借地権とは?3つのルールや概要など前提情報を知っておこう
借地権トラブルから解放されたいなら、そもそも借地権にはどのようなルールが存在するのかを把握しておくことが大切です。
一口に借地権といっても、以下の3種類があります。
- 旧法借地権
- 普通借地権
- 定期借地権
旧法借地権は、現・借地借家法が1992年8月1日に施行される以前に賃貸借契約を交わした借地に適用される権利です。
旧法借地権には、旧・借地法のルールが適用されます。
それに対して、現・借地借家法に基づく借地権が「普通借地権」「定期借地権」です。1992年8月1日以降に賃貸借契約を交わした借地が対象です。
3種類の借地権の違いは、以下の表の通りです。
旧法借地権 | 普通借地権 | 定期借地権 | ||
---|---|---|---|---|
当初の 契約期間 |
鉄筋コンクリート造・重量鉄骨造 | 30年以上(契約期間の定めがないときは60年) | 30年以上 | 50年以上 (居住用建物の場合) |
木造など非堅固建物 | 20年以上(契約期間の定めがないときは30年) | |||
契約期間の更新 | あり | あり | なし | |
更新後の契約期間 | 鉄筋コンクリート造・重量鉄骨造 | 30年以上 | 1度目の更新では20年以上、2度目以降は10年以上 | 契約更新 なし |
木造など非堅固建物 | 20年以上 |
旧法借地権では借地上の建物の構造によって契約期間が異なりますが、普通借地権・定期借地権は建物の構造にかかわらず、それぞれ30年以上・50年以上です。
参照元:e-Gov法令検索「借地借家法第3条」「借地借家法第22条」
また、旧法借地権・普通借地権では借地人が望む限り自動的に契約更新されます。
これを「法定更新」といいます。
しかし定期借地権の場合は、契約期間の満了をもって借地を返還しなければなりません。
借地権トラブルを解消したいなら、まずはあなたが契約している借地権の種類が上記のうちのどれなのかを確認しておきましょう。
なお、旧借地権と新借地権の違いについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せて参考にしてください。
借地権の更新時に起こる8つのトラブル
借地権の更新時に起こるトラブルは以下の8つです。
- 借地権の地代や更新料が払えない(滞納している)
- 地主から地代や更新料の値上げを要求された
- 地主から借地権の更新を拒否された
- 更新手続きをしないまま契約期間が切れてしまった
- 地主から「旧法から新法に変更になる」と言われた
- 地主から立ち退きを請求された
- 契約書に記載がないのに更新料を支払ってしまった
- 法定更新による更新料を請求された
それぞれ解説します。
なお、すでに借地権トラブルが起きてしまっている方は「借地権トラブルを解消できる3つの方法」でトラブルの解消法をご確認ください。
借地権の地代や更新料が払えない(滞納している)
借地権の地代や更新料を払えずに、地主とのトラブルに発展するケースがあります。
賃貸契約を交わしている場合、借地人は地主から土地を借りる代わりに一定の地代を支払う義務があります。
年間の地代は「土地価格の2~3%」、または「固定資産税・都市計画税の3~5倍」に設定されるケースが一般的です。
たとえば、土地価格が2,000万円だったときの借地権の年間地代は以下の通りです。
借地権の年間地代=2,000万円×2~3%=40~60万円
また借地契約を更新する際には、借地権価格の5%ほどの更新料を支払う必要もあります。
借地権の評価額のことで、更地価格に借地権割合を乗じて算出される。
借地権割合はエリアごとに決められており、国税庁のHP「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認可能
参照元:国税庁「No.4611 借地権の評価」
たとえば借地権価格が1,000万円だったとすると、契約更新のたびに以下の更新料が発生します。
借地権の更新料=1,000万円×5%=50万円
何らかの事情によって地代や更新料を滞納してしまうと、地主から立ち退きを迫られることがあります。
トラブルを避けるためにも、地代や更新料を払えない状況に陥りそうなときには、前もって地主に相談することが大切です。
なお、借地権の更新料の相場や計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
地主から地代や更新料の値上げを要求された
