専有部分と共用部分
マンションのように独立して住居に使用でき、複数の物理的に区切られた部分から構成されている建物を「区分所有建物」と呼びます。また、区分所有建物は、専有部分と共用部分で構成されています。
- 専有部分
マンションでいうところの各部屋にあたる部分。
専有部分を所有している人のことを区分所有者という。 - 共用部分
マンションでいうところの階段やエントランス等にあたる部分。
各区分所有者で共有している。
敷地権と敷地権割合
各区分所有者が持つ土地を利用する割合的な権利を「敷地利用権」と言います。
そして、敷地利用権と専有部分の所有権を一体化した登記の権利形態のことを「敷地権」と呼びます。
また、マンションの土地全体に対して、各区分所有者が持つ敷地権(敷地利用権)の割合を「敷地権割合」と呼びます。
3つの言葉を簡単に整理しましょう。
敷地利用権 | 各区分所有者が持つ土地を利用する割合的な権利 |
---|---|
敷地権 | 専有部分の所有権と敷地利用権を一体化した登記の権利形態 |
敷地権割合 | マンションの土地全体に対して、各区分所有者が持つ敷地権(敷地利用権)の割合 |
敷地権と所有権の違い、敷地権割合の調べ方などについては以下の記事でも詳しく解説しています。
共有持分とは
1つの不動産を複数人で所有していることを、「共有」と言います。
共有持分(権)とは、この各共有者が持つ割合的な権利のことです。
また、この権利の割合を「共有持分割合」と言います。
共有持分割合は、一般的に不動産購入時の出資割合で決まります。
例:5000万円のマンションの専有部分1部屋を夫婦で購入
- 夫名義で4500万円の住宅ローン契約
夫の共有持分割合=10分の9 - 妻が結婚前に貯めた500万円を頭金
妻の共有持分割合=10分の1
また、「マンションの共有持分」というと、一般的には専有部分各戸の各共有者の権利を指します。
なお、共有名義・共有持分の概要については、以下の記事で詳しく解説しています。
専有部分・共用部分・敷地権の共有持分の違い
区分所有者は「専有部分」と「共用部分」と「敷地権」の3つの権利を有しており、それぞれに共有持分があります。
ここでは区分所有者が持つ、3つの権利の共有持分について整理します。
どのような状況で | 誰と | どのように共有している | |
---|---|---|---|
専有部分の 共有持分 |
専有部分が 共有名義の場合に |
他共有者と | 購入時の出資割合 に応じて共有 |
共用部分の 共有持分 |
常に | 他区分所有者全員と | 専有部分の床面積 に応じて共有 |
敷地権の 共有持分 |
常に | 他区分所有者全員と | 専有部分の床面積 に応じて共有 |
簡単な数字をもとに説明します。
・マンションの専有部分を「2分の1ずつ」夫婦で共有
・専有部分は全部で10戸
・各専有部分の床面積は全て同じ
この場合、専有部分・共用部分・敷地権の共有持分割合は次の通りです。
専有部分の共有持分割合 | 共用部分の共有持分割合 | 敷地権の共有持分割合 | |
---|---|---|---|
夫 | 2分の1 | 20分の1 | 20分の1 |
妻 | 2分の1 | 20分の1 | 20分の1 |
夫婦の合計 | 1 | 10分の1 | 10分の1 |
夫婦2人だけで専有部分を共有しているため、専有部分の共有持分割合は「夫婦の合計」で「1(100%)」です。
床面積が同一の全10部屋の区分所有者と共有しているので、共用部分と敷地権の共有持分割合は「夫婦の合計」で10分の1になります。
専有部分の共有持分割合・敷地権割合は登記簿で調べられる
登記簿には、専有部分の共有持分割合・敷地権割合が記載されています。
まず、専有部分の共有持分割合は、等記事事項証明書の「権利部(甲区)」で、「権利者その他の事項」を見ると、共有者の氏名・住所と持分割合が確認可能です。
続いて、敷地権割合は「表題部」の「敷地権の割合」の欄に「◯分の◯」といったように記載されています。
登記事項証明書は、全国の法務局で窓口請求・郵送請求・オンライン請求に対応しています。
なお、登記簿謄本の見方については、以下の記事で詳しく解説しています。
敷地権割合の計算方法
敷地権割合は、夫婦でマンションを共有している場合「夫婦2人での敷地権割合」です。
各共有者の敷地権割合は次の式で求めることができます。
各共有者の敷地権割合=登記事項証明書に記載されている敷地権割合×共有持分割合
具体例を用います。
・登記事項証明書に記載されている敷地権割合は「10分の1」
・対象の専有部分を「夫が5分の4」、「妻が5分の1」で共有
この場合、妻の敷地権割合は
敷地権割合=10分の1×5分の1=50分の1
つまり妻の敷地権割合は「敷地全体の50分の1」となります。
専有部分と共用部分と土地は分離して処分(売却等)できない
マンションを処分(売却等)する際、「専有部分」と「共用部分」と「土地」の3つは切り離すことができません。
このことは「区分所有法」に記載されています。
以下が実際の条文です。
(共用部分の持分の処分)
第十五条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない
引用元:e-Govポータル「区分所有法」(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
引用元:e-Govポータル「区分所有法」
つまり、敷地権の共有持分や、共用部分の共有持分のみを切り離して売却する等の行為はできないので、覚えておきましょう。
マンション の敷地利用権を独立して売却できない理由については、以下の記事で詳しく解説しています。
敷地権化されていないマンションは売却しづらい
敷地権は昭和58年の区分所有法改正で作られたものです。
