相続放棄とは
相続放棄とは、亡くなった親などが残した一切の資産や負債を引き継ぐことをせず、相続人の立場から離れることです。
空き家を相続放棄するメリット・デメリット
空き家を相続放棄すると、以下のようなメリットを得られます。
- 空き家の維持費・固定資産税などの費用を支払う必要がなくなる
- 現に占有していなければ(相続時に実際に住んでいなければ)空き家の管理から解放される
しかし一方で、以下のデメリットが潜んでいることも押さえておく必要があります。
- 空き家だけでなく、すべての財産を受け継げなくなる
- 売れる物件をタダで手放している可能性がある
- 現に占有している(相続時に実際に親と同居していた)空き家は相続放棄しても管理義務からは逃れられない
とくに空き家の管理義務については、隣人から損害賠償を請求されるリスクにつながる恐れがあります。
相続放棄をした空き家の管理義務は誰が負うのかについて、次の章から詳しく解説していきます。
相続放棄した空き家の管理義務は誰が負う?
民法では、相続財産の相続権が移る順番が以下の表のように定められています。
これを法定相続人といいます。
順位 | 相続人 |
---|---|
必ず相続人 | 配偶者 |
第1順位 | 被相続人の子 |
第2順位 | 直系尊属(父母など) |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
相続放棄をした空き家の管理義務はいつまで続くのか【2023年法改正のポイント】
相続放棄をしたら、必ず次の相続人に書面などで相続を放棄した旨を連絡をしましょう。
一時的であっても、空き家の管理者がいなくなってしまうと危険だからです。
しかし、相続放棄の申し立てを家庭裁判所におこなっても、すぐに空き家の管理義務(保存義務)から解放されるわけではありません。
2023年の民法改正により、連絡を受けた次の相続人が承認のうえ、空き家の管理を始められる状態になるまでは「現に占有している人」、つまり空き家を実質的に所有している相続人が引き続き管理しなければならないと変更されたためです。
民法第940条では以下のように定められています。
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
引用元:民法第940条
例えば、次の相続人が管理を始める前に空き家が倒壊して通行人にケガをさせた場合は、次の相続人ではなくあなたの責任になります。
次の相続人が空き家の管理を始められる状態になって初めて、あなたの管理責任は消滅します。
相続放棄をしても管理義務から完全に逃れられるわけではない
相続放棄をして次の相続人に空き家の管理を引き継いでも、空き家の管理責任から完全に逃れられない可能性があります。
なぜなら、空き家特措法の「管理者」の見解に、各自治体によって相違があるからです。
空き家特措法では、以下のように定められています。
(空家等の所有者等の責務)
第5条 空家等の所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。引用元:空き家特措法第5条
自治体によっては、空き家法で定められる「管理者」の概念に、相続放棄をした人も含むという見方をしている場合があります。
つまり、「管理者」に相続放棄した人も含まれた場合、当然、相続放棄した人にも、空き家の管理に関する行政からの指導などが入る可能性があるということです。
例えば、行政や自治体から「空き家の窓が割れて景観を乱すし、空き家が犯罪に使われる可能性があるから直してほしい」と指導されたら、直す必要があります。
ただし、相続放棄をした人は、空き家の売却など大掛かりな処分行為はできません。
空き家の売却行為をしようとすることは、空き家の相続を承認したことになり得るからです。
民法921条に、以下のように定められています。
(法定単純承認)
第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
①相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。引用元:民法第921条
相続放棄をした人も「管理者」に含むとみなされた場合、相続放棄したにも関わらず行政からの指導が入り続けますが、相続放棄しているので売却することはできません。
このように、一生空き家の管理責任がつきまとう可能性も十分にあり得ます。
空き家の管理責任から完全に逃れるためには、裁判所にて、相続財産清算人の選任の申立てをしましょう。
相続した空き家の管理義務を免れるための2つの対策
現に占有している者が相続放棄した空き家の管理責任から完全に解放される方法は、以下の2つです。
それぞれの対策について、詳しく解説していきます。
他の人に相続してもらう
相続放棄をすると、次の順位の相続人に相続権が移行します。
後順位の相続人が相続すれば、たとえ被相続人と同居していたとしても保存義務がなくなることになります。
ただし、他の相続人すべてが相続放棄した場合は、保存義務を免れることはできません。
裁判所で「相続財産清算人選任の申し立て」を行う