地主から突然地代や更新料の値上げを要求され、トラブルへ発展するケースも少なくありません。
じつは地主には、地代の値上げを借地人に要求できる権利が借地借家法第11条で認められています。
具体的には、以下の要件を満たすケースです。
ただし借地人の同意がない限り、地主が勝手に地代を上げることはできません。
地主から地代の値上げを要求されたら、まずは賃貸借契約書の内容を確認しましょう。
賃貸借契約書に地代の値上げに関する記載があれば、それに従って地主と話し合いを進める必要があります。
また、地主に対して地代を値上げする根拠を確認することも大切です。
スムーズに話し合いを行うためにも、周辺の地価や賃料の推移などを前もって確認しておくことをおすすめします。
地主から地代の値上げを要求された際に押さえておきたい内容は、以下の記事に詳しくまとめました。併せてご参照ください。
地主から借地権の更新を拒否された
地主から借地の契約更新を拒否されるトラブルも、よくある事例のひとつです
前述のように、旧法借地権・普通借地権で賃貸借契約を交わしている場合は、借地人が望む限り契約は従来と同一条件で自動更新されます。
地主側に正当な事由がない限り、契約更新の拒否は認められません。
参照元:e-Gov法令検索「借地借家法第6条」
ただし、「定期借地権」で賃貸借契約を交わしている場合は契約更新ができないので、契約期間の満了をもって借地を返還しなければなりません。
地主から借地の契約更新を拒否された場合は、まずは落ち着いて賃貸借契約の内容を確認するようにしましょう。
また、地主が話し合いに応じてくれないときは、弁護士に間に入ってもらうことをおすすめします。
更新手続きをしないまま契約期間が切れてしまった
借地権の契約更新の手続きをせず、契約期間が切れたことを理由に地主から借地の返還を求められるトラブルも起こり得ます。
ただし前述のように、旧法借地権と普通借地権の契約は自動で更新されます。
そのため、借地上に生活を送っている建物があって地代もしっかりと支払っている場合には、借地の返還要求に応じる必要はありません。
しかし、借地契約が定期借地権の場合は契約更新ができないので、契約期間が過ぎたら借地を地主へ返還する必要があります。
トラブルを防ぐためにも、賃貸借契約書の内容をしっかりと確認して借地権の種類、更新時期を押さえておきましょう。
地主から「旧法から新法に変更になる」と言われた
借地契約の更新に伴い、地主から「旧借地法から現在の借地借家法に切り替わる」と言われることがあります。
借地借家法には旧借地法にはない「定期借地権」が設定されたため、地主側にとっては必ず土地を返してもらえるメリットがあるのです。
前述のように、旧借地法の対象は借地借家法が施行された1992年8月1日以前に賃貸借契約を交わした借地です。
しかし契約更新時に、旧法から新法へ切り替わることはありません。
旧法で契約した借地には、引き続き旧法のルールが適用されます。
参照元:e-Gov法令検索「借地借家法第3条」
借地人の同意があれば新法への切り替えは可能ですが、借地人にとってのメリットはほぼありません。
地主から旧法から新法へ切り替わると言われても、それに応じる必要はありません。
しかし、地主の要求に応じなかったことでトラブルになってしまった場合は、当人間で解決するのは難しいため、弁護士など専門家に相談した方が良いでしょう。
地主から立ち退きを請求された
借地権トラブルでもっとも多いのは、地主からの立ち退き請求です。
地主が土地を活用するには、借地人に立ち退いてもらわないといけません。
そのため、「土地に自分が住むための家を建てたい」「賃貸経営をしたい」などの理由で、借地人に立ち退きを請求する地主も存在します。
しかし、地主側の都合で借地人に立ち退きを請求するには法律に基づいた以下のような「正当な事由」が必要です。
- 借地上に地主の居住用建物を建てる必要性
- 借地人の地代滞納など支払い状況
- 借地人の建物の利用状況
- 建物の老朽化の度合い
- 立ち退き料の提供
参照元:e-Gov法令検索「借地借家法第28条」
つまり、地主側に上記の正当な事由がない場合には、借地人は借地を立ち退かなくてもよいということです。
一方、地代を滞納していたり、契約条件とは異なる使い方をしていたりなど借地人に何らかの問題があるときは、原則として立ち退きは拒否できません。
ですから、立ち退きを請求された場合は、自身に何か落ち度がないか確認することも大切です。
地主が借地人に立ち退きを迫れる正当事由や立ち退き料の相場は、以下の記事に詳しくまとめてありますので、併せてご参照ください。