それ以前のマンションは建物と土地を別々の登記簿で管理しており、土地の権利移転のみ忘れられるトラブルが発生していました。
法改正以前に建てられたマンションの中には、現在も敷地権化をせずに放置しているマンションが存在します。
敷地権化されていないマンションにいくつかのリスクがあるため、売却の際に買い手がなかなか見つかりません。
以下のリスクについて次の項目で詳しく解説します。
買い手が見つかりづらいため、一般個人を相手にする不動産仲介会社では売却活動が難航する恐れがあります。
敷地権化されていないマンションを売却する際は、専門の買取業者に買い取ってもらうことも視野に入れて検討しましょう。
専門の買取業者であれば買い手を探す必要がないので、条件さえ合致すればすぐにでも不動産を手放して、現金化することが可能です。
弊社でも買取を積極的に行っておりますので、お気軽にご相談ください。
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なお、売れないマンションを一瞬で手放す方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
管理組合が機能していない可能性がある
敷地権化を放置している管理組合は十分に機能していない可能性があります。
なぜなら、既存のマンションを敷地権化するためには、管理組合が主体となって住人の同意を集める必要があるからです。
敷地権を設定しなかった経緯にもよりますが、敷地権化の他にも共用部分の修理や、ゴミ出しマナーの周知などを怠っている恐れがあります。
土地の権利移転トラブルが発生する可能性がある
敷地権化されていないマンションは建物と土地を別々の登記簿で管理しています。
そのため、マンションを売買する際に土地の権利移転が忘れられるというトラブルが頻発しました。
後々になって取り残された土地の権利だけを、悪意ある第三者が取得するという事例も過去に発生しています。
このことも、買い手からすると購入するリスクとなり得ます。
専有部分の共有状態を解消する方法
専有部分の共有状態にはリスクがあります。
共有者は不動産に対してあらゆる行為が制限されているからです。
一方で、敷地権や共用部分が他住人と共有になっているのは、分譲マンションであれば当然です。
実際には区分所有法(上述)とマンション標準管理規約でリスクがないように定められています。
第11条 区分所有者は、敷地又は共用部分等の分割を請求することはできない。 2 区分所有者は、専有部分と敷地及び共用部分等の共有持分とを分離して 譲渡、抵当権の設定等の処分をしてはならない。
引用元:「マンション標準管理規約 第11条」
もし、専有部分の共有状態を解消したい場合は下記のような方法での解決が一般的です。
それぞれ解説します。
専有部分の共有者全員から同意を得て専有部分を処分(売却等)
専有部分を複数人で共有している場合、処分(売却等)するためには共有者全員の同意が必要となります。
他の共有者の同意が得られるなら、専有部分を処分することで共有状態を解消することが可能です。
ただし前述の通り、専有部分を処分する際、「敷地権の共有持分」と「共用部分の共有持分」は切り離せません。
具体例を用いて説明します。
・マンションの専有部分を「2分の1ずつ」夫婦で共有
・専有部分は全部で10戸
・各専有部分の床面積は全て同じ
専有部分の共有持分割合 | 共用部分の共有持分割合 | 敷地権の共有持分割合 | |
---|---|---|---|
夫婦の合計 | 1 | 10分の1 | 10分の1 |
専有部分を処分する場合は、上記の3つの権利を一緒に手放すことになります。
なお、不動産の共有に関する民法の条文については以下の記事でわかりやすく解説しているので、併せて参考にしてください。
専有部分の共有持分のみを処分(売却等)
専有部分を共有している場合であっても、自身の共有持分のみであれば自由に処分(売却等)することが可能です。
そのため、他の共有者が処分に同意しない場合でも、自身の共有持分のみを処分することで共有状態を解消することができます。
ただし、共有持分のみの処分であっても、「敷地権の共有持分」と「共用部分の共有持分」は切り離すことができません。
先ほどの具体例を用いて説明します。
【条件】
・マンションの専有部分を「2分の1ずつ」夫婦で共有
・専有部分は全部で10戸
・各専有部分の床面積は全て同じ
専有部分の共有持分割合 | 共用部分の共有持分割合 | 敷地権の共有持分割合 | |
---|---|---|---|
夫 | 2分の1 | 20分の1 | 20分の1 |
妻 | 2分の1 | 20分の1 | 20分の1 |
夫婦の合計 | 1 | 10分の1 | 10分の1 |
上記の条件で、妻が自身の共有持分のみを処分する場合、太字で表した3つの権利は一緒に手放すことになります。
共有持分のみの売却であれば単独で行えるので、共有者との関係が良好でなく不動産全体の処分に対し合意が得られない方は、共有持分の処分を検討してみましょう。
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まとめ
今回の記事をまとめると以下の3つです。
- 「敷地権」とは、建物と土地を一体で登記することによって、建物の所有権と敷地利用権を切り離せないようにした権利形態のこと。
- マンションを処分する際、「専有部分」と「共用部分」と「土地」の3つは切り離すことがでできない。
- 敷地権割合は、登記事項証明書の「表題部」を見ることで確認できる。
なお、専有部分の共有状態には一定の活用制限がかかるため、所有には問題があります。
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