底地の代表的なトラブル例
借地人が地主から土地の権利を借りる底地は、更新料や借地条件についてトラブルになることがあります。
底地における代表的なトラブルの例を4つご紹介します。
更新料の支払いに関するトラブル
1つ目は、更新料の支払いに関するトラブルについてです。
更新料によるトラブルを避けるためには、借地借契約書の特約として、更新料の支払いをどのようにするか前もって定めておくのがおすすめです。
更新料を支払ってほしい地主と支払いたくない借地人
借地人はなるべく更新料は支払いたくないと考えます。
一方地主にとって更新料は、借地人から得られる大きな収入源です。
そのため更新料が支払ってもらえないのであれば「代わりに地代を値上げしたい」という要求をすることが多くあります。
このように「更新料を支払ってほしい」と考える地主と「更新料を支払いたくない」と考える借地人との間でトラブルに発展することがあります。
法律で明確に定められていない
更新料の支払いについて法律で明確に定められているわけではありません。
借地契約を更新する際、更新料を支払う慣習がある地域が多いです。
しかし法律で定められているわけではないので、借地借契約書に「更新料を支払わなければならない」という記載がなければ、借地人は地主に更新料を支払わなくてもよいことになっているのです。このように更新料の支払いについて明確に定められていないため、更新料の支払いに関するトラブルが起こりやすいのです。
地代に関するトラブル
2つ目は、地代に関するトラブルについてです。
地代の滞納や地代の値上げ交渉などについてトラブルになることがあります。
地代の滞納
借地人が地代の支払いを滞納することでトラブルになることがあります。
借地契約をすると、借地人には地主に対して地代を支払う義務が発生します。
そのため借地人が地代を支払わずに滞納していると、地主に借地契約を解除されることがあります。
地代の滞納が1~2回くらいであれば、ほとんどの場合は借地契約の解除は認められません。
しかし長期間にわたって地代を滞納していると高い確率で借地契約を解除されます。
6カ月以上滞納していると解除される可能性が高く、実際に裁判所では6カ月以上滞納した借地人に対して契約の解除を認めた事例があります。
流れとしては、まず地主が借地人に対して期間を定めて地代を支払うよう催促します。
定めた期間内に支払いがなければ解除されるという流れです。解除通知は内容証明郵便で行われ、解除の効力は解除通知が借地人の元に届くことによって発生します。
地代の値上げ交渉
地主による地代の値上げ交渉によってトラブルになることがあります。
底地の周辺の地価が上がった場合などに、地主は借地人に対して地代の値上げを交渉できます。そのため地代を値上げしたい地主と、地代を現状維持したい借地人との間でトラブルになります。
地代は一般的に以下のように考えられています。
住宅用の土地:固定資産税・都市計画税額の3~5倍
商業用の土地:固定資産税・都市計画税額の5~8倍
正確な固定資産税額は地主しかわかりませんが、借地人が固定資産税額を確かめる方法もあります。
借地借契約書を市町村役場(東京都23区内は都税事務所)に持っていくと土地の評価証明書を取得できます。
評価証明書には土地の課税標準額が記載されているので、固定資産税額を算出することが可能です。
固定資産税額の算出方法については、固定資産税の担当職員や税理士などに相談しましょう。