契約書に記載がないのに更新料を支払ってしまった
契約満了時に更新料が発生する旨の記載が契約書にないのに、地主に請求されるがままに支払ってしまうケースもあります。
過去に更新料を支払った実績がある場合、契約書に記載がなくても「双方の合意があった」として請求される可能性があります。
ただし、法で定められた義務だと勘違いして更新料を支払っていた場合は、双方に合意があったとはいえません。
すでに支払った更新料をさかのぼって返金してもらえるか否かはケースバイケースであるため、弁護士に相談しましょう。
また、借地権の更新料の支払いは法的な義務がないため、今後支払いたくない場合は、まずは地主への相談が先です。
ただし、地主との話し合いがまとまらない場合は、弁護士に個別でアドバイスを受けることをおすすめします。
借地権の更新料でお悩みの方は、「借地権トラブルに強い弁護士事務所3選」をご確認ください。
法定更新による更新料を請求された
更新料の支払いについて互いに合意があり、法定更新によって更新料を請求された場合、支払い義務が生じます。
法定更新とは、元々の契約条件のまま自動的に借地契約を更新することです。
借地人が現に土地を使用しており、かつ土地上に建物が建っている場合、契約期間が満了しても自動的に更新された扱いとなります。
法定更新は同一の条件で更新されるため、更新料の支払いに関する特約が契約書に明記されているなら地主の請求に応じなくてはなりません。
借地権や底地の売買時に起こる3つのトラブル
借地権や底地の売買時に起こるトラブルは、以下の3つです。
- 借地を売りたいけど借地契約書が見つからない
- 地主が借地権の売却や活用を承諾してくれない
- 地主がローン承諾をしてくれない
それぞれ解説します。
借地を売りたいけど借地契約書が見つからない
借地人の管理ミスにより、借地契約書を紛失するケースもあります。
一般的に、借地権の売却では借地契約書(土地賃借契約書)が必要です。
ただし、借地契約書がなくても以下2つの書類が用意できれば、借地権の売却手続きが可能です。
- 借地権付き建物の権利証(登記識別情報通知)
- 地代の支払いを証明できる資料
権利証は、不動産売買の際に本人確認書類として利用される以下のような書類です。
権利証は、不動産の名義変更手続きをした約1週間〜2週間後に送付されます。
借地権付き建物の登記を済ませていれば、法務局より権利証は送付されているので自宅に保管されているはずです。
地代の支払いを証明する資料は、支払い時に地主から受け取る領収書・振込通知書などを指します。
地主が借地権の売却や活用を承諾してくれない
親から相続した借地権付きの建物を売却したいのに、地主が認めてくれないことがあります。
借地権の売却にも、地主の承諾が必要です。
その際、借地人は借地権価格の10%ほどに相当する譲渡承諾料を支払う必要があります。
譲渡承諾料の支払いを申し出ても、地主側から売却を承諾してもらえないケースは少なくありません。
しかし地主に承諾してもらえないからといって、勝手に売却すると借地契約を解除される恐れがあります。
そのため、地主側に売却を反対する正当性が認められない場合には、裁判所に売却の許可を求めましょう。これを「借地非訟裁判」といいます。
参照元:e-Gov法令検索「借地借家法第19条」
借地非訟裁判の多くは1年以内に終わりますが、手続きが複雑で時間もかかるため、弁護士に依頼して進めるとよいでしょう。
弁護士費用は借地権の額が5000万円以下の場合は30万円~50万円ほどです。
裁判を起こすのは時間も費用もかかりますが、それでも借地権を売却して借地権トラブルから解放されたいのであれば、行う価値はあります。
地主がローン承諾をしてくれない
地主がローンを承諾しない場合、借地権の購入層が限定されるため、売却が難しくなります。
前提として、法律上は借地権に抵当権を設定する旨について地主の承諾は不要です。
住宅ローンなどを組むときに購入する不動産を担保とする権利
しかし、金融機関の多くは地主の承諾を求めます。
地主のローン承諾が出ない場合、金融機関からの借入が難しくなるため、借地権の買主は自己資金で購入するか、担保不要の高金利ローンを組むかの2択となります。
一般的に不動産の購入時は住宅ローンを組む方が多数派なので、金融機関の借入が利用できない場合、借地権の売却は難しいといえます。
借地権の相続時に起こる5つのトラブル
借地権の相続時に起こるトラブルは以下の5つです。
- 地主から名義変更料を請求された