相続財産清算人の選任の申立てをすれば、空き家の管理責任から完全に逃れることができます。
以下のような場合、相続財産清算人の選任という手段がとられます。
- 何らかの理由で、相続人そのものがいない場合
- 全員が相続放棄した場合
相続人に代わって相続財産の管理をする人。主に、負債の返済をしたり受遺者への支払いをして、残った相続財産を国へ帰属させる役割がある。弁護士や司法書士など、専門職の方が裁判所から選任されることが多い。
もちろん、相続財産清算人が選任されるまでは、相続人は自分の所有物として空き家をきちんと管理しなければなりません。
管理責任から完全に解放されるのは、相続財産清算人が選任されて、空き家の管理を開始できる状態になってからです。
相続放棄した人も相続財産清算人の選任の申立てができる
相続財産清算人の選任の申立てができるのは、利害関係人と検察官です。
相続放棄をした人は、利害関係人として相続財産清算人の選任の申立てをすることができます。
なぜなら、相続人は空き家の管理責任を負わなければならず、利害が発生しているからです。
例えば、空き家が倒壊して通行人にケガをさせたり、犯罪に使われて近隣住民に迷惑をかけたら、管理者である相続人の責任になります。
空き家を放置して重大な管理責任を問われる前に、利害関係人として相続財産清算人の申立てを行いましょう。
相続財産清算人の選任の申立てにかかる費用
相続財産清算人の選任の申立てには、以下の費用がかかります。
内容 | 費用 |
---|---|
収入印紙 | 800円 |
連絡用郵便切手 | 裁判所により異なる |
官報公告料 | 4230円 |
予納金 | ~100万 |
予納金は、相続財産清算人の報酬や相続財産の管理費用に充てられる費用です。
相続財産清算人の報酬は、原則的に相続財産から支払われます。
しかし、相続財産が少ない場合は、申立人が相続財産清算人の報酬に充てる費用を、あらかじめ裁判所に「予納金」として納めることになっています。
予納金の金額は、空き家以外の相続財産がどの程度あるのか、空き家にどれくらいの価値があるのかで変わりますが、100万円を超えることは滅多にありません。
相続財産清算人の業務が終了した際に、余った予納金は返還されます。
相続財産清算人の選任の申立てから予納金が返還されるまでは、早くてもおよそ1年以上かかると考えていいでしょう。
しかし、1円も返還されない可能性も十分にあります。予納金を納める際は、返ってこない覚悟を決めて納めましょう。
高額な予納金を納めて相続財産清算人の選任の申立てをするくらいなら、空き家は売却してしまった方が金銭的にプラスです。
相続放棄に関する相談先は弁護士がおすすめ
空き家をはじめとする遺産の相続放棄の申述の手続きは、もちろん自分で行うこともできます。
とはいえ、3カ月という期限内に多くの必要書類を集めたりしなければならず、普段働いている人たちにとっては負担がかかりすぎます。
必要に応じて、必ず専門家の力を借りましょう。
主な相談先は司法書士or弁護士ですが、弁護士であれば相続に関する問題全般の代理・サポートをしてくれます。
弁護士 | 司法書士 |
---|---|
相続放棄手続きの代理ができる | 相続放棄手続きのアドバイスのみできる(代理権はなし) |
弁護士会照会を使った精度の高い財産調査ができる | 財産調査はできるが弁護士会照会はできない |
遺産分割協議の調整や遺産分割調停・審判の代理ができる | 遺産分割協議の調整や遺産分割調停・審判の代理はできない |
相続放棄以外にできる空き家への対処法3選
ここまで解説してきたように、空き家だけのために相続放棄を選択するのは損をしてしまう可能性があります。
しかし、「現に占有している」場合には次の相続人に引き継ぐか、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらわないと管理責任が残る点は大きなデメリットでしょう。
もし空き家以外の財産を相続したい、管理責任から解放されたいのなら、以下3つの対処法を検討することをおすすめします。
それぞれの対処法について、詳しく解説します。
空き家を活用する
空き家を活用する方法として、以下のようなものが挙げられます。
- 戸建て賃貸物件として活用する
- 店舗物件として活用する
- 福祉施設として活用する
- シェアハウスとして活用する
- 民泊物件として活用する
- トランクルームとして活用する
具体的には空き家となっている建物を活かして活用することになりますが、いずれの方法を選択しても修繕などで費用が発生します。
また、いくら修繕にお金をかけても借りてくれる保証はないため、需要があるかを慎重に調査する必要があるでしょう。
なお、空き家を活用して、ビジネスできる可能性については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

相続土地国庫制度を利用する
令和3年4月、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和三年法律第二十五号)」が国会にて成立しました。
