不動産の相続税とは?
不動産の相続税と聞くと、漠然と多額な金銭を納めるイメージがあったり、どのような手続きを踏めばよいのかわからないなど、あまりポジティブなイメージを持たれていません。
したがって、いざ相続に直面した際に慌ててしまう例も少なくありません。
そうならないためにも、以下では、不動産の相続税についての基本的な情報について解説します。
相続税の概要・説明
相続税とは、亡くなった人から死亡に伴い財産を受け継ぐ際に発生する税金のことです。
そのため、亡くなった人から相続や遺贈などにより取得した財産(資産)の価額の合計金額が、基礎控除額を超えてしまう部分が相続税の課税対象になります。
相続税の課税対象に含まれる財産
相続税の課税対象になるのは、主に次の財産です。
・現金及び預貯金
・株式及び債券などの有価証券
・土地及び建物などの不動産
・書画や骨董品
・死亡による生命保険金や死亡退職金(=みなし相続財産)
・相続開始前より3年以内に贈与された財産
・相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産
相続税の課税対象に含まれない財産
・祭祀財産
・国や地方自治体、特定の公益法人に寄附した財産
・生命保険金や死亡退職金のうち500万円に法定相続人の人数を掛けた金額部分
相続財産から控除できるもの
・住宅ローン
・葬式費用(火葬までの費用、香典返しを除く)
相続税の納付方法
相続税という言葉はよく耳にするものの、実際の納付期限や納付の仕方を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。
相続税には厳格な納付期限があり、その期間を過ぎるとペナルティもあるため、事前に詳細を把握しておくことはとても重要です。
以下では、相続税の納付方法について、納付期限と納付の仕方に細分化して解説します。
納付期限
相続税を納付する際の期限は、相続発生を知った日の翌日から10カ月以内に、自身に課税された相続税の金額を、原則「現金一括」で納付することになります。
仮に納付が定められた期限に遅れた場合、相続税に関する特例が受けられなくなったり、無申告に対する加算税や、重加算税、延滞税といったペナルティが発生するため注意が必要です。
納付の仕方
相続税を納付する方法は以下の通りです。
現金
相続税の納付は原則、現金による一括納付です。
相続税を現金で納付する場合は納付書を持参し、所定の場所(銀行、郵便局、信用金庫、所轄税務署)の窓口で納付する必要があります。
ただし、相続税は該当する相続人が自ら計算を行い、申告書を作成しなければなりません。
もし自身での作成が困難な場合であっても、税理士に相続税の申告を依頼していれば税理士が作成してくれるため安心してください。
しかし相続税の支払いが多額になる場合は、予め生命保険の加入や現金や預貯金を用意しておくことをおすすめします。
クレジットカード
2017年(平成29年)1月4日から相続税の支払いはクレジットカード払いも可能になりました。
これにより、平日忙しい方でも、インターネット環境があれば自宅にいながら相続税を納付することができます。
ただし、クレジットカードによる納付方法の場合、相続税の納付額が1,000万円未満でなければなりません。
またクレジットカードによる納付は、利用時に決済手数料を自身で負担することになるため注意が必要です。
延納
相続税を一括で納付することが困難な場合は、一定の要件を満たすことで、相続税を分割して納付することが認められています。
この納付方法を「延納」と言います。
延納は、相続税額が10万円を超え、かつ現金を納付することを困難とする事由がある場合、納税者の申告によって、一定の要件を満たすことで、納付を困難とする金額の範囲内で、担保を提供することで延納の申請をすることが可能です。
なお、延納期間中は利子税(原則年3.6%〜年6.0%程度)*納付も必要となるため、あらかじめ覚えておきましょう。
*遺産の割合や延納期間によって異なる
延納申請を行うためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・相続税額がが10万円を超えること
・現金で納付することが困難であり、かつ納付金額の範囲内であること
・延納税額及び利子税額に相当する担保を提供出来ること
(ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以内である場合は、担保を提供する必要はなし)
・延納申請に係る相続税の納付期限または納付すべき日までに、所定の申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出していること
参考リンク:相続税の延納(国税庁)
物納
相続税は現金(金銭)で納付することが原則ですが、現金で納付することが困難な場合に限り、納税者の申告により、一定の要件を満たした場合、相続財産による物納で納付することも可能です。
以下に掲げる要件をすべて満たす必要があります。
・延納によっても金銭で納付することが困難であり、かつその納付を困難とする金額の範囲内であること
