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親子で共有名義になっている不動産に注意!認知症リスクと対策方法

親子で共有名義になっている不動産に注意!認知症リスクと対策方法 共有持分

親子で不動産を共有している状態は決して珍しいことではありません。

ただ、その状態をずっと維持したまま親が高齢になってくると、予想もしていなかったリスクにさらされることがあり、そのためできれば早期に共有関係を解消した方が良いケースもあります。

では、親子共有の場合に不動産を処分したくなったらどのような方法で行うのか、売却できないような状況になったらどう対処したらよいのかなどを考えてみましょう。

親子で共有名義になっている不動産を売る方法

「共有」というのは1つ(一筆、登記簿が1つ)の不動産に対し二者以上が所有権(共有持分)を持っている状態を指します。

親子で共有名義

共有は不動産を物理的に分割しているわけではないため、各共有者がそれぞれに全体に対して自分の持分に応じた権利を持っており、故に処分等を行う場合にも自分の一存で行うことができない場合があります。

よって共有していることを不便だと感じてその解消を考える人もいますが、その場合にはどのような方法があるのでしょうか。

親子で一緒に第三者に売却しお金を分ける

不動産全体を処分(売却や担保設定)しようとする場合は、その不動産について最も重要な法的手続き(処分行為)となるため、共有者全員の同意がなくてはすることができません。

共有不動産全体の売却は全員で

なお、各共有者が不動産に対して何をどこまでできるのか?というのはこちらの記事にまとめています。

不動産の共有に関する民法条文のまとめ【保存行為、変更行為、管理行為とは?】
不動産を共有するというのは、1つの不動産(=登記簿1つ)について二者以上が名義を持っていることを指します。 ただ、これは物理的に「Aが北側、Bが南側を使用できる」といったものではなく、AもBも全体に対して使用収益等の権利及び義務がある...

共有不動産の売却にあたっては上記のように「共有者全員が同意している」ことを前提として全員の契約や代金決済への協力が求められます。

不動産業者及び司法書士からは、事前もしくは当日に面会して「本人確認、意思確認」が行われます。

具体的な書類としては身分証明書提示や権利証(登記識別情報通知)や印鑑証明書(3カ月以内)などを求められます(よって、もちろん手続き上実印が必要な書類があります)。

必要書類

現実的な状況を考えると、親子の場合、実印や印鑑カードを「親に管理させると不安」などの理由で子供が預かっている場合があります。

親の意思能力が衰えている状態で、子供が実印等を勝手に利用して親の持分をまとめて売却してしまおうとする事例もないわけではありません。

ただ、これは状況によっては横領や私文書偽造といった犯罪にあたることもありますので、親の意思が第三者から見て確認できない状態で親の共有持分を売却することは厳禁であると理解しておかなくてはなりません。

なお、万一親の意思能力が衰えて取引ができない場合の対処については下に説明します。

自身の持分のみを売却する

これに対して、親または子が「自分の持分のみ」を売却することは可能です。

共有持分のみの売却は共有者の1人からできる

持分のみの売却というのはなかなかピンとこないものですが、具体的事例としては「共有者だった親または子に売る」「他の親族で共有関係になっても問題ない人に売る」といったものがあるでしょう。

ただ、これも親族関係がうまくいっていない場合には話がこじれることもあります。

そのような場合、取り得る手段として「共有持分であっても買い受けることができる専門の不動産業者に売る」というものがあります。

共有関係から離脱したい人が選択できる方法は?

土地なら分筆して売却

土地は物理的に2つ(またはそれ以上)に分割することができますが、これを「分筆」といいます。

ただ、共有状態の不動産を分筆すると「いったん共有の不動産が2つ以上できる、その後に持分を譲り合う」ことによってはじめてそれぞれの単有とすることができることに注意が必要です。

