は、ひとまず共有持分専門の不動産買取業者に相談してみましょう。
なお、当サイトを運営している弊社AlbaLink(アルバリンク)は、共有持分に特化している専門の買取業者です。
過去には、フジテレビの「newsイット!」にも訳あり物件専門の買取業者として取り上げられました。
弊社なら、あなたの共有持分をスピーディーに、かつ適正価格で買い取ることが可能です。
ほかの共有者が不動産の売却に応じてくれない、変更登記を行うのが難しいといった方は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。