不動産の名義変更とは
不動産の名義変更とは、登記簿に記載されている名義人の名前を変更する行為です。
不動産の所有権が現所有者から新所有者へと移行されることから、「所有権移転登記」と呼びます。
所有権移転登記をおこなう理由は、誰が不動産の所有権を有しているかを明らかにするためです。
名義変更をしないと第三者に対して所有権を主張できないため、売買や贈与などで共有持分を取得、あるいは手放す場合には所有権移転登記をおこなうことが不可欠です。
不動産の名義変更には明確な理由が必要
最初に知っておいてほしいのは、「なんとなく名義変更をしたい」という不明確な理由では、不動産の名義を変更できないということです。
現に、平成17年の不動産登記法改正から、権利に関する登記申請の際には、「登記原因証明情報(今回の登記に至った原因)」を添付しなければならなくなりました。
権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
なお、登記原因証明情報の例を挙げると次のようなものになります。
不動産の名義人を変更できなければ、いつまでも共有を続けなければならず、共有者同士での権利トラブルは避けられません。
ですが、ご安心ください。後ほど「共有状態の解消方法」について、この記事内で解説しております。
共有不動産の名義変更が必要になる主なケース
複数人で不動産を共有している中で、どうしても名義変更をしなければならない場面が訪れることがあります。
この節では、共有不動産の名義変更が必要になるケースを紹介します。
相続により共有名義を単独名義に変更する
共有者のうちの一人が亡くなると、その方の持分は相続人(遺族)へと受け継がれます。
ただ、自動的に名義が相続人へ切り替わることはありませんので、名義変更のために登記手続きをしなければなりません(相続登記といいます)。
しかし相続に伴い、どのような手続きをすればよいのかがわからずにお困りの方は少なくありません。
実際、弊社がおこなったアンケート調査によると、「相続の手続きの難しさ」に関して不安を抱えている方が多いことがわかりました。
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議(遺産の分け方を決める話し合い)によって、不動産を誰が受け継ぐのかを決めてから、協議書をもとに名義変更する必要があります。
令和6年の4月1日の法改正によって相続登記が義務化され、登記未了の場合は罰則対象となりますので、必ず名義変更を済ませましょう。
ちなみに相続の際にどうしても協議が整わないような場合でも、「相続人申告登記」という救済措置もあるため、そういった場合は法務局や司法書士に相談しましょう。
相続登記については、以下の記事でも詳しく解説しています。
離婚により共有名義を単独名義に変更する
夫婦が婚姻生活の中で取得した共有不動産は、万が一の離婚時に共有財産として「財産分与」の対象となります。
離婚した後は、他人同士に戻るわけですから、不動産の共有名義を続けることは多大なリスクを伴います。
したがって、離婚の際にはなるべく早期かつ、確実に不動産の名義変更を済ませなければなりません。
離婚に伴う財産分与によって、共有不動産の名義を変更する際は、離婚協議書や財産分与協議書などが登記申請の際に必要となります。
ちなみに、夫婦共有名義の不動産のほとんどは、住宅ローン契約も夫婦共同名義になっているでしょう。
そのため、金融機関という新たな登場人物が加わることで、夫婦で共有している不動産の名義変更は、非常に複雑になります。
特に住宅ローンに基づく抵当権が設定されている不動産の名義変更を金融機関に承諾なく行ってしまうと、金融機関との契約違反になる可能性があるため、要注意です。
離婚に伴う共有不動産の名義変更について、より詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
売買・贈与
不動産を売買・贈与した際は、当然ですが、売主から買主に対して不動産の名義変更を行う必要が出てきます。
名義変更を完了して初めて、買主や譲受人は、不動産が自分のものであると主張できるからです(民法177条)。
売買・贈与に伴う名義変更のための登記手続きには、当事者間で作成した売買(贈与)契約書を添付する必要があります。
共有状態を解消し名義変更を行う方法
前の節では、共有不動産の名義変更が必要になる主なシーンについて解説しました。
