持分一部移転登記とは
共有者が現在所有する持分の一部だけ売買(贈与)したい場合には、「持分一部移転登記」という手続きがあります。
例えば、持分2分の1を所有するAが自分の持分の半分、つまり4分の1をCに売買すると下図のようなイメージになります。
上記例は共有者以外の第三者Cに売却したケースですが、AがBに4分の1を売却してA「4分の1」、B「4分の3」という比率にすることも可能です。
なお、共有名義・共有持分の概要については、以下の記事で詳しく解説しています。
持分全部移転登記との違い
「持分一部移転登記」に対して、「持分全部移転登記」という手続きがありますが、上記の例で挙げたAが持分2分の1をすべてCに売買(贈与)したケースです。
このケースでも、もちろんAが持分全部をBに売却してBの単独名義にすることも可能です。
なお、この例では買い受ける(または贈与を受ける)側をC一人に設定していますが、買い受ける人が二人以上であっても「A持分一部移転」または「A持分全部移転」という登記の目的になります。
つまり、あくまでも「売却する(贈与する)側」が「どれだけの持分を手放すのか」により、するべき登記の種類が決まるということです。
なお、二人以上が新たに登記名義人として加わるのであれば、各人の持分を登記申請書に記載することになります。
例えば、上記例でAが持分2分の1をCとDに均等に売買(贈与)するのであれば「持分4分の1C」「持分4分の1D」と登記申請書に記載し、登記簿に反映されます。
所有権一部移転登記との違い
「所有権一部移転」とは、不動産全部を所有していた人が所有権の一部を売買(贈与)する登記です。
「持分一部移転」は不動産がもともと(上記例でいえば)AB共有名義だったことが前提ですが、「所有権一部移転」はAの単独名義だったという前提になります。
所有権全部移転
所有権(全部)移転とは、不動産全体を所有していたAが全体をBに売買(贈与)するという、最もシンプルな登記手続きの形です。
実務上、不動産取引でオーソドックスなのは、所有権全部移転です。
持分一部移転登記が必要な場面
上述のとおり、持分の移転登記には、持分一部移転登記・持分全部移転登記の2つがあります。
共有者が自分の持分を「全部」ではなくあえて「一部」だけ手放すことは、どのような場面で必要になるのか解説します。
売買による持分一部移転登記
持分の一部を「売買」すると「持分一部移転登記」の手続きが必要となります。
ただ、一般の人同士が行う不動産取引では、持分の一部を売買するケースはあまり多くありません。
持分を所有する人の売買では「全部」を売り渡すのが普通ですが、次のような場合に「持分一部移転登記」が行われることがあります。
持分一部移転登記の具体例
- 分譲予定の宅地6区画について、将来の所有者が共同で使用する予定の道路がある。
- 各区画の購入者は、自分が取得する土地と共に、道路の土地持分6分の1を購入する。
- 道路の所有者は、分譲した業者である「甲株式会社」。
この場合、最初の区画と共に道路持分6分の1をAに売り渡すと、道路は「甲6分の5、A6分の1の共有不動産」となる。
さらに次の区画をBが購入した場合、道路については「甲が自分の持分6分の5のうち6分の1をBに売り渡す」ことになるため、甲からBへ「甲持分一部移転」の登記を行う。
贈与による持分一部移転登記
持分の一部を「贈与(生前贈与)」した場合もやはり「持分一部移転登記」の手続きが必要となります。
実務上、贈与による「持分一部移転登記」が行われるのは「親子で共有している不動産を将来的に子の単有にしたいので、少しずつ贈与していく」という場面が多いと考えられます。
弊社が行ったアンケート調査でも、将来の「相続税対策」として生前贈与が行われるケースが、実務上多いことがわかります。
引用元:訳あり物件買取プロ|534人にアンケート調査!相続対策をしているのは「約3割」。していない人の意外な理由とリスクとは?