- 借地権を相続したら地主から借地の返還を求められた
- 借地権の相続税が思った以上に高い
- 借地権を共有相続してしまった
- 借地上の建物の登記を忘れていた
それぞれ解説します。
地主から名義変更料を請求された
借地権を相続する際には、名義を亡くなった親からあなたへと変更する必要があります。
その際、地主から「名義変更料」を請求されるケースが少なくありません。
しかし、借地権を相続する際に地主の承諾は不要で、借地権を相続した旨を地主に知らせるだけで十分です。
もちろん、名義変更料を支払う必要もありません。
ただし、地主の中には売却時の譲渡承諾料と間違えて、相続時の名義変更時にも承諾料が必要と思い込んでいる方も一定数います。
借地権の相続時に地主から名義変更料を要求されたときは、譲渡承諾料と勘違いしていないか、角が立たないように確認するとよいでしょう。
借地権を相続したら地主から借地の返還を求められた
借地権を相続した後、地主が相続人に借地の返還を求めるケースがあります。
この場合、借地人が亡くなった後の借地権は相続財産であるため、地主の返還に応じる必要はありません。
借地契約の名義変更・譲渡承諾料も不要です。
譲渡承諾料とは、借地人が売却・贈与などで名義変更をおこなう際に地主へ支払う費用
また、相続を理由とした借地契約の解除もできません。
借地の返還を求められてトラブルが発生している場合は、弁護士に相談しましょう。
借地権に強い弁護士事務所については「借地権トラブルに強い弁護士事務所3選」で紹介しています。
借地権の相続税が思った以上に高い
借地権も、他の相続財産と同様に相続できます。
しかし土地の評価額が高い地域の場合、相続税が思いのほか高額になる恐れがあります。
借地権の相続税評価額は借地権割合によって異なり、路線価(道路に面する宅地の1㎡あたりの価格)の30~90%ほどです。
ちなみに、路線価と借地権割合は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べられます(下図参照)。
引用元:国税庁「路線価図・評価倍率表」
仮に、借地権割合が70%、路線価が1㎡100万円、借地の面積が100㎡とすると、相続税評価額は以下の通りです。
ただし相続税には以下の基礎控除(下図参照)があり、相続財産の合計額から差し引けます。
法定相続人がひとりと仮定すると、上記の相続税評価額から3,600万円を差し引けるということです。
こうして求めた相続税評価額に税率をかけると、相続税の納付額を算出できます。
相続税の税率は、以下の通りです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参照元:国税庁「No.4155 相続税の税率」
つまり上記の事例では、以下の相続税を納める必要があります。
もちろん、そのほかに相続財産がある場合には、さらに高額の相続税を納めなければなりません。
借地権を相続する際には、どのくらいの相続税を納める必要があるのかを税理士などに相談して確かめることをおすすめします。
相続税の納付方法や計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
借地権を共有相続してしまった
親が亡くなったあと、借地権を兄弟2人で相続するなど共有名義にするケースも見られます。
しかし、共有名義での相続はおすすめできません。
共有名義の不動産は他の共有者の同意がなければ売却や活用ができないためです。
参照元:民法第251条(共有物の変更)
そのため、自身は借地権を売却したくても、兄が反対すれば売却できず、共有名義にしたことにより、兄弟の関係性にひびが入ってしまう恐れもあります。
また、共有者のひとりが亡くなってさらに相続が進むと、権利関係者が雪だるま式に増えてますます意見の一致が難しくなります。
そのため、相続が発生しそうなときには事前に相続人の間で話し合い、借地権を売却して売却金を分け合うなど共有名義を避ける方法を選択するのが得策です。
なお、弊社AlbaLink(アルバリンク)は、共有名義の借地権でもあなたの持分のみ買い取ることができます。
ですから、もし共有名義の借地権の処分にお困りの場合や、共有名義から抜け出したい場合は、ぜひ一度弊社の無料買取査定をご利用ください(査定依頼をしても、他の共有者に知られることはありませんので、ご安心ください)。
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なお、共有名義の不動産に潜んでいるデメリットは以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。
