共有名義で不動産を購入する場合の持分割合の決め方
共有名義で不動産を購入してローンを組む場合、基本的に持分割合は自由に決めることができます。
しかし、負担額の割合と持分割合が一致していないと後で他共有者と揉める可能性があるので、負担額割合と持分割合を一致させるのが一般的です。
持分割合を決める際に、負担額と持分が割り切れないケースや住宅ローンの組み方によって持分割合が変わるケース、親から資金援助があるケース等、様々な事例が想定されます。
負担額に応じた適切な持分割合の決め方について詳しく解説していきます。
なお、共有持分について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
持分割合の計算方法
共有持分の割合は、基本的には不動産を購入したときの負担額に応じて決まります。
夫婦の共有名義で不動産を購入したら、共有持分の割合について決める必要があります。
持分割合は下記の計算方法で求めます。
持分割合=負担額÷不動産購入代金
5,000万円の住宅を購入して、夫3,500万円、妻1,500万円それぞれ負担した場合、持分割合の計算方法は下記の通りです。
夫の持分割合は、3,500万円÷5,000万円=7/10
妻の持分割合は、1,500万円÷5,000万円=3/10
このように、負担額の割合に応じて共有持分の割合を一致させるようにしましょう。
持分が割り切れない場合の計算方法
共有持分を求めるための計算をすると、割り切れない場合も少なくありません。
5,400万円の住宅を購入して、夫3,200万円、妻2,200万円それぞれ負担した場合、持分割合の計算方法は下記の通りです。
夫の共有持分=3,200万円÷5,400万円=0.592
妻の共有持分=2,200万円÷5,400万円=0.407
このように割り切れない場合は、端数を調整してきれいな数字に整えます。
夫の共有持分=0.60=60/100
妻の共有持分=0.40=40/100
端数の調整をすることで、夫の共有持分が増え、妻の共有持分が減りました。
夫の共有持分が増えたのは、本来であれば妻が所有するはずの持分を夫に渡したことになり、妻から夫に対して贈与があったと税務上の判断ではみなされます。
この事例の場合、5,400万円×(60%-59.3%)=378,000円となり、贈与税は発生しません。
贈与の金額が年間110万円を越えると贈与税が課税されるため、共有持分が割り切れず数字の調整をするときには、年間110万円を上回らないように対応しましょう。
持分割合を決めるタイミング
マイホームを共有名義で購入するときは、持分割合を登記事項証明書(登記簿謄本)に記載するので、契約が終わったらなるべく早く持分割合を決めなければなりません。
一般的には売買契約を締結してから1カ月以内に決済と所有権移転登記を行いますので、それまでには持分割合を決めておく必要があります。
中古不動産の場合は、基本的に代金の授受と引き渡しを同時におこない、決済が済んだら司法書士を介して移転登記手続きを行うのが一般的な流れとなります。
新築物件の場合は、不動産所有権の取得日から1か月以内に表題登記の申請が必要です。
表題登記を行わずに申請期間の1ヶ月を過ぎてしまうと、10万円以下の罰金が課せられるので注意が必要です。
住宅を購入する話がでたら、どのようなライフプランを想定しローンを組むのか、共有名義にするなら出資額の割合はどうするのかなどの話し合いがされていると後々スムーズです。
不動産購入時と相続時の共有持分割合の決め方
共有持分を取得する際には、相続で取得する場合と不動産購入時で持分割合の決め方が異なります。
相続で共有持分を取得する場合は、法定相続分によって持分割合を決めるのが一般的ですが、被相続人が遺言書を作成している場合は、遺言書の内容で決めます。
自分たちで相続割合を決めたい場合は、遺産分割協議という話し合いを行って、相続人全員で共有持分割合を決めることも可能です。
ただし、相続で共有持分を取得した場合は、不動産の管理や税金などで相続人同士で揉める可能性があるので、共有状態になるのは避けたほうがよいでしょう。
不動産購入時に共有持分を設定する場合は、負担額の割合に応じて持分割合を決めるのが一般的です。
負担額の割合と持分割合が一致していないと、税金の控除ができなかったり、税金を多く支払ったりするおそれがあるので、不動産購入の場合は共有者間でトラブルが起きないように事前に話し合いをしておく必要があります。
住宅ローンの組み方で変わる持分割合の決め方