しかし、もし親の持分を一気に子に移転してしまうと国税の中でも税率が高い「贈与税」がかかる心配があります。
そこで、暦年贈与の範囲内で贈与税がかからないように「毎年少しずつ」親から子に持分を贈与していくという方法を取るのです。
基礎控除額110万円の範囲内で長期的に財産を贈与すること。
持分すべての移転まで年数がかかることもあるため、相続開始(親の死亡)までまだ時間的余裕がある場合に検討すべき方法といえるでしょう。
ただし、暦年贈与を使う場合における注意点が2つあります。
- 一回登記手続をするたびに登記費用(司法書士報酬+登録免許税)がかかるため、必ずしも節税効果が高いとはいえない。
- 毎年規則的に贈与していると、あらかじめ持分全部の贈与を予定していたとみなされて贈与税が課税されることがある。
よって、暦年贈与による節税を検討する場合は、事前に司法書士と税理士に相談し、
「贈与を行う上でのコストと効果」
「贈与税を確実に回避するための手法」
についてよく検討する必要があります。
なお、共有持分を所有・取得・譲渡(売却・贈与)した場合の税金については、以下の記事で詳しく解説しています。
持分一部移転登記の手順
司法書士に依頼してAが持分の一部をBに移転登記する際の手順を解説します。
なお、共有持分の移転登記にかかる費用や税金については、以下の記事で詳しく解説しています。
1必要書類の準備(A、B、司法書士)
持分移転登記の際に持分を渡す側(A)、持分を受ける側(B)が用意する書類は以下の通りです。
- 持分を渡す側(A)
- 登記済証(登記識別情報)、印鑑証明書(3カ月以内)
- 持分を受ける側(B)
- 現在の住所が記載された住民票
その他には「登記原因証明情報」といって、法務局に持分移転をすることになった経緯を説明する書類が必要になりますが、司法書士に依頼した場合は司法書士側で作成するのが通常です。
また、司法書士に依頼する場合にはAとB両者から司法書士への委任状が必要ですが、フォーマット自体は司法書士が準備します。
なお、Aは委任状に実印を押印しなくてはなりません。
2登記申請書の作成(司法書士)
司法書士は下記のような登記申請書を作成し、法務局に添付書類と共に提出します。
この申請書例はAが自分の持分のうち4分の1をBに移転するパターンです。
登記申請書
「登記の目的」 A持分一部移転
「原因」 令和〇年〇月〇日売買
「権利者」 〇市〇町一丁目2番3号
「持分」 4分の1B ※Bが取得する持分を記載
「義務者」 〇市〇町二丁目3番4号 A
「添付書類」 登記原因証明情報、登記済証(登記識別情報)、印鑑証明書、住所証明書、代理権限証書
(中略)
課税価格移転した持分の価格金〇〇万円
登録免許税金〇万円
3登記完了・書類受領及び登記名義人への返却(司法書士)
その不動産の管轄法務局にもよりますが、1週間から2週間くらいで登記が完了し、申請した内容が登記簿に反映されます。
司法書士は法務局によって作成された「登記識別情報(権利証)」を受領し、新しい登記簿を取得した上で一式をB(持分を受ける側)に返却します。
登記識別情報とは、不動産の名義変更があったときに送付される通知書です。
登記識別情報は再発行ができないため、紛失しないよう大切に保管しましょう。
共有名義不動産における登記識別情報(権利証)の概要については、以下に記事で詳しく解説しています。
安易な共有持分の一部移転登記はリスク
自分の共有持分を一部移転する手続きは、その目的と効果をよく検討しないとリスクになることがあります。
具体例をもとに解説していきます。
3人兄弟のうち長男Aと次男Bが共有していた賃貸用不動産のA持分一部を三男Cに移転し、ABCの共有にするケース。
目的としては、Cにも家賃収入を分けることだった。
共有の不動産に関しては、「変更(売却や大規模リフォーム等)」を行うにあたり共有者全員の合意が必要となる。
しかし、二者共有が三者共有となったことでアパートの大規模リフォーム等の際にCの関与が必要となった。
その結果として管理に関する意思決定のスピードが遅くなり、将来処分を検討する際にも合意できなくなることが考えられる。
従来の共有者同士で共有持分の割合を変えるために持分移転を行うならまだ良いのですが、共有者の人数が増える場合はむしろトラブルを招くことがあるため要注意です。
特に、不動産の処分等について意見が合わない場合には最悪、訴訟になるという事態も考えられます。
現在共有になっている不動産はなるべく「共有者の人数を変えない」もしくは「共有者の人数を減らす」方向で考えることをおすすめします。
共有不動産に関する保存行為・変更行為・管理行為については、以下の記事で詳しく解説しています。
共有持分一部移転登記が有効な具体例
共有不動産の持分一部移転登記をすることに意義がある例を挙げてみます。
兄弟ABは相続したアパートを共有していたが、二人とも遠方にいて清掃等が不十分になり、それに伴って物件の空室が目立つようになっていた。
そこで、Aが物件の近隣に住む他の兄弟Cに持分の一部を移転し、家賃収入を多く分配する代わりに清掃等通常のメンテナンスの大半を任せることとした。