ここからは、具体的な共有名義の解消方法を解説していきます。以下の6つです。
あなたの置かれている状況によって、どの方法を選択するのが最適か、わかりやすく解説していきますので、安心して読み進めて下さい。
なお、以下の記事でも共有関係を解消する方法を解説しているので、併せて参考にしてください。
共有不動産全体を売却する
共有不動産を全体として売却してしまえば、不動産の名義は当然買主へと移転しますので、共有状態は解消されます。
ただ、共有名義になっている不動産を全体で売却するためには、共有者全員の同意が必要です。
例えば、不動産を夫婦2人で共有しているとしましょう。
離婚に伴って、夫が不動産を売却しようと思い立ったとしても、妻が持分を1%でも有している限りは、妻の同意(署名捺印など)がなければ、不動産を売却できないということになります。
したがって、不動産の全体売却による共有名義の解消は、「共有者全員が不動産売却に向けて足並みを揃えられる人」におすすめです。
共有者間で持分を売買・贈与する
共有者間の売買・贈与で、誰か一人に持分を揃えてしまえば、単独所有の不動産に名義変更して共有状態を解消できます。
例えば、親子が二世帯住宅として不動産を共有しているとしましょう。
親が自分亡き後のことを考えて、「自身の持分を子供へ生前贈与する」といった状況が当てはまります。
ただ、売買も贈与も共有者のうちの一人では行えず、当然、相手方から合意を得て契約を交わさねばなりません。
その上、共有持分を売買するのであれば、買主となる共有者には、購入代金を用意できるだけの資金力が必要です。
したがって、共有者間での持分売買・贈与による共有名義の解消は、「共有者間に最低限、合意形成を行えるだけの関係性がある人」におすすめです。
共有名義の土地を分筆する
共有名義になっている一筆の土地を、分筆登記によって複数に切り分けることで、共有名義を解消できます(建物がある場合は不可)。
登記実務上は、土地を複数筆に切り分けた後に、共有者の持分を交換するという流れになります。具体例をもとにわかりやすく解説します。
兄と弟が50%ずつ共有している土地Xがあるとしましょう。
この土地Xを分筆登記によって、土地AとBに切り分けたとき、ABは両方とも50%ずつ兄弟の共有名義になっています。
そこで、土地Aの兄持分と土地Bの弟持分を交換し合うと、弟単独名義の土地Aと、兄単独名義の土地Bが生み出されるというわけです。
ただ、注意しなければならないのは、分筆登記で切り分けたことによって、土地の資産価値が低下してしまうおそれがある点です。
切り分けた土地のうちの一つが、道路と接しなくなれば、その土地には建物が建てられなくなりますし、狭くなりすぎたり歪な形になれば、単純に使い勝手が悪くなるからです。
あなたの土地が、分筆登記によって問題があるかどうかは、専門家である土地家屋調査士へ相談しましょう。
土地を分筆して売却する方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
共有物分割請求
他の共有者に対して、共有物分割(共有名義の解消)を求めることも可能です。
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。
共有物の分割に、他の共有者全員が納得してくれれば良いのですが、もちろん、必ずしもそうとは限りません。
相手方の共有者があなたの訴えに難色を示し、意向がぶつかりあえば、行き着く先は裁判(共有物分割請求訴訟)です。
裁判までコトが運んでしまうと、共有名義の解消方法は、裁判所の客観的な判断に委ねることになります。
裁判所判断で、不動産が競売にかけられれば、ほとんどの物件が時価よりも安価で買い落とされるので、結果的に共有者全員が損するかも知れません。
そのため、共有物分割請求による共有名義の解消は、「共有不動産の活用にどうしても譲れない希望がある人」に最終手段としておすすめします。
共有物分割請求を起こす際は、必ず弁護士へ相談しましょう。
共有物分割請求訴訟について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
持分を放棄する
自身の共有持分を放棄すると、ほかの共有者へ自動的に移行します。
共有持分の放棄は民法255条で規定されており、ほかの共有者の同意がなくてもおこなうことが可能です。