借地上の建物の登記を忘れていた
借地上の建物の登記を忘れ、トラブルになる可能性があります。
土地は本人・建物は子ども、といったように借地上の建物の名義が相続人と異なる場合、無断譲渡としてみなされ、地主に契約解除を要求される可能性があるからです。
借地権の相続後は、相続人が借地上の建物の登記をしておく必要があります。
なお、令和6年4月より、相続登記が義務化されました。
参照元:法務局|相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始) ~なくそう所有者不明土地!~
不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記をしなければ、10万円以下の過料を課せられる恐れがあります。
なお、令和6年4月より前に発生した不動産相続も義務化の対象です。
借地権を相続した場合、相続人はすみやかに相続登記の手続きを済ませましょう。
相続登記については、以下の記事で詳しく解説しています。
借地権をめぐるその他の6つのトラブル
借地権をめぐるその他のトラブルは、以下の6つです。
- 底地を売却されて地主が変わった
- 地主が建物の建て替えを承諾してくれない
- 地主から地代の値上げを交渉された
- 地代を滞納してしまった
- 借地上の建物が火事になってしまった
- 借地を駐車場として活用しようとしたら地主に反対された
それぞれ解説します。
底地を売却されて地主が変わった
地主が底地を売却し、新たな地主となったことで、トラブルが起こる恐れもあります。
たとえば、新しい地主に変わった途端、「周辺の地価の上昇」や「固定資産税の増額」などを理由に地代の値上げを要求されるかもしれません。
正当な理由のない、地主による一方的な値上げ要求は承諾する必要はありません。
しかし上記のような事実や法律に基づいた値上げ要求の場合は、簡単に要求を退けられません。
値上げに従うか、従えない事情(値上げした地代を支払えないなど)がある場合は地主と話し合いましょう。
もし話し合いが決裂してしまうと、裁判で争うことになる可能性もあります。
もし裁判となり、地代の値上げを認める判決が下された場合、借地人は地代の不足分に年1割の利息を付加した金額を支払わなくてはなりません。
参照元:e-Gov法令検索「借地借家法第11条第2項」
裁判になると、肉体的にも精神的にも大きな疲労を伴います。
そのため、事前にそうした争いを回避するため、地主と関係が良い場合は底地の売却を考えていないかそれとなく探っておきましょう。
もし地主が底地の売却を検討しており、自分も借地権を売却したいと考えているのであれば、地主と協力して底地と借地を同時に売却するのも一つの手です。
底地と借地をセットで売却すれば買い手は不動産を完全に所有できるため、通常の不動産と同等の価格で売却できる見込みがあります。
そのようなメリットがあるため、地主も底地と借地の同時売却を受け入れてくれるかもしれません。
地主が建物の建て替えを承諾してくれない
借地上の家の建て替えを地主が承諾してくれないトラブルもあります。
通常、借地の賃貸借契約を交わす際には、地主の承諾なしで建て替えてはならないとする「増改築禁止の特約」が設定されています。
そのため、基本的に借地上の家を建て替えるには、地主の承諾を得るとともに一定の承諾料も支払う必要があります。
承諾料は、更地価格の3~5%ほどに設定されるケースが一般的です。
もし地主の承諾を得ずに無断で家を建て替えると、契約を解除されて立ち退きを要求される恐れがあります。
そのため、地主が建て替えを承諾してくれないからと言って、勝手に建て替えを行うのは避けましょう。
まずは冷静になって地主がなぜ建て替えを承諾できないのかを聞き出し、解決策がないか話し合いましょう。
話し合っても妥協点が見つからない場合は、弁護士などに相談してみてください。
地主から地代の値上げを交渉された
地主から地代の値上げを交渉されるのも、借地権で起こりがちなトラブルです。
借地借家法では、以下の条件に該当する場合、地代の値上げが認められています。
- 土地に対する租税の公課の増減
- 土地の価格の上昇・低下
- 周辺の類似した土地と比較による地代の不相応
上記は、借地契約の際に地代を増額しない旨の特約を設けていない限り、地主からの値上げ請求は認められます。
ただし、地主が提示する値上げの幅が適正なのか否かの確認は必要です。