夫婦共有名義の住宅ローンを借りて不動産を購入する際の持分割合の決め方は、以下住宅ローンの種類によって異なります。
ここでは、住宅ローンの組み方別に持分割合の決め方を見ていきましょう。
連帯保証型の住宅ローンは主債務者の持分割合が大きくなるケースが多い
連帯保証型の住宅ローンはどちらかが主債務者で、もう1人が連帯保証人となり、主債務者の単独名義での契約になります。
返済義務は主債務者ですが、主債務者が返済できない場合は連帯保証人に返済義務があります。
頭金の支払い額によっても持分割合が変わりますが、主債務者の持分割合が大きくなるケースがほとんどです。
別の連帯保証人を用意したり、別の不動産を担保として差し出したりして、金融機関が認めてくれれば、連帯保証人は配偶者以外に変更も可能です。
たとえば、夫だけが返済する場合
住宅購入費用が5,000万円
夫の頭金500万円、妻の頭金500万円
夫の返済額が4,000万円、妻の返済額が0円
夫の費用負担が4,500万円、妻の費用負担が500万円となるので、夫の持分は9/10、妻の持分は1/10となります。
連帯保証型の住宅ローンは収入を合算することで単独ローン以上に借入額を増やせるといったメリットがあります。
その一方で、住宅ローン控除は主債務者しか適用できなかったり、連帯保証人は団体信用生命保険には加入できないなどのデメリットもあります。
連帯保証型の住宅ローンを組む場合、収入がない専業主婦でも支払い義務のある連帯保証人になる必要があるので覚えておきましょう。
連帯債務型の住宅ローンは返済の割合で持分割合が決まる
連帯債務型の住宅ローンは、1つの住宅ローンを夫婦2人で返済していく借り方で、共有持分の割合は、返済の割合に応じて決まるのが一般的です。
連帯債務型の住宅ローンを組むときには主債務者と連帯債務者を決める必要があり、注意すべき点としては、主債務者は団体信用生命保険に加入できますが、連帯債務者は一般的には加入できないことが挙げられます。
主債務者が団体信用生命保険に加入することで、主債務者が死亡または高度障害になった場合に、団体信用生命保険により妻のローン残高の支払いが免除されます。
その一方で、万が一連帯債務者が死亡または高度障害になったとしても連帯債務者は団体信用生命保険に加入できないので、返済を続けなければいけません。
連帯債務型のメリットとしては、夫婦2人とも住宅ローン控除が受けられる点です。
住宅ローン控除とは
住宅ローンの年末残高の0.7%が13年間にわたって所得税(引き切れない場合は一部住民税からも)から控除される制度です。1人あたり最大35万円の控除を受けられ、夫婦合わせると最大70万円の控除を受けられるので、節税の効果が大きくなります。
連帯債務型の住宅ローンは、夫婦2人ともに今後も働き続けると考えている人には向いているでしょう。
ただし、いずれ奥さんが仕事を辞めて主婦になる場合、夫の給与から妻の分のローンを返済すると贈与税の課税対象になる場合があるので注意が必要です。
夫婦のライフプランを考えた上で住宅ローンを決めるようにしましょう。
夫婦(親子)でペアローンを組んだ場合は頭金+借入の総額で持分割合が決まる
ペアローンは夫婦や親子が別々で住宅ローンを組み、それぞれが単独の債務者となり、お互いが連帯保証人となります。
ペアローンの場合は、頭金と借入の総額によって持分割合が決まります。
たとえば、3,000万円の住宅を購入した場合、
住宅購入費用が3,000万円
夫の頭金と借入の総額が2,000万円
妻の頭金と借入の総額が1,000万円
この場合は、夫の持分2/3、妻の持分1/3となります。
ペアローンも、夫婦2人ともに住宅ローン控除が受けられます。
3つの住宅ローンのうちペアローンだけが、2人とも団体信用生命保険に加入できるのも特徴の1つです。
その一方で、デメリットとしては、万が一どちらかが死亡または高度障害になった場合でも、保険金から完済されるのは1つの住宅ローンだけです。
夫婦2人の借入金すべてが保険金によって完済されるわけではなく、もう1つの住宅ローンは返済し続けなければなりません。
いずれも住宅ローンを検討する前に、今後の将来を見据えた資金計画を立てる必要があります。
親から資金援助がある場合の持分割合の決め方
住宅を購入する際に、親からの資金援助を受けて購入する方も多いのではないでしょうか。
親からの資金援助には、贈与・共同出資・借入といった3つの方法がありますが、それぞれの方法についてメリットとデメリットを理解する必要があります。