いきなり各人の単有にできるわけではありませんので、分筆、持分移転の二段階で手続費用がかかってしまうことを覚悟しなくてはなりません。

現物分割

親が高齢な場合の対策

昨今、非常によくある事例が、
「共有者である親がすでに認知症を発症している、もしくは会話していて違和感を感じるようになってきた」
といったものです。

法律的な話の意味を理解することや、自分で売却の意思表示をすることができないのであれば下記に説明する「成年後見」が必要な事例となります。

また、共有者である親が死亡して法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)が自分以外にもいるという場合には他の相続人達との話し合いができるかという問題になります。

もともと親と共有していた人に親の持分を相続させる合意が取れれば単有にできるため問題ないのですが、他の相続人が反対した場合には兄弟と共有にならざるを得ない場合もあります。

ではまず、「親が高齢だが、まだ意思表示が問題なくできる」状態で後のトラブルを避けるため共有を解消する方法を考えてみましょう。

売る

親が元気なうちに共有者である子供が親の持分を買い取る、もしくは親と共に不動産全体を売却するという方法があります。

子供側に買い取る資力があるのであれば「親から子への持分全部移転」の登記をすれば子の単有にすることができます。
もちろん親子間ですから親が承諾すれば大幅な値引きも可能かも知れません。

上記のとおり、親と子が両方とも売却に合意しており手続きに協力できる状況であれば売却してお金に換えることもできます。

共有持分を共有者に売る

贈与

親が持分を共有者である子に贈与する方法もありますが、贈与の場合税金等も絡むため事前に知っておきたいことがあります。

贈与税について

贈与税は下表の通り国税の中でも税率の設定が最高レベルであり、何の軽減措置も使わずまともに支払うと受贈者(もらう人)の負担が過大になってしまいます。

贈与税を計算する際の税率には「一般贈与」と「特例贈与(親や祖父母から20歳以上の子供に贈与する場合)」がありますが、ここでは親子間の話なので特例贈与の税率を見てみましょう。

特例贈与の税率

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円を超える 55% 640万円

 

具体例 特例贈与にあてはまるケースで3,000万円の贈与を受けた場合
3,000万円-110万円×45%-265万円=10,355,000円(贈与税額)
※年間でもらう人一人につき110万円までの贈与は非課税になるため、その分を差し引く計算になります。

まともに支払ってしまえばこれだけの金額になるわけですが、親子間には他人にはない贈与の特例が設定されており、それを考えて計画的に利用すれば大きな節税につながります。

大型贈与向きの措置として「相続時精算課税」があります。

相続時精算課税制度を上手く利用する

上記に上げた税率(年間110万円まで非課税)は「暦年課税」という方法を使った場合です。

これに対し、生前贈与における節税の切り札として、「相続時精算課税」という制度があります。

これは「いったん無税もしくは税率20%で生前贈与をしておき、相続税の計算時に生前贈与した分も財産に加味してトータルで精算する」という内容です。

具体的に見てみましょう。

相続時精算課税の具体例
相続時精算課税によって「無税」となる生前贈与の範囲は2500万円までです(一度に贈与しなくてもOK)。
相続時精算課税それを超えると20%の割合で課税されます。 親が3000万円分の財産を生前贈与し、子が「2500万円分を無税で、残りの500万円分を税率20%にあたる100万円の贈与税を払って」いた状態とします。
生前贈与された3000万円は、相続開始後に「相続税」の課税対象財産にプラスしてカウントされます(「持ち戻し」と表現することもあります)。
つまり、生前贈与しなかった財産が2000万円残っていたとすると、合計5000万円が「相続税の課税対象」となるのです。
これに基づいて相続税を計算し、もしその子が生前に支払っていた贈与税100万円より税額が高ければ「納付」し、少なければ「還付」されます。

相続時精算課税

結局相続時に精算されるのであれば、この制度のどこにメリットがあるのでしょうか。

まとめるとこのようになります。
もし、生前贈与の分を持ち戻しても元々相続税がかからない人は、通常の贈与税を支払うよりはるかに低率もしくは無税での贈与ができる。

「元々相続税がかからない人」とは、基礎控除として設定された財産額を超えない人のことです。
現在の法律での基礎控除は「3000万円+(600万円×相続人の数)」となっています。

