空き家の管理を放置するリスクとは?
2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、空き家の所有者に管理義務を定めています。
ここ数年、適切に管理されていない空き家が増加していることで、近隣に迷惑・悪影響を及ぼす案件が散見されるようになったことが背景となっています。
近隣への悪影響がトラブルに発展する可能性
具体的には以下のようなケースで近隣トラブルが発生することが多くなっています。
・空き家の敷地内の庭木が周辺道路の通行を妨害する
・敷地内に投棄されたゴミで害虫が大量に発生した
・空き家の建材などが台風の強風などによって吹き飛ばされ、近隣住宅を破壊する
上記は一例に過ぎませんが、維持管理が行き届かない空き家を放置しておくことは、事故などのトラブルの元となり、実害が発生した場合に訴訟問題に発展するといったリスクが高いことも留意しておく必要がありそうです。
空き家の維持管理には数十万円のコストがかかる
しかし空き家の維持管理には、建物・敷地内のメンテナンス費から現地に向かうまでの交通費までさまざまな費用がかかります。
一概には言えませんが、空き家が現住居から遠方にある場合、場合によっては年間で数十万円単位の維持費が必要になる可能性があります。
ここでは、空き家の維持管理でかかる費用について考えていきます。
空き家の維持費については以下にもまとめています。

固定資産税
不動産を所有していると必ず必要になるのが固定資産税です。
固定資産税は不動産が所在する自治体が課しているもので、市区町村が定めた不動産の固定資産税評価額に一定の税率を掛けて算出します。
税率は一般的に1.4%ですが、自治体によって異なりますので注意が必要です。
都市計画税
市街化区域に所在する不動産を課税対象としているのが都市計画税です。
税率は一般的に0.3%ですが、こちらも自治体によって異なります。
また、所有する不動産が市街化区域に所在しているかどうかも併せて自治体に確認するようにしましょう。
なお、固定資産税・都市計画税ともに居住用の建物(戸建て・アパートなど)が現存する場合は、税率の軽減措置が適用される場合がありますので、こちらも確認が必要です。
ちなみに、近年問題になっている空き家の増加は、空き家であっても建物が現存することで税負担の軽減措置を受けられることが一因とされています。
光熱費
空き家といっても、電気・水道などの契約をそのままにしておく場合、それぞれ基本使用料が発生します。
高額な費用ではありませんが、積み重なると意外と大きな出費となっていくので注意が必要です。
自治体および契約内容によって異なるものの、水道・電気・ガスを合わせて年間数万円程度の出費が必要になります。
これらの基本契約とは別に配水管・ガス管・電気配線のメンテナンス費用などもかかります。
火災・地震保険
空き家は居住者がいないので火災が起きづらいと考えるかもしれませんが、人気のない空き家は放火のターゲットになりやすいのが実態です。
また、地震などの各種災害による空き家の全半壊によって、近隣住宅への被害が出る、通行人を怪我させてしまうなどの可能性もありますので、火災・地震保険への加入は必須と言えるでしょう。
保険の費用や補償内容・契約期間、建物の構造や立地・築年数などは、保険商品によって異なりますが、目安としては年間数万円〜数十万円程度の保険料が必要になります。
交通費
維持管理する空き家が現住居から遠方にある場合、移動にかかる費用も大きくなります。
例えば、空き家の管理のために東京-大阪間を新幹線(自由席)で移動すると往復3万円弱かかります。
3ヶ月おきに訪問すると仮定すると、年間の交通費は10万円を超えることになります。
他にも、車や飛行機などに加えて、場合によっては宿泊費なども必要になりますので、さらに費用がかさみます。
修繕費用
建物が老朽化することで、雨漏り、腐朽した建材の飛散、壁材の破損などのさまざまな不具合が出てきます。
これらを放置しておくと、建物の倒壊・全半壊などが起こりやすくなり、近隣トラブルの原因となりますので、こまめなメンテナンスが必要となります。
しかし、いずれの修繕においても専門業者に依頼をかけるとなると、1ヵ所の修繕だけで数万円から数十万円の費用がかかるケースがあります。
複数箇所の修繕となればそのコストはさらに膨らみます。
空き家の処分にはどんな手段があるか
ここまで、空き家の維持管理にかかるコストの費目を中心に解説してきました。
定期的かつこまめにメンテナンスを施すとなると、大きな費用負担が発生し、空き家を処分を検討したいという方もいらっしゃるかと思います。
ここからは、空き家の処分についてどのような方法があるかを解説していきます。
建物付きでの売却
空き家の処分方法として最も多いのが、空き家を現況のまま売却する方法です。
中古戸建もしくは古家付き土地での売却となります。
中古戸建のリフォーム・リノベーション費用、古家付き土地の場合の解体費用などは買主負担となるため、売主の手間とコストがかからないことがメリットです。
その一方で、思い入れのある住居を売却することになりますので、場合によっては家族との思い出を処分してしまうような罪悪感を抱く方も多いようです。
買主の意向によっては建物が解体されてしまうといったケースもありますので、気持ちの整理をつけてから売却を検討する必要があるでしょう。
更地での売却
空き家を解体し、更地として売却することも一つの方法となります。
解体費用は売主が負うことになりますが、一般的に古家付き土地よりも高く早く売却できる傾向にあります。
ただし、建物がない状態の土地に対しては、固定資産税・都市計画税に適用される税負担の軽減措置が適用されませんので、税負担が大きくなる可能性があることにご注意ください。