持分割合や税金面において、後々親子間のトラブルにならないように注意が必要です。
贈与の場合
親から贈与を受けた場合、そのお金は自己負担額に含めて計上します。
たとえば、5,000万円の住宅を購入して、夫3,000万円、妻1,500万円の負担、夫の親から500万円の贈与があった場合、持分割合の計算方法は下記の通りです。
夫の持分割合は、3,500万円(夫負担3,000万円+夫の親からの贈与500万円)÷5,000万円=7/10
妻の持分割合は、1,500万円÷5,000万円=3/10
夫の親からの贈与となるので、夫の出資額と合算して計上できます。
もちろん、親が共有持分を取得することはありません。
上記事例の場合、年間110万円以内の贈与の非課税枠を越えて贈与を受けているので贈与税が発生します。
年間110万円以内の贈与なら非課税となりますが、贈与額500万円なので、500万円から110万円を引いた390万円に対して贈与税が課されます。
このように、贈与された額が大きいと課税されるので注意が必要です。
相続で小規模宅地等の特例が使えない
その他にも注意しないといけない点として、相続時に小規模宅地等の特例が使えなくなることです。
小規模宅地等の特例とは
居住用宅地の面積のうち330㎡までの部分の評価額を80%減額できる制度です。
たとえば、自宅が300㎡で評価額が3,000万円の場合、80%減額されて600万円まで相続税評価額を減額できるので、相続税が大幅に抑えられます。
親の資金で親が自宅を購入した上で子どもが同居していれば、自宅敷地が相続財産となり、相続税の小規模宅地等の特例を適用できます。
しかし、親からの贈与を受けて子どもが購入した物件は親の相続財産ではありませんので、小規模宅地等の特例を適用する余地がありません。
なお、小規模宅地等の特例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
遺留分で相続時に揉める点
もう1つ気を付けておくべき点として、贈与分が元で揉める可能性があることです。
贈与を受ける人の他に兄弟姉妹がいる場合、親からの贈与をもらい過ぎたら不満に感じる人が出てくるかもしれません。
なぜなら、将来の相続財産が減って自分の取り分がなくなる可能性があるからです。
取り分のなくなった相続人は、最低限の取り分として遺留分を請求することができるので、遺留分の請求を受けた人は親からの贈与を受けたばかりに、相続後に他の相続人へ金銭を支払うといったケースもあります。
上記のような家族間のトラブルに発展する可能性がありますし、贈与を受けたばかりに他親族との関係性が悪くなるのは避けたいところです。
贈与を受けるのであれば、あらかじめ家族間でしっかりと話し合いをして全員が納得する形で進める必要があるでしょう。
共同出資の場合
親と共同で出資して不動産を購入する場合、出資額の割合に応じて持分を取得するので親も共有名義人に含まれます。
4,000万円の住宅を購入した場合
・住宅購入費用が4,000万円
・夫の出資額が2,000万円
・妻の出資額が1,000万円
・夫の親の出資額が1,000万円
夫の持分1/2、妻の持分1/4、夫の親の持分1/4となります。
事例のように出資額に応じた持分割合にすれば贈与とみなされる事はありませんが、共有持分を取得した親にも不動産取得税や固定資産税、都市計画税がかかります。
将来親が亡くなったら、親の共有持分も相続の対象となるため、兄弟姉妹がいる場合はその持分を巡って揉めてしまう可能性もあるので注意しましょう。
借入の場合
親から借入を行って物件を購入する場合は、贈与とみなされないために必ず借用書を作成しましょう。
借用書を作成せずに口約束で借入を行うと、第三者が見ても贈与か借入の判断がつかないためです。
他にも、時間の経過による状況の変化、例えば、子どもの生活が苦しくなったり、親が痴ほう症となり請求しなくなるなどによって、いつの間にか返済がされない状態になり、未返済額が贈与と認定されることがあるため、借用書は必ず作成しましょう。
なお、利息については、プライベートの個人間である(事業者ではない)限り必ずしも設定する必要がありません(もらうべき利息が贈与として認定されることはありません)が、返済の外観を備えるという点では世間相場並みの利息を設定するに越したことはありません。
借用書(金融機関で借入れをするのと同様に借入額に応じた印紙を貼る必要があります)に記載する必要事項を一覧にすると、下記の通りです。
返済方法
返済期限
利息・損害遅延金