借地条件に関するトラブル
3つ目は、借地条件に関するトラブルについてです。
地主に許可を得ることなく底地にある建物を増築・改築するとトラブルになることがあります。底地にある建物を増築・改築する場合は、地主に許可を得る必要があります。
多くの借地契約書には、「賃借人が建物を改築・増築する際は、地主の許可を得なければならない」という特約が入っています。借地契約で定めた借地条件に違反している建物を建てた場合や、許可を得ることなく底地の建物を増築・改築した場合には、借地条件に違反したと見なされます。
多くの借地契約書には上記の特約が入っていますが、このような特約がない場合は地主の許可がなくても、自由に建物を増築・改築することができます。契約した時期がかなり前である場合などは契約の内容があいまいであることが多く、地主と借地人とで認識にずれが生じることでトラブルになりやすいです。
建物の種類や用途を制限する特約が入っていることも
借地契約書に建物の種類、構造、規模、用途を制限する内容の特約が入っていることがあります。条件に反する建物を増築・改築する場合には、地主の許可を得なければなりません。現在ある底地の多くは、1991年の借地借家法が制定されるより前の、旧借地法で借地契約が結ばれています。旧借地法によって結んだ借地契約の場合、適用される法律は旧借地法であり、新法ではないので注意しましょう。
旧借地法では以下のような内容が契約書に記載されています。
住居か、店舗か、工場か
本建築か、一時使用か
コンクリートの堅固な建物か、木造の非堅固な建物か
木造の家屋を建てる目的で土地を借りたのに鉄筋のビルを建てた場合や、住居目的で借りたのに店舗にした場合などは、借地条件違反に当たります。
建物について地主の許可が得られない場合は、裁判所に対して建物の増築・改築について相談できます。「借地借家法第17条2項」により、裁判所で地主の代わりに許可を得ることが可能です。裁判所で許可を得る場合、要件として「土地の通常の利用上、相当である増築・改築」である必要があります。この相当については、借地契約の趣旨を逸脱していないか、増築・改築する建物が建築基準法やその他公法規制に合っているか、近隣に悪影響がないかなどを検討し判断されます。
共有で相続してしまい関係性が悪化してしまった
4つ目は、共有で相続してしまい関係性が悪化するというトラブルについてです。
底地を相続する際には、誰が相続するのか親族などの相続人同士で話し合うことになります。その際、複数人の相続人と共有で相続する方法もあります。
しかし底地を複数人で共有すると、権利の関係が複雑になってしまい、他の相続人や借地人との関係が悪化することにつながります。そのため底地はできる限り単独で相続することをおすすめします。
相続人同士の関係が悪化
底地を複数の相続人で共有すると、借地人が地主に対して支払う建て替え代や譲渡承諾料などを誰がいくら払うのか決める際にもめてしまい、関係が悪化することがあります。
底地を売却する際には相続人同士による収益の取り合いにもつながります。

実際にトラブルになってしまったらどうすれば良い?
底地についてトラブルになった際の解決方法には以下の2つがあります。
専門家に相談する
底地を売却する
それぞれの解決方法についてご説明します。
専門家に相談
底地についてトラブルになったら専門家に相談しましょう。
底地のトラブルは法律に関わることが多いので、弁護士や税理士など法律の知識を持った専門家に相談すると良いです。
底地の買取を行っている不動産会社に相談する
底地をめぐって相続人や借地人との間でトラブルになった際には、底地を不動産会社に売却するという解決方法もあります。
底地を売却する方法にはいくつかありますが、不動産会社に買取を依頼して売却する方法では底地を早くに売却することができます。また売主の瑕疵担保免責で買い取ってくれる場合もあるので、売却後のトラブルを避けつつ底地の売却に手間をかけずに済みます。しかし、不動産会社に売却すると、買取価格が安くなりやすいというデメリットもあるのでまずは借地人との交渉を優先しましょう。また、買取業者に依頼する場合でもいくつかの不動産会社に価格を査定してもらい、比較検討しましょう。
底地を専門に扱っている不動産会社もあり、このような不動産では底地のトラブルについて相談に乗ってもらえます。無料相談を行っている不動産会社もあるので、気軽に相談することができます。


トラブルを防ぐために大切な事
底地をめぐって相続人や借地人とトラブルになるのを防ぐためにすべきことをご紹介します。
地主と借地人で関係性を築いておく
地主と借地人で日頃からコミュニケーションを取り、良い関係性を築いておくことが大切です。底地に建物を建てたい場合など、いざ交渉したい時に初対面となると、交渉がスムーズにいかない可能性が高くなります。売買契約と異なり、借地契約では数十年という長期間にわたって契約していくことになります。そのためトラブルを防ぐためには、地主と借地人で信頼関係を築いておく必要があります。
相続については所有者の生前に取り決めておく
底地の相続をめぐって親族同士でトラブルになるのを防ぐために、底地の相続については所有者の生前に取り決めておきましょう。
底地の所有者が生前に遺言書を作り、底地の権利についての関係を明確にしておくことが必要です。底地の相続をめぐるトラブルは、相続してから時間が経った後に表面化することもあります。日数が経過すればするほど解決することが難しくなるので、生前にしっかりと取り決めておきましょう。また底地は共有ではなく誰か1人が単独で所有するようにしましょう。
まとめ
底地は一般的な土地よりもトラブルが起きやすいので注意が必要です。
地代の支払いや相続など、トラブルにつながりやすい点が多くあります。
トラブルになってしまったら、専門家に相談したり、不動産会社に依頼して底地を売却することで解決できます。底地をめぐるトラブルを未然に防ぐために、相続については所有者が生前に遺言書で取り決めておきましょう。