ただし、持分の名義を移転する登記をおこなう際には、ほかの共有者に協力してもらわなければなりません。
そのため共有持分を放棄して共有状態を解消したいと考えているのなら、ほかの共有者の意向をまず確認することが大切です。
持分のみを第三者に売却
自身の共有持分のみを、不動産から切り離して売却することで、共有名義から抜け出すことが可能です。
共有名義の不動産とは言え、各自の共有持分のみで売却するために、他の共有者から 合意を得る必要はありません。
ただし、共有持分のみでは不動産を自由に使えず、トラブルに巻き込まれるリスクもありますから、一般個人や一般の不動産屋は共有持分を買い取ってはくれません。
自身の共有持分を売却し、安全かつ確実に共有名義から抜け出したいのであれば、共有持分専門の買取業者に相談するのが現実的です。
共有持分買取業者であれば、持分の買取から数年かけて権利関係を調整するノウハウに長けており、あなたの共有持分のみであっても買い取ってもらえます。
その他に、共有持分買取業者を利用するメリットは以下の通りです。
- 他の共有者と一切関わらずに共有名義から抜け出せる
- 最短数日で確実に共有持分を売却できる
- 使い道のなかった共有持分をまとまった現金に変えられる
信頼できる共有持分買取業者の選び方や、おすすめ業者について、以下の記事でまとめてありますので、参考にしてください。
当サイトを運営する「株式会社Albalink」は、共有持分に強い専門の買取業者です。創業から11年、他社では買取の難しい共有持分を数多く買い取ってきたノウハウがあります。
共有名義が解消できずにお困りの方は、気兼ねなくご相談ください。
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共有不動産の名義を変更する手順
では、ここからは、共有名義を解消する手続きの流れを解説していきます。
これまでにご紹介したいずれの方法でも、ある程度共通する内容をまとめてありますので、ぜひ参考にしてください。
司法書士などの専門家に相談
不動産の共有名義を解消し、名義を変更するためには、法務局にて所有権(持分)移転登記を申請する必要があります。
登記申請自体はご自身でも可能ですが、申請内容に不備や誤りがあると、再申請を求められたり、余計に税金を支払うことになったりするので、司法書士に委任することをおすすめします。
なお、不動産業者に相談し、共有不動産の全体や共有持分のみを売却する場合は、不動産業者提携の司法書士が手続きを請け負ってくれます。
必要書類の用意
司法書士や不動産業者の担当者から指示を仰いで、共有不動産の名義変更に必要な書類を用意しましょう。
どのような状況でも共通して必要になる書類は以下の通りです。
- 不動産の権利証(または登記識別情報)
- 登記申請者の印鑑登録証明書
- 登記申請者の住民票(発行から3ヶ月以内)
- 代理人として手続きを行う司法書士への委任状
ここからは、相続や離婚など、状況別で必要になる書類を簡単にご紹介します。
なお、ここでご紹介する書類はすべてのケースにあてはまる訳ではありません。
こちらは参考程度に、司法書士や不動産業者等の専門家に確認しながら進めましょう。
相続の場合
共有不動産を相続し、相続登記による名義変更を行う際の、必要書類は以下の通りです。
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・住民票除票
- 相続人の戸籍謄本
離婚の場合
離婚に伴って、夫婦共有名義の不動産に名義変更を加える際の、必要書類は以下の通りです。
- 離婚の記載がある戸籍謄本
- 離婚協議書や財産分与協議書
売買贈与の場合
共有持分の売買や贈与に伴う名義変更に必要な書類は以下の通りです。
- 売主・買主の署名捺印がある売買契約書のコピー
- 譲渡人・譲受人の署名捺印がある贈与契約書のコピー
法務局にて登記申請を行う
必要書類を揃えたら、担当の司法書士が法務局にて、登記申請を行います。
法務局にて名義変更が完了したら、登記識別情報通知(権利証)や登記完了証が交付されますので、後日司法書士から受け取ります。
【登記識別情報通知の見本】
共有名義不動産の名義変更時の注意点
共有名義の不動産を名義変更するときには、登記申請書に「誰からどのくらいの権利割合が移転したか」を記載する必要があります。
単独名義の不動産を手放すときは異なり、たんに「所有権移転」と記載すればよいわけではない点に注意しましょう。