契約日
貸主の氏名
借主の署名・捺印
また、借入を行う際には、以下のことに気を付けると良いでしょう。
- 利息設定をする場合には金融機関と金融機関と大幅な差のない利息をつける
- 契約書通りに毎月必ず返済する
- 返し方によっては贈与税の対象となり、税金を支払わないといけなくなる可能性もある
親からの借入だからといって、手続きを省略しないように注意が必要です。
相続で不動産が共有名義になる場合の持分割合の決め方
相続による持分割合の決め方は、法定相続分・遺言・遺産分割協議とそれぞれに違いがあるので、1つずつ解説していきます。
共有名義の不動産を相続した人の中には共有持分を相続しても持分移転登記を行わないケースもありますが、2024年4月より相続登記は義務化されており、必ず持分移転登記を行いましょう。
なぜなら、持分移転登記をしていなければ、本当は誰の所有になっているかわからない状態となるので、後で他の相続人と揉めるリスクがあるからです。
なお、共有持分の相続登記については、以下の記事で詳しく解説しています。
法定相続分によって決める
相続によって共有持分を取得したときには、遺言書が無い場合、法定相続分によって持分割合が決まります。
法定相続分が認められている人を法定相続人といい、「配偶者」と「子・親・兄弟姉妹」など血縁関係にある人を指します。
相続が発生したときに「配偶者」がいれば常に法定相続人に選ばれ、「子ども・親、兄弟姉妹」がいる場合は相続できる順番が法律で定められており、相続順位は下記の通りです。
第1順位:子ども
第2順位:親
第3順位:兄弟姉妹
たとえば、夫婦で6,000万円の住宅を購入し、共有持分を1/2ずつ所有していた夫が他界し、妻と子ども3人が相続を受ける場合、まず妻の法定相続分1/2が認められます。
子どもは残り1/2を3人でわけるので、1/6ずつとなります。
妻は、1/2(夫の共有持分)×1/2=1/4の共有持分
子どもは、1/2(夫の共有持分)×1/6=1/12ずつの共有持分
妻は、3,000万円×1/4=750万円
子どもは、3,000万円×1/12=250万円ずつとなります。
法定相続分は法律で定められた割合となるので、揉める可能性も少ないかもしれません。
法定相続分については、以下の記事でも詳しく解説しています。
遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容によって持分割合を決める
亡くなられた方が遺言書を作成している場合は、法定相続分よりも遺言書の内容が優先されます。
ただし、相続人同士にバラつきがあり不公平な場合があるかもしれません。
そのような場合、法律で最低限の相続人の取り分が決められている「遺留分」を請求することができます。
遺留分は遺言の内容より強い権利で、相続財産が他の人にはあるのに自分だけ無いなどの明らかに不公平なときに遺留分を請求すると、遺留分相当額の金銭を取り戻すことができます。
相続は基本的には遺言書の内容通りになりますが、遺留分が侵害されたり、相続人全員の同意により遺産分割協議の方法で持分割合を変更することもできます。
【遺言書の見本】
遺産分割協議を行って決める
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割方法を決める話し合いのことをいい、相続人全員の同意があれば相続割合を自分達で自由に決めることができます。
ただし、1人でも欠けた状態で遺産分割協議を行うと、その協議は無効となります。
その理由は、参加できなかった相続人の権利が侵害されるおそれがあり、トラブルになる可能性があるからです。
相続人全員の合意があれば、法定相続分や遺言書にしたがうことなく遺産分割協議によって決めることができます。
協議を終えたら、話し合いの内容が第三者が見てもわかるように遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書を作成しておけば、協議後のトラブル防止につながり、裁判所や金融機関などの第三者にも証明ができます。
遺産分割協議書の作成にあたっては、税理士や弁護士などの専門家からアドバイスを受けると円滑に進められるでしょう。
不動産を共有名義で相続するときの遺産分割協議については、以下の記事で詳しく解説しています。
持分割合の確認方法
共有名義で不動産を購入した場合は持分割合を自分達で決めるのでわかりますが、相続により共有持分を取得した場合は自分の持分割合はどうなっているのかわからないといったケースもでてくるでしょう。