つまりこの例では、生前贈与した親の法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)が4人以上いる場合には「3000万円+(600万円×4)=5400万円」ですから基礎控除の範囲に収まっており、相続税はかかりません。
よって、100万円の贈与税を納めた時点で課税関係は終了ということになります。

かなり分かりにくいですよね?
もう一度全体をまとめます。

相続時精算課税のまとめ
【前提条件】
・相続人(妻1、子3人)
・3000万円の不動産
・2000万円の現金
【ポイント】
後々、問題となりそうな不動産だけを、先に相続時精算課税を使い生前贈与。(100万円の贈与税)
実際に相続が発生しても基礎控除分が5400万円あるから相続税は0円。
つまり、合計100万円の税金。
【その他メリット】
・仮に相続税がかかるため、トータルでの節税にならない場合でも、早期に財産を移転することで遺産分割協議のトラブルを防ぐことができる。
・持ち戻す財産価格の査定は「贈与時の価額」となる。つまり、相続時に向かって値上がりが予測される財産を相続時精算課税で贈与しておけばトータルの相続税額が押さえられる可能性がある。

なお、いったん相続時精算課税を使うことを選択すると、年間110万円までの贈与税非課税(暦年贈与)は使えなくなることに注意が必要です。
暦年課税、相続時精算課税を比較してみましょう。

結局どちらが有利かはケースバイケースですが、相続時精算課税は一度適用すると撤回できないため利用を検討する際は税理士に相談する方が確実です。

暦年課税 相続時精算課税
贈与者 制限なし 60歳以上の父母、祖父母
受贈者 制限なし 20歳以上の子、孫
非課税となる枠 年間110万円(受贈者一人あたり) 合計2500万円まで
贈与の回数 複数回でもOK 複数回でもOK
申告等 110万円を超える贈与につき翌年申告 最初に適用を受ける申告時に「相続時精算課税の適用届出書」を提出、さらに贈与の翌年に申告
(※一度選択すると暦年課税に戻れない)
相続税との精算 不要 必要

 

贈与の手続き

生前贈与をしようとする場合、まず「贈与契約書」を作成します。

そして、それに基づいて「贈与者(あげる人)の持分を受贈者(もらう人)に移転する登記」の手続きを行います。

もし、相続時精算課税を使う場合は「適用届出書」に加え、贈与年の翌年2月1日~3月15日の申告期間に忘れずに贈与税の申告をすることが大切です。
(暦年課税の場合も翌年、通常の贈与税申告が必要)

特に相続時精算課税を使っての大型贈与の場合は、手続きを忘れると通常通りの贈与税が課せられるため非常にダメージが大きくなりますから、確実にするためには最初から税理士に申告の依頼しておく方が良いでしょう。

親がすでに認知症の場合は成年後見制度

では、上で説明した「親がすでに意思能力に欠けていたり、認知症との診断を受けている場合」について対処方法を考えてみましょう。

このようなケースでどうしても売却等の手続きが必要になるときは「成年後見」という制度を利用することで売却できる場合があります。

ただし、成年後見を利用するにあたっては絶対に忘れてはならない重要なポイントがいくつかあります。

  • ポイント①
    この制度の趣旨は「成年被後見人(認知症の本人)を保護するための制度」であり、周囲の家族などの利益のためにあるわけではない。
    要するに、売却する際の理由はあくまでも「親の利益のため」でなければならないということです。
    たとえば施設に入れる費用を出すための売却等はその一例ですが、特に自宅の場合、家庭裁判所に理由を説明し、許可をもらわなくては売却することができません。
    自宅以外であってもほとんどの場合は事前のお伺いを立てるべきでしょう。
  • ポイント②
    成年後見人をつけると、預貯金等の使途にも家庭裁判所のチェックが入る。
    被後見人の財産についてある程度まとまった金額(日常の生活費以外のもの)を使用する際は家庭裁判所に相談するべきです。
    定期的に成年後見人から家庭裁判所に財産管理の報告をしなければならないため、不適切な使用があった場合は返還を求められることもあるからです。
  • ポイント③
    成年後見人の業務は、目的となる行為が終了した後にも被後見人の死亡まで原則、継続する。
    売却などの目的行為が終わったら成年後見人を辞めてよいというわけではありません。