制度が始まるのは、令和5年4月27日からです。
簡単に言えば、ある一定の条件を満たすとき、相続した土地を国庫に引き取ってもらえるという法律です。
しかし、相続した空き家に相続土地国庫帰属法は適応されません。
なぜなら、相続土地国庫帰属法は、相続した土地に対する法律で、建物が建っている場合には適応されないからです。
そのため、相続した空き家は相続土地国庫帰属法の対象にはなりません。
相続土地国庫帰属法を使って空き家を国に帰属させたい場合は、少なくとも空き家を解体し、更地にする必要がありますが、更地解体にかかる費用は、木造住宅で1坪4万円ほど、鉄筋コンクリート造で1坪6万円ほどが相場です。
高額な解体費用をかけて国に帰属させようとするくらいなら、空き家はそのまま売却してしまう方がお財布にも優しく、様々な手続きの手間も省けます。
相続土地国庫帰属制度については以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

空き家を売却する
空き家を処分するなら、相続放棄より売却を選択するべきです。
なぜなら、相続放棄はデメリットが多すぎるからです。
売却してしまえば、これらのリスクを回避できるうえに、売った空き家は現金になるので一石二鳥です。
空き家を売却するメリットは、以下の3つです。
- 空き家の管理責任から完全に解放される
- 相続放棄や相続財産清算人の選任の申立ての負担から解放される
- 空き家を現金化できる
これらのメリットに魅力を感じるのなら、空き家の相続放棄ではなく、売却を検討することをおすすめします。
ただし、最寄り駅から徒歩で15分以上かかるなど、立地条件の悪い空き家を売りたいと考えても、なかなか買主を見つけることはできません。
弊社がおこなったアンケート調査を見てもわかるように、マイホームの購入を考えている方がもっとも重視するのは「立地」のためです。
空き家を多く扱う不動産買取業者であれば、すぐに空き家を現金化することも可能です。
弊社Albalinkは訳アリ物件専門の買取業者として、他社では断られるような空き家も数多く買い取ってきました。
たとえば下記のように「20年以上放置されて老朽化が進んだ空き家」や「不用品で室内があふれてしまっている空き家」を買い取った実績もあります。
【20年以上放置された空き家の買取事例】
【不用品で室内があふれてしまっている空き家の買取事例】
引用元:Albalinkの空き家買取事例
20年以上放置された空き家については780万円で買取らせていただき、所有者には「雨漏りもするような家だったが、思ったより高い金額で買い取ってもらえた」と、金額についても満足していただけました。
また、不用品で室内が溢れてしまっている空き家の所有者は、他の不動産業者から「不用品の回収だけで100万円近くかかる」と言われ、途方に暮れていたそうです。
それだけに「(弊社に)そのまま買い取ってもらえてとても助かりました」と言っていただけました。
上記の方々だけでなく、弊社に買取依頼をしていただいたお客様からは「肩の荷が下りた」「色々不安だったがスムーズに売却できた」といった感謝の言葉を多数いただいております(下記Google口コミ参照)。
また、弊社はお客様からの評価が高いだけでなく、不動産買取業者としては数少ない上場企業でもあり、社会的信用も得ています。
信頼できる買取業者に安心して空き家を売却したい方はぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしたからといって、無理な営業などは行いませんのでご安心ください)。
まとめ
相続放棄をしても、空き家の管理責任から完全に逃れることはできません。
相続放棄をしても、空き家の管理について行政から指導が入り続ける可能性があります。
空き家の管理責任から完全に逃れるには、相続財産清算人の選任の申立てをする必要があります。
しかし、相続財産清算人の選任の申立てには最大100万の予納金がかかります。
余った予納金は返還されますが、1円も返還されない可能性もあり、大きなリスクであると言えます。
高額な金銭的負担を抱え、手間と時間をかけて相続放棄や相続財産清算人の選任の申立てをするなら、相続放棄の前に空き家の売却を検討するべきです。
売却すれば、空き家を相続放棄した場合の管理責任のリスクや、管理責任から解放されるための複雑な手続きや高額な予納金の負担を負うことなく、むしろすぐに現金可できる可能性もあります。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は、全国の空き家を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
過去には、一般の不動産業者が取り扱わない訳あり物件専門の買取業者としてフジテレビの「newsイット!」にも紹介されました。
弊社には買い取った空き家を活用して収益化できるようにする独自のノウハウがあるため、どのような空き家であってもスピーディーに、かつ適正価格で買い取ることが可能です。
相続した空き家の使い道がなくお困りの方は、弊社までお気軽にお問い合わせください。