地代の値上げに承諾する前に、直近の固定資産税納税通知書など、算出した数字の根拠となる資料を提示してもらいましょう。
【固定資産税納税通知書の見本】
地代の値上げを要求されたときの対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
地代を滞納してしまった
借地人が口座への入金を忘れて、地代を滞納して契約解除などのトラブルになるケースもあります。
ただし、地代の支払いが1、2回遅れただけでは契約解除にはなりません。
民法第541条では、「相当の期間を定めて履行の催告をおこなう」ことが契約解除の前提条件となっているためです。
一般的には、債務不履行による契約解除は以下の流れでおこなわれます。
- 地代を 3ヶ月以上滞納している
- 地主から地代を支払うよう催告される
- 地主から借地契約を解除する旨の通知が届く
- 催告の期限までに送金しなければ契約解除
契約解除通知は、地主の催告から3か月以上滞納をした場合に送付されるのが一般的です。
長期的に良好な関係を築くためにも、地代の滞納があった場合はすみやかに支払い、地主にお詫びの連絡をしておきましょう。
借地上の建物が火事になってしまった
借地上の建物が火事でなくなり、再築する場合は地主の承諾が必要です。
地主から再築の承諾が得られない場合、借地契約は解約しなければなりません。
参照元:e-Gov法令検索「借地借家法第7条」「借地借家法第8条」
地主から承諾を得られた場合は、承諾があった日・建物が再築された日のどちらかを起算日として、20年間借地権が存続されます。
建物焼失後放置していたら地主が変わってしまった
借地上の建物が焼失後、放置していると借地権は消滅します。
土地上に借地人名義の建物が存在していることが、借地権の対抗力を保全(対外的に借地権を主張できる状態であること)する条件だからです。
そのため、建物が焼失している期間に地主が変わった場合、新地主に借地権を主張できなくなる点は留意しましょう。
ただし、建物が焼失した後、借地上に以下3つの要件を満たす看板等を設置しておくと、借地権は保全されます。
- 焼失前の建物を特定できる必要事項
- 焼失があった日
- 建物を新築する旨
上記の提示を行っておくと、建物が焼失してから2年間は借地権の保全が可能です。
借地を駐車場として活用しようとしたら地主に反対された
借地権付き建物に住む、あるいは相続した方は、以下のようなニーズをもつ場合があります。
- 借地の余ったスペースを、駐車場にして貸し出したい
- 借地を相続したが、借地権付き建物に住む予定がなく、解体して駐車場経営をして収益を得たい
ただ、地主の承諾がもらえず、駐車場としての有効活用がおこなえないケースも少なくありません。
この章では、借地を駐車場として活用した際に、地主に反対された以下2つのケースを紹介します。
- 借地の一部を駐車場として活用したい
- 建物を取り壊して駐車場として活用したい
借地の一部を駐車場として活用したい
借地の余ったスペースを、駐車場として第三者に貸し出したいと考える借地人もいます。
借地の一部を利用して駐車場の貸し出しをおこなう場合、地主の承諾が必要です。
民法第612条では、地主の承諾なく譲渡・転貸をおこなうのは禁止されているからです。
地主に無断、もしくは承諾を得られていない状態で駐車場経営をした場合、契約解除になる恐れがあります。
建物を取り壊して駐車場として活用したい
借地を相続したものの、借地権付き建物に住む予定がなく、建物を解体して駐車場経営を始めたいと考える方もいるでしょう。
ただし、借地契約に「増改築禁止特約」の規定がある場合、無断で解体工事をおこなうと契約解除になり得ます。
増改築禁止特約は、地主の承諾なく建て替え・増改築などをおこなう行為を禁止する規定です。
特約があるにもかかわらず、地主の承諾なしに更地にすると、信頼関係の破壊があったとみなされ、契約解除になる可能性があります。
借地の一部、もしくは全部を駐車場として貸し出す場合、地主の承諾を得る過程は欠かせません。
借地権トラブルを解消できる3つの方法
借地権トラブルを解消できる方法は、以下の3つです。
- 弁護士に相談する
- 地主に借地権を買ってもらう
- 借地権を売却する
借地権をめぐり、地主と法的なトラブルを抱えている場合は、1つめの弁護士に相談するのが良いでしょう。
また、自身も借地権を手放したいと考えている場合は、2つめ、3つめの売却を検討しましょう。
それぞれの方法について具体的に解説しますので、自身のトラブルに合う方法はどれかご確認ください。