これらのことをよく理解しておかなくては、いざ申立てをした後に親族が「考えていたのと違う状況になったから辞めたい」ということになり、その時にはもう手遅れ(辞めることはできない)になってしまいます。

成年後見制度

成年後見制度には、意思能力が鈍ってきた本人の状態に合わせて「一番重い『後見』」「次に重い『保佐』」「一番軽い『補助』」といった三類型が準備されています。

また、裁判所の関与が薄い「任意後見」という制度もあります。

後見の類型を選択する基準

任意後見制度

「任意後見」というのは、意識がしっかりしているうちに将来に向けて後見人になってくれる人を自分で選びたいという場合に利用できる制度です。

あらかじめ、「任意後見契約」という委任契約を締結しておきます。

契約で後見人にどこまでの代理権を与えるかを決めておくことができます(預貯金管理、訴訟行為の委任、医療行為への同意、介護契約など)。

そしていざ判断力が低下してきた時には本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者(これから後見人になる者)いずれかの申立てにより「任意後見監督人」を家庭裁判所が選任することによって任意後見の効力を発動させることができます。

監督人が必須になっている理由は、次に説明する法定後見とは異なり、「誰を後見人にするか」という最も重要な事柄を家庭裁判所が選任するのではなく本人が契約するので、不正、権利の濫用等を防ぐためです。

法定後見制度

上記の任意後見人を監督するのは任意後見監督人であり、家庭裁判所は監督人経由での監督をするためいわば「間接的な関係」です。

しかし法定後見制度は、後見人を決定する権限が裁判所にあり、その法定後見人はダイレクトに裁判所の監督下に置かれることになります。

よって、裁判所への定期的な財産管理等の報告の他、上に説明したような「日常生活以外の出費、重要財産の処分」などについても家庭裁判所への相談が欠かせないことになります。

任意後見・法定後見

成年後見制度の手続き方法

任意後見は上記の通り、事前の契約書作成、意思能力低下後に後見監督人選任というプロセスをたどりますが、法定後見の方が若干煩雑です。

法定後見は、本人、配偶者、4親等内の親族等、身寄りのない人については市町村長、成年後見人等、成年後見人監督人等、検察官から家庭裁判所に対して後見開始の申立てを行います。

申立書と書類一式を提出した後、場合によっては医師による「鑑定」を経て家庭裁判所により成年後見人が選任されます。

申立の時点で申立人側から「後見人候補者」を出しますが、候補者が適切ではないと家庭裁判所が判断すれば他の親族や、ケースにより専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が選任されることもあります(その場合、本人の財産額に応じた報酬額を家庭裁判所が決めます)。

もし最初の時点で「後見」を希望しても、それより程度が軽いと判断されれば「保佐」や「補助」の類型で開始決定が下されることもあります(逆もあり)。

成年後見制度

※なお、こちらの記事でも後見申立の手順について詳しく説明しています。

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申立書の作成等は自分でできる人もいますが、忙しかったり事務作業が苦手という人は弁護士や司法書士といった専門家に書類を作ってもらう方が安心でしょう。

ただ、最初に述べたように、後見人を立てたからといって周囲の人が期待した通りに売却できないことも考えられますので、これが決定的な共有の解消手段とはならない可能性もあることを覚えておきましょう。

実際に後見の案件を手掛けている法律家に事前に状況を説明して、後見を立てるべきかどうかも含めてどのような対処が適切であるかのアドバイスを受けておけば安心です。

まとめ

・親子で共有にしている不動産については後に親の認知症や死亡というリスクがあるため、できれば早期に解消した方がよい。

・共有を解消するには親が元気なうちなら一緒に全体を売却したり親の持分を買い取るほか、相続時精算課税などで節税に配慮しつつ贈与を受ける方法もある。

・親の意思能力が低下している場合、通常の売買はできないためどうしても売りたい時は成年後見人をつける選択肢もあるが、売却に家庭裁判所の許可が必要なこともあるので、必ずしも周囲が思った通りに処分できるわけではない。

共有は早めに解消!

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