また共有名義不動産の名義を変更するには、共有者全員の印鑑登録証明書が必要です。
そのため、共有名義不動産の名義を変更する前に、共有者間でしっかりと話し合っておくことが大切です。
共有名義から単独名義に変更するときにかかる費用や税金
共有不動産の名義変更にかかる費用と税金を解説します。
司法書士報酬
所有権移転登記や相続登記による共有不動産の名義変更を、司法書士に依頼した場合、当然ですが、司法書士報酬が発生します。
司法書士報酬額の相場は、簡単な申請であれば5~7万円程度であることが多いです。
しかし、案件が複雑化するものはそれ以上の金額がかかることもあるので、事前に見積や報酬基準を確認すると良いでしょう。
譲渡所得税
不動産を売却して生じた利益には「譲渡所得税」が課税されますので、売主は確定申告を行う必要があります。
譲渡所得(売却価格-物件取得にかかった費用-売却にかかった費用)×税率
※税率39.63%(所有期間5年以内)/20.315%(所有期間5年超)
(不動産売却によって損失が生じた場合でも、損益通算することによって、翌年の所得税を減額できる可能性がありますので、忘れずに確定申告をしましょう。)
なお、確定申告の期限は、物件引渡し日の翌年2月16日~3月15日までです。
共有名義不動産を売却したときの確定申告の流れは以下の記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
登録免許税
共有不動産の名義を変更するどのようなシーンでも、登録免許税が発生します。
登録免許税の金額は、登記目的によって異なり、以下の表にまとめたとおりです。
手続きの内容 | 登録免許税率 |
---|---|
持分の売買 | 土地1.5%/建物2.0 |
持分の相続 | 土地・建物ともに0.4% |
離婚に伴う財産分与 | 土地・建物ともに2.0% |
共有物分割 | 土地・建物ともに2.0% |
持分の贈与 | 土地・建物ともに2.0% |
登録免許税は、管轄の税務署へ登記手続きの完了までに支払う必要があります(詳細は司法書士、不動産業者に聞きましょう)。
印紙税
売買(贈与)契約書の作成時には、印紙税がかかります。
印紙税は、コンビニエンスストアや郵便局、法務局窓口などで、収入印紙を購入し、契約書へ貼付することで納税します。
具体的な、印紙税の金額は以下の通りです。
売買価格 | 印紙税額 |
---|---|
100万円以上~200万円以下 | 400円 |
200万円以上~300万円以下 | 1,000円 |
300万円以上~500万円以下 | 2,000円 |
500万円以上~1,000万円以下 | 10,000円 |
1,000万円~5,000万円以下 | 20,000円 |
なお、贈与契約書の場合、印紙税額は一律で200円です。
不動産取得税
贈与や売却などによって共有名義から単独名義へと変更する際、新たに名義人となった方には不動産取得税を納める義務が発生します。
不動産取得税の求め方は、以下のとおりです。
税率は、令和9年3月31日までに取得した土地と居住用家屋であれば3%、非居住用の家屋であれば4%です。
参照元:東京都主税局|不動産取得税
まとめ
今回の記事では、共有名義になっている不動産の名義変更について解説してきました。
解説した通り、共有不動産の名義変更自体は、司法書士へ一任できますのでそれほど厄介ではありません。
しかし、名義変更に至るまでに共有者間で意見を調整したり、合意形成を図ったりすることは面倒になりがちで、トラブルにまで発展するケースも珍しくありません。
他の共有者と関係が良好でなく、円滑な共有名義の解消が難しいようであれば、共有持分専門の買取業者に一度相談するようおすすめします。
共有持分買取業者に直接持分を買い取ってもらえば、他の共有者と一切関わらずに、面倒な共有名義から抜け出せるからです。
また、権利調整の専門家である共有持分買取業者であれば、弁護士などの法律家と提携していることが一般的なので、不安なく相談できます。
当サイトを運営する「株式会社Albalink」は、共有持分に強い専門の買取業者です。
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お役に立てたら嬉しい限りです。
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