不動産を売却するにしろ、リフォームするにしろ、自分の持分割合を把握しておくことは大切です。
この章では、持分割合を確認する方法について解説していきます。
登記簿を確認する
共有持分の割合は、登記簿を確認すればわかります。
不動産が共有名義の場合、登記簿謄本の権利部(甲区)に持分と所有者名が記されています。
一昔前は登記がされていないケースも存在しましたが、現在は売買契約のときに司法書士が登記をするのが一般的です。
登記簿は法務局の窓口でも取得できますし、平日日中に法務局に行く時間がとれない場合はオンラインでの請求も可能です。
オンラインで請求して郵送してもらう場合は500円、オンラインで請求して窓口に取りに行く場合は480円とオンラインで簡単に取得できるようになっています。
【登記簿謄本の見本】
固定資産税通知書を確認する
共有持分の割合は固定資産税通知書や名寄帳でもわかる場合があります。
共有者のうち市町村役場(都税事務所)が選んだ人、もしくは登記名義人から申し出た代表者1人に送られてきます。
原則的に共有者ごとに別々で送ってもらうことはできません。
そのため、代表者以外の方で必要な場合や代表者が紛失した場合などは、市町村役場の資産税課(もしくは都税事務所)で「固定資産税評価証明書」を取得するという方法があります。
ただし、固定資産税通知書では共有者ごとの持分割合までは通常記載がないため、登記簿を確認するほうが確実です。
【固定資産税納税通知書の見本】
未登記で持分割合がわからない場合
共有持分は不動産の購入時だけでなく、相続や贈与によっても取得することがあります。
相続や贈与によって持分を取得した場合は、登記手続きを怠ってしまうケースが少なくありません。
しかし、法改正により2024年4月から相続登記が義務化されており、相続人が相続や遺贈で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければ、罰則10万円以下の過料が課せられるようになりました。
登記手続きには費用と手間がかかるため、相続登記が義務化されるよりも前は登記をせずに持分が未登記の状態になっているケースが存在しています。
では、未登記で持分割合がわからない場合にはどのようにすれば良いのでしょうか。
調べる方法は2つあり、まずは事実関係を調べていきます。
1つ目は、戸籍謄本を取得して法定相続人や相続割合を算定し、それぞれの持分を算定する方法です。
2つ目は、契約書などの書類を調べて持分割合を算定する方法です。
それでも持分割合がわからない場合は、民法第250条の規定により持分割合が決まります。
持分割合が不明な場合は、各共有者の持分はそれぞれ等しいものとされます。
(共有持分の割合の推定)
第250条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。
共有持分割合を決めるときの注意点
共有持分を決めるときには、持分割合を適当に決めてはいけないなどの注意しなければならないポイントがあります。
これから説明することを知らずに決めてしまうと、贈与税が課税されるリスクや、住宅ローン控除の対象外になるなど大きな損をするおそれがあります。
共有持分割合を決めるときには、持分割合を適当に決めないよう気を付けてください。
建物に共有持分がないと住宅ローン控除の対象にならない
建物に共有持分を設定していないと、住宅ローン控除を受けることができません。
なぜなら、住宅ローン控除は建物を対象としており、土地は建物と併せて所有することによってはじめて対象となるからです。
たとえば、建物は夫名義の住宅ローン、土地が夫と妻名義の住宅ローンというように資産ごとにわけて持分を設定すると、土地の名義人である妻は住宅ローン控除を受けられません。
せっかく共有名義にして2人ともに住宅ローン控除を受けるはずだったものが無駄になってしまうため、土地と建物の持分割合は同じにした方が良いでしょう。
持分割合を決めるときは負担額や出資額の割合によって決める
持分割合を決めるときは、原則として負担額や出資額の割合によって持分割合を決めなければなりません。
適当に持分割合を決めてしまうと贈与税が発生したり、住宅ローン控除額が減ることで損をしたりすることがあるからです。
たとえば、「夫婦で購入するから半分の1/2ずつにする」といった決め方だと損するおそれがあります。
持分割合を適当に決めてしまうとどう損をするのか、2つのケースで解説していきましょう。
贈与税がかかる