弁護士に相談する
すでに借地権トラブルが起こっているなら、すぐに弁護士に相談しましょう。
ここまで解説してきたように、借地権トラブルは最悪の場合裁判にまで発展する恐れがあります。
しかし、法律の専門家である弁護士に早めに相談すると、裁判にいたる前にトラブルをスムーズに解決できるでしょう。
今後も借地権付きの建物で暮らし続けたい、地主との関係を良好に保ちたい方におすすめの方法です。
ただしトラブルの解決を弁護士に依頼すると、数十万円から数百万円もの費用がかかります。
参照元:第二東京弁護士会「費用について」
トラブルが裁判にまで発展すると、解決までに1年以上の期間かかるケースも少なくありません。
そのため、費用や時間をかけずに借地権トラブルを解消したいなら、借地権の売却を検討するとよいでしょう。
借地権の売却については、本記事の「借地権を売却する」で解説しています。
借地権トラブルに強い弁護士事務所3選
上述したように、借地権は相続・更新・売買など、あらゆるタイミングで地主とトラブルが起こるリスクを抱えています。
当事者間での解決が難しい場合は、弁護士に相談して指示を仰いだり、手続きを委任したりするのが安全策です。
借地権トラブルに強い弁護士事務所3選を紹介します。
弁護士事務所 |
伊倉総合法律事務所 |
|
横浜りんどう法律事務所 |
---|---|---|---|
取り扱い分野 | 借地権トラブル、地代交渉など | 借地権トラブル、共有トラブル 建物賃貸借契約の解除など |
借地権トラブル、修繕問題、 相続トラブルなど |
所在地 | 東京都港区虎ノ門四丁目1番14号 神谷町プラザビル4階 |
東京都新宿区新宿2-12-4 アコード新宿ビル9階 |
横浜市神奈川区西神奈川1-7-2 東神奈川室町第二ビル2F |
問い合わせ | 詳細はこちら | 詳細はこちら | 詳細はこちら |
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また、伊倉総合法律事務所の魅力は、忙しい方でも相談をしやすい点です。
Web面談・土日祝夜間にも対応しており、オフィスに訪問する時間がとれない方も法律のプロとの面談を実現できます。
伊倉総合法律事務所の対応エリアは、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬です。
関東エリアの借地権トラブルは、解決実績の多い伊倉総合法律事務所に相談しましょう。
おおたか総合法律事務所は、幅広い不動産トラブルに対応できる弁護士事務所です。
借地権以外にも、共有名義・賃貸経営・建築紛争など、取り扱い業務は多岐にわたり、不動産全般で起こり得るトラブルの防止・解決ができます。
さらに、同社では契約書のチェック・作成にも対応しているため、これから借地権を相続する予定の方にとっても将来起こり得る紛争の未然防止が可能です。
おおたか総合法律事務所は、初回の法律相談は60分無料でおこなっています。
法律のプロによる手厚いサポートを受けたい方は、おおたか総合法律事務所への相談をおすすめします。
横浜りんどう法律事務所は、不動産以外にも、相続・離婚・労働など、あらゆるトラブルを解決へ導く法律事務所です。
弁護士・司法書士との共同事務所であるため、登記などの煩わしい手続きをワンストップで依頼可能です。
また、同社では法律相談から依頼までの間に、弁護士から費用に関する説明を受けられるため、予算を超えた依頼になる心配がありません。
くわえて、弁護士へ依頼した後も必要に応じて打合せに対応しているので、慎重に事案を進めてもらえるのも安心できるポイントです。
借地権トラブルにお悩みの方は、初回30分の法律相談が無料で受けられる横浜りんどう法律事務所に相談しましょう。
地主に借地権を買ってもらう
借地権の売却相手として、もっとも適しているのは地主です。
地主が借地権を購入すると、底地と併せて完全所有権の土地を手に入れられ、自由に活用できるようになるためです。
そのため、もし地主が底地を何らかの用途で使いたいと考えているなら、借地権の売却を持ち掛けるのも選択肢のひとつです。
日頃から地主との仲が良く、気軽に話し合えるような関係性が構築されている方は、一度相談してみるとよいでしょう。
ただし、当然ながら地主に借地権を買い取る意思がなければ話は成立しません。
借地権の買取には何千万円という資金が必要であり、地主側に相応の経済力がない場合には応じてもらえない可能性が高いでしょう。
借地権を売却する