なお、ABが少しでも自分の持分を残しておけば物件を売却する際にABC全員の合意が必要となる。
よって、Cが勝手に物件を処分することが不可能になるため、ABにとっても「持分一部移転」とすることにメリットがある。
共有者を増やすことは基本的にはマイナス方向へと働くのですが、このように現在の共有者だけでは管理に支障が出ているような状況であれば新たな共有者を入れることにも意義があります。
共有持分一部移転登記以外の方法を選択するべき具体例
持分一部移転登記以外の方法は、どのような場合に選択するべきなのか説明します。
相続した不動産を兄弟ABが共有しており、今までは二人で管理費用を支払い家賃収入も持分割合に応じて分配してきた。
しかし、Aはもうその物件に住むことはありえず、将来的にその不動産を持ち続けることでのメリットをあまり感じていない。
Aは共有状態から離脱するためにAの持分全部をBに売却した(持分全部移転)。
仮に上記例で、BがAの持分を買い受けられる経済力があれば問題ありません。
また、AがBに贈与し、Bが贈与税を支払う覚悟がある場合も問題ありません。
しかし、いずれも不可能な場合はAが共有状態から抜けることを希望するなら、
「ABが二人で不動産全体を売却する」
「Aが持分を第三者に売却する」
ことが必要になります。
共有持分の放棄では一部移転登記は不可能
もし、共有者の一人が「共有状態から抜けたいので一方的に持分を放棄したい」となった場合は、持分一部移転の手続きは不可能です。
持分放棄というのは、売買や贈与のような「相手との契約」ではなく、放棄する人の一方的な意思表示のみで済む「単独行為」です。
民法第255条
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
もし持分放棄がされると、放棄した人の持分はすべてが他の共有者に「持分の比率に合わせて」帰属します。
持分放棄する人が「放棄した持分は誰々に渡したい」と指定することは不可能です。よって、「持分一部移転」ということはありえず、必ず「持分全部移転」となります。
仮にAB共有でAが持分放棄したら従来のA持分は全部Bに帰属しますが、ABCが3分の1ずつで共有していたならBとCにそれぞれ6分の1ずつが新たに帰属することになります。
共有持分の放棄については、以下の記事で詳しく解説しています。
共有名義を解消したいなら持分売却も検討しよう
AB共有不動産でAが共有状態から離脱したい場合に問題となるのは、Aが不動産全体の売却を持ちかけても、Bが合意しないケースです。
このようなケースには、Aが自身の共有持分のみを他の第三者へ売却することでの、共有状態の解消が有効です。
ただ、共有持分のみを買い取ったところで、買主が自由に不動産全体を活用できるわけではないため、個人や一般の不動産屋への売却は非常に困難です。
この場合、共有持分に特化して買い取りを行う専門業者へ依頼することをおすすめします。
共有持分買取業者であれば、共有不動産の活用ノウハウを有しているため、あなたの持分のみを買い取ってもらえます。
更に、業者が買主であることから、金額感さえ合えばすぐにでも決済が可能であり、スピーディーに共有状態から抜け出せます。
無料で査定してもらうことができますので、共有不動産の処理に悩んでいる方は一度相談してみることをおすすめします。
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実際、弊社は下記のように全国各地の共有持分を買い取っており、中には1000万円以上で買い取ったこともあります。
ただ、上記のような買取事例だけを見せられてもピンとこない方もいるでしょう。
そこで、弊社が共有持分を買い取ったお客様からいただいた、直筆のメッセージも紹介します。
引用元:お客様の声(Albalink)
このお客様は共有者である親族と折り合いが悪く、話し合いができる関係ではありませんでした。
そのため、弊社が共有持分を買い取ったことで「(共有者と)やり取りをしなくて済むようになり、気持ちが楽になった」というメッセージをお寄せくださいました。
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まとめ
この記事では、持分一部移転登記について解説してきました。
お伝えしてきた通り、持分一部移転登記とは、共有不動産の持分を全てではなく、一部のみ売買・贈与する登記手続きです。
持分一部移転登記では、自分の共有持分を一部残しつつ新たに共有者を入れることが可能ですが、なるべく共有者を増やさないほうが望ましいでしょう。
もし、共有状態から離脱したい方で、他の共有者が合意しないのであれば、自分の持分のみを共有持分買取業者に売却するのも一つの手です。
弊社も、共有持分に特化した専門の買取業者です。
共有持分をはじめとした訳あり不動産を数多く買い取っており、過去にはフジテレビ「イット」でも特集されています。
また、2023年には東京証券取引所 TOKYO PRO Marketへの上場もしており、社会的信用も得ておりますので、安心感のある取引が可能です。
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