原則として負担額の割合に応じて持分割合を決めなければなりません。
持分割合が負担額の割合と異なっていると、贈与とみなされて共有持分が低い方に贈与税がかかるおそれがあるからです。
たとえば、5,000万円の住宅を購入した場合、
住宅購入費用が5,000万円
夫の負担額額が3,500万円
妻の負担額額が1,500万円
夫の共有持分=7/10
妻の共有持分=3/10
上記のようになるのが一般的です。
しかし、下記のようになると贈与とみなされます。
5,000万円の住宅を購入した場合
夫の負担額が3,500万円
妻の負担額が1,500万円
夫の共有持分=1/2、妻の共有持分=1/2と設定する。
夫婦の持分が1/2ずつに設定されているので、夫婦ともに2,500万円ずつ負担していることになります。
実際には、妻は1,500万円しか負担していないので、差額となる1,000万円は夫から妻への贈与があったとみなされます。
このように負担額の割合と異なる持分割合に設定すると、共有持分が低い方に贈与税が課せられてしまうおそれがあるので持分割合は注意が必要です。
住宅ローン控除で損をする
住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の0.7%が原則13年間にわたって所得税から控除される制度です。
たとえば、住宅ローンの年末残高が4,000万円の場合は、4,000万円×0.7%の28万円が所得税から控除されます。13年間となると大きな金額になるので、条件に該当する人は必ず受けるべき制度です。
ただし、ローン残高が4000万円でも返済により残高は徐々に減っていくため、必ずしも年間28万円を控除できるわけではありません。
共有名義で連帯債務型の住宅ローンを組んだ場合、どちらも住宅ローン控除の適用を受けることができます。
ただし、返済割合と持分割合を一致させずに設定してしまうと、住宅ローン控除額が減額されてしまう可能性があります。
返済割合と持分割合が一致していない場合は下記のようになります。
住宅ローン年末残高:4,000万円
夫婦の持分:1/2ずつ
住宅ローン返済割合:夫3,000万円、妻1,000万円の場合
夫の住宅ローン年末残高が3,000万円だとすると、その0.7%の21万円が控除されるようにみえますがそうではありません。
共有持分と返済割合が一致していない場合は、持分1/2で設定している2,000万円が住宅ローン控除の対象の上限となります。したがって、控除額が7万円少なくなります。
妻:1,000万円×0.7%=7万円
住宅ローン控除額合計21万円
妻の控除額が1,000万円から2,000万円に増えると思われがちですが、妻の控除額は増えずに返済額の1,000万円のみ住宅ローン控除の対象となります。
住宅ローンの返済割合(妻1/4)が共有持分(妻1/2)より少ない場合は、返済割合に応じた借入金が住宅ローン控除額の対象の上限となるからです。
住宅ローンの割合と異なる持分割合で設定してしまうと、住宅ローン控除額が少なくなるおそれがあるので注意が必要です。
まとめ
共有持分割合の決め方は、相続による取得か物件購入時の取得かによって異なります。
相続により共有持分を取得した場合は、原則として法定相続分によって持分割合が決まります。
物件購入時に共有持分を決めるときは、負担額に応じて持分割合を決めますが、住宅ローンの借り方や親からの借入、出資によって持分割合に注意する必要があります。
原則的に、「負担額(や出資額)÷不動産購入代金」で持分割合が設定されます。
負担額とは異なる持分割合を設定してしまうと贈与とみなされ贈与税が課されたり、住宅ローン控除額が少なくなったりするおそれがあるので、持分割合の決め方や計算方法について疑問点がでたら、税理士や司法書士などの専門家に相談するようにしましょう。
また、共有持分のみであれば、ほかの共有者の同意がなくても単独で売却できます。
もし共有状態を解消したいなら、共有持分の売却を検討するとよいでしょう。
当サイトを運営している弊社AlbaLink(アルバリンク)は、共有持分を積極的に買い取っている専門の買取業者です。
過去には訳あり物件専門の買取業者としてフジテレビの「newsイット!」に紹介された実績もあります。
弊社には、買い取った共有持分を活用できる独自のノウハウが豊富にあります。
そのため、あなたの共有持分をできる限り高く買い取ることが可能です。
共有持分を売却して共有状態から抜け出したいとお考えの方は、ぜひ弊社までお気軽にお問い合わせください。