地主に借地権を買い取ってもらえない場合は、不動産業者に依頼することで借地権を売却できます。
借地権の売却方法には、不動産仲介業者に買主を探してもらう「仲介」と、専門の不動産買取業者に直接買い取ってもらう買取があります。
ただし、不動産仲介業者に借地権の売却を依頼してもほぼ売れないので、専門の不動産買取業者に相談することをおすすめします。
ここからは、仲介では借地権の売却が難しい理由、専門の不動産買取業者なら借地権を買い取れる理由を解説します。
仲介業者に売却を依頼してもほぼ売れない
不動産仲介業者に借地権の売却を依頼しても売れない理由は、そもそもの需要がほとんどないためです。
借地権付きの建物を購入しても、地主に対して地代を払い続けなければなりません。
家を建て替えたいと考えても、地主の承諾が必要です。
その際も、承諾料という名目で費用を負担する必要があります。
また、地主との間にさまざまなトラブルが発生する恐れがある点も、借地権の売却が難しい理由として挙げられます。
買主が求めているのは、生涯にわたって安心して住み続けられるマイホームです。
そのため、多くのデメリットがある借地権は買主から敬遠される傾向にあるのです。
専門の買取業者なら問題なく買い取ってくれる
上記のように買主からは敬遠されがちな借地権ですが、専門の不動産買取業者なら問題なく買い取ってもらえます。
専門の不動産買取業者には、購入した借地権を再販したり、地主から底地を買い上げ完全所有権の土地として売却したりする豊富なノウハウがあるためです。
また借地権の売却には地主の承諾が不可欠ですが、専門の不動産買取業者には地主との交渉をスムーズに進められる知識や経験があるので、安心して任せられます。
ただし、借地権の買取実績に乏しい買取業者に依頼すると、地主との話し合いがこじれてしまい、結果的に承諾してくれない事態に陥りかねません。
そのため専門の不動産買取業者に借地権を売る際は、借地権の買取実績が豊富かどうかに着目するとよいでしょう。
弊社AlbaLink(アルバリンク)は訳アリ物件専門の買い取り業者として、多くの借地権を買い取り実績があります。
たとえば、地主から譲渡承諾が取れずに困っていた借地人から依頼を受け、底地の管理会社と交渉し、承諾料の取り決めをしたうえで、借地権を50万円で買い取ったこともあります。
こうしたケースで、底地の管理会社と揉めずに交渉できるのも、弊社が借地権の買い取りに慣れており、ノウハウが豊富にあるためです。
実際、弊社はこれまで不動産を買い取りさせていただいたお客様からも「他社で断られたが買い取ってもらえた」「肩の荷がおりた」といった好意的な評価を多数いただいております(下記Google口コミ参照)。
弊社は「訳あり物件の買取業者」としてフジテレビの「Newsイット!」など頻繁にメディアにも取り上げられております。
また、借地権トラブルに強い弁護士とも提携しておりますので、地主との交渉もお任せください。あなたがスムーズに借地権を売却できるよう、全力を尽くしてサポートいたします。
まずは下記無料買取査定フォームよりお気軽にお問い合わせください。
>>【トラブルのある借地権でも高額売却!】無料で買取査定を依頼する
なお、借地権を高額売却するコツは以下の記事でも詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
まとめ
借地権には、地主から「地代の値上げを要求される」「立ち退きを請求される」「建て替えを承諾してくれない」などのトラブルがつきものです。
また、毎月地代を支払う必要があるばかりか、契約更新時の更新料、建て替え時の承諾料など、ことあるごとに費用を負担しなければならないデメリットもあります。
このような借地権にまつわるトラブルやデメリットから解放されたいなら、売却を検討するのも選択肢のひとつです。
借地権を売却すれば、トラブルに巻き込まれることはありません。借地権の売却金額を元手に新居を購入するなど、新たな生活をスタートさせることも可能です。
ただし、トラブルの多い借地権を購入したいと考える方はほぼいないため、不動産仲介業者に依頼しても売却することは難しいでしょう。
そのため、借地権をスムーズに売却したいなら、専門の不動産買取業者に相談することをおすすめします。
なお、当サイトを運営している弊社AlbaLink(アルバリンク)は、借地権の買取を専門としている不動産買取業者です。
借地権の買取実績が豊富な弊社なら、借地権をより適正価格で買い取ることが可能です。
借地権を売却してトラブルから解放されたい方は、ぜひ弊社へお気軽にご相談ください。