賃貸に出す
空き家に思い入れがあるので売却したくないという方の中には、家を人に貸すことを選択する人も多いようです。
賃貸の場合、売却しなくても良いことに加えて、日常管理の手間から解放されるということもメリットとして挙げることができます。
建物は人が住んでいないと老朽化が進みますので、入居者がいることで建物の維持につながります。
一方で、賃貸経営をするということになりますので、不動産投資に関するリスクや貸主としての責任を十分に理解しておく必要があります。
空き家バンクに登録する
空き家バンクは自治体が主体となって運営しているもので、空き家の売主・貸主が物件を登録し、買主・借主とマッチングすることができるサービスです。
空き家バンクのメリットは登録無料であることに加えて、自治体の補助金制度が利用できることです。
空き家バンクは、空き家の有効活用もさることながら、移住促進による自治体の税収増を目的の一つとして運営していますので、一定の要件を満たせば補助金を受けられるケースもありますので確認して有効に活用しましょう。
リフォーム・リノベーションによる再利用
空き家にご自身もしくは賃借人が居住する場合は、規模の大小は問わず、リフォームやリノベーションが必要になってくるでしょう。
空き家になってしまったことで劣化した建物をリフォームやリノベーションによって再生させることで、生活がより快適なものになります。
賃貸の場合は、借り手が見つかりやすくなるというメリットもあります。
しかしその場合、相応の費用がかかることは覚悟しておく必要があります。
特に1981年以前に建てられた建築物の場合、旧耐震基準が適用されている可能性があるため、耐震補強によるコスト増の可能性がありますので注意が必要です。
自治体に寄付
空き家が所在する自治体に当該不動産の寄付を申し出る方法です。
しかし、自治体が寄付を受け入れることはあまりありません。
地方自治体の財源は固定資産税の割合が高いため、寄付を受け入れることで税収額が目減りするからです。
しかし、自治体が必要とする不動産(利用目的が定まっている)の場合は寄付を受け入れるケースもあります。
例えば、防災倉庫置き場や住宅街の小規模な公園などはその一例です。
空き家の売却が難しいケース
空き家の処分においては、不動産仲介による売却が最も一般的ではありますが、空き家の特殊な事情もあり、なかなか買主が見つからないということが一般的です。
ここでは、どういった場合に空き家の売却が難しいかについて解説していきます。
物件に問題がある場合(再建築不可、瑕疵など)
現状の建物を解体してしまうと再建築することができない再建築不可などの条件が付いている場合は売却が難しくなります。
再建築不可物件は、土地の有効活用がしづらい、金融機関などの融資が受けづらいなどのデメリットがあるので、通常物件のような相場感での売却は難しくなる傾向にあります。
同様に、瑕疵があっても責任は負わない瑕疵担保免責の物件なども売却は難しい物件と言えるでしょう。
地方に所在する物件
所有する空き家が地方にある場合、売却が難しくなる傾向があります。
地方では、少子高齢化・人口減少の影響などで若年層の人口が減っており、年齢が上がると持ち家の保有率が上がるため、都市部に比べて需要が少ないことが理由です。
加えて、仲介を依頼する不動産会社の絶対数自体が少ないことに加えて、空き家は価格が低く仲介手数料も見込めないことから敬遠されがちなことも原因の一つと言えるでしょう。
空き家を放置するリスク
買主が見つからないからといって、空き家をそのまま放置してしまうのはリスクが高いのでおすすめできません。
2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、空き家の所有者における管理義務が定められ、適切に管理されていない物件については、空き家の土地の固定資資産税に対する優遇措置の適用除外、自治体の権限で解体撤去を行う行政代執行を認められています。
つまり、所有する空き家に対しては、適切な管理を継続して行うか、空き家を処分するかのどちらかを選ばなければなりません。
まとめ
ここまで、空き家の維持管理に関するコストについて、および空き家を処分する方法について解説してきました。
ポイントは以下のとおりです。
・空き家を適正に維持管理していくためにはコストがかかり、状況によって異なるが、年間で数十万〜数百万円になるケースもある。
・維持管理を怠ると、空き家の管理者義務違反によって罰則を受ける可能性があるので、維持管理が難しい場合は空き家の処分・活用などを検討する必要がある。
・空き家を処分する方法として最も一般的なのが売却ですが、空き家ならではの理由でスムーズに売却することが難しいケースも多い。

専門業者に空き家を買い取ってもらうという方法
不動産仲介による売却よりも比較的スムーズに売却が完了するのが専門業者による買取です。
空き家は年々増加しているため、空き家再生事業に注力する事業者も増加傾向にあります。
そういった不動産会社は空き家の取り扱い実績も多く、蓄積したノウハウを活かしてあなたが所有する物件の魅力を見出すことができるため、より早く高値で売却できる可能性があります。
買取のメリットは、現状のまま買取ることが可能なのでリフォーム・リノベーション・残置物の撤去などは不要で、比較的古い物件でも売却が可能な点です。
また、不動産会社が直接買い取りますので、仲介手数料が不要なことに加えて、空き家に欠陥や不具合があった場合も免責となりますし、売却も比較的早期に完了させることができます。
所有する空き家の維持管理に悩んだら、空き家の取り扱いの豊富な不動産会社にまずは相談してみることをおすすめします。