・物納申請財産は、納付すべき相続税額計算の基礎となった相続財産のうち、以下に掲げる財産及び順位であること(日本国内の財産に限る)
順位 | 物納に充てることが可能な財産の種類 |
第1順位 | ①不動産、船舶、国債証券、地方債証券上場株式等(短期社債等は除く) ②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産*に該当するもの |
第2順位 | ③非上場株式等 ④非上場株式のうち物納劣後財産*に該当するもの |
第3順位 | ⑤動産
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・物納しようとする相続の納付期限または納付すべき日までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出してあること
・物納に充てることのできる財産は、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと
(管理処分不適格財産*に該当しないものであること及び物納劣後財産に該当する場合)
なお、上記に記載した「物納劣後財産」及び「管理処分不適格財産」に関する詳細な内容は国税庁公式サイト(No.4214 相続税の物納)に記載してあるため参考にしてみてください。
相続税の計算方法
相続税の計算方法を知るためには、各相続人等の課税価格の合計額と課税遺産額から相続税の総額を算出します。
ただし、相続税額の算出方法は、通常の税金とは異なり、各自が相続によって取得した財産に直接税率を乗じるものではなく、債務や葬式費用を控除した正味の遺産金額から基礎控除額を差し引いて、その残りの金額の割合に応じて按分(あんぶん)した金額に税率を乗じて計算することになります。
以下では、相続税を計算する上で用いる計算式及び税率について表でまとめてありますので参考にしてみてください。
○遺産に係る基礎控除額
平成27年1月1日以後の相続または遺贈の場合
3,000万円+600万円×法定相続人数
○相続税の速算表
法定相続分に応じた取得金額
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | なし |
1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【例題】
2020年(令和2年)4月に夫が死亡し、妻と子供2人(長男・長女)が正味の遺産金額として2億円を各自が法定相続分通りに相続した場合、以下のような配分になります。
正味遺産金額2億円-(3,000万円+600万円×3人)=1億5,200万…①
課税対象となる課税遺産総額1億5,200万円を法定相続分で按分
配偶者…1億5,200万円×1/2=7,600万円
7,600万円×税率30%−控除額700万円=1,580万円…②
長男…1億5,200万円×1/4=3,800万円
3,800万円×税率20%−控除額200万円=560万円…③
長女…1億5,200万円×1/4=3,800万円
3,800万円×税率20%−控除額200万円=560万円…④
相続税の合計②+③+④=2,700万円…⑤
相続税の合計である金額に実際の相続割合を按分
配偶者…2,700万円×1/2=1,350万円
長男…2,700×1/4=675万円
長女…2,700×1/4=675万円
○配偶者(妻):配偶者の軽減税率の適用* 納付金額0円
○長男:納付金額675万円
○長女:納付金額675万円
*配偶者の軽減税率の適用…遺産分割または遺贈により、配偶者が実際に取得した正味の遺産金額が1億6000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか高い金額までの部分には相続税がかからない。
共有持分の不動産の相続税はどうなる?
最後に共有持分の不動産の相続税について解説します。
共有持分の相続税とは
共有持分とは、不動産を2人以上の複数人で共同して所有しており、各自が持ってる所有権の割合のことを指します。
そのため、相続税を納める上でも、共有名義で所有する不動産の持分で割り当てられた金額を各相続人が納めることになります。
相続時に問題になるケースがある
共有持分の不動産の相続時に問題となるのが、共有持分の細分化です。
不動産を共有名義で所有する一方が亡くなり相続が発生した場合、その共有持分が相続人の数だけ細分化してしまいます。
そうなると、利害関係が複雑化する恐れや、協議がまとまらず、共有名義者全員の同意が得られない可能性が出てします。
そのため、共有名義で不動産を所有する場合は、早期に共有部分を解消しておくことや、譲渡や贈与、遺言書等を活用して、あらかじめ回避するようにしましょう。
まとめ
本記事では、不動産の相続税について概要をはじめ、納付方法や計算方法、共有持分の不動産のケースについて解決しました。
不動産の相続は今後多くの世帯に関わる可能性があることと言えるでしょう。
そのため、相続する不動産がある世帯については、自然に適切な対策を取ることでスムーズに相続を行うことができます。
将来的に慌てることがないように、今から不動産の相続について家族内で話し